五
汽車は柳州の郊外を通過した時、鉄道沿いの緑化樹が窓のほうに飛び込んだように後にやり過ごした。枝の間から、ざっと彼は灰色の塀と芭蕉の大きな葉っぱを目にした。
午後16時頃、小さな鉄橋を一本渡ると、「鹿寨」という駅に到着した。暖房のおかげで、車内は暖かかった。車外を眺めると、案外なほど人少なくて、とても静かであった。ホームにある緑頭巾をしていた老婆が赤き服の女の子をつないで、誰かを待っていたように、汽車から降りた乗客をわき目ふれずに見ていた。寒かろうか、女の子はイヤホーン式の防寒耳掛けをし、嬉しそうに笑った。が、車内の彼はその笑い声が聞こえなかった。サイレントのようだった。
四
柳州に停車したころ、一通の広告メールが入った。
「ようこそ、中国歴史文化名城柳州にいらっしゃいました。」とあった。彼は鉄路沿い長屋から、近くに静まっている長い石油運送列車のタンクまで見回していた。
ホームには手押し車を押す雑貨売りもあれば、看板でもある赤いパラソルの下に饅頭や米粉(南国でよく食用する春雨のようなもの))を販売する駅員らしい方もあった。
彼はまた折座席に腰をかけ、細長きテーブルに手を顎に支え、何かの思いに落ちてしまったようだった。暖房の強い熱気が彼の思いを暖めるように、テーブルの下から流れてきた。その時はちょうど二時過ぎで、気持ちのいい午後であった。日差しがなかったけれど…
汽車はまた走り始めた。
その走っていた熱気の十分な車内にいて、彼は時間の長さを直に感じた。