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緑 島 小 夜 曲

春を愛する人は、心優しい人。

東京遊学歳時記(7)

2012年02月05日 14時36分22秒 | 歳時季語


秋の空長谷大仏の胸広し



 日本の大仏をいわば、奈良東大寺のと鎌倉高徳院のが有名であろう。東大寺の大仏はその手が印象深い。鎌倉長谷大仏はその胸である。
 僕の行った日本寺院の中では、高徳院は比較的に大きいものだと思う。その近くには大仏形のお菓子も売られて、人気を呼んでいた。
 青空を背景に、日本国宝だと指定された阿弥陀如来銅像が露天に鎮座する。その下には、観光客の連中が記念写真を撮ったり、合掌したりした。ガイドをしている友達がいて、その話によると、仏様の写真を撮ることや仏像を背景にして撮影することは避けたほうがよかろうとある。理屈を聞いてみたら、別に理由なし。悪いことが起るおそれがあると、神秘に教えてくれた。
 言わなくても、なんとなくその理由が分かる。宗教的な存在として、仏様を写真に写すことは失礼であろう。フレッシュも仏像にある程度の損害があるのであろう。
 撮ろうか撮らないかとまよったところに、もう同行の先生に誘われ、記念写真を撮ろうと。
 まあ、いいや。「失礼いたします」と心に繰り返しながら、「茄子」と飛び出してしまった。
 
 長谷大仏は胸が広いから、ゆるしてくれるのであろう。
 
 
合掌!

東京遊学歳時記(6)

2012年01月29日 14時38分46秒 | 歳時季語



秋の暮凶の絵御籤引きにけり


 秋の暮は季語の一つである。この季語を入れて作った俳句の中では、松尾芭蕉の「この道を行く人なしに秋の暮」が有名であろう。秋の暮の寂しさを極める句だと思う。「この道」はどのような道であろうか。細かろう。それとも大通りであろう。季語の「秋の暮」からみれば、人気なき細道であろう。

 浅草寺で100円の御神籤を引いた。第六十四凶で漢詩調の四句であった。知合いに冗談半分言うと、浅草は凶が多いという。秋の暮の句の中では、大好きな三句がある。
 
 
硬球を打つ青年の秋の暮    鈴木六林男
秋の暮皆長靴の出稼人     大野林火
秋の暮業火となりて秬は燃ゆ  石田波郷


東京遊学歳時記(5)

2012年01月26日 10時40分22秒 | 歳時季語
    

      初登り高尾の峰の晴るる秋

 拓大は高尾山の麓に位置する。高尾駅からあと一駅で、高尾山口駅に到着する。
 東京滞在中、一度高尾山を登ったことがある。以上の句はその時作ったものであった。

 青垣のような高尾山脈は目の前に広がって、気持ちも晴れになった。遠山はもやもやした中にはっきり見えなかったが、青き屏風のように聳える。

    

 高尾山で八王子の初秋を眺めるのもよかろう。都市の建物が公園緑地や街路樹などの緑に浮くように、『古事記』を思わせる風景であった。

    

    やや寒し男坂まで登りけり

 男坂は上がり道、女坂は下り道。

 
 

東京遊学歳時記(3)

2012年01月07日 21時40分22秒 | 歳時季語

    秋の蝉鳴いてやまざる高楽寺

 高尾駅南口より仮住まいの留学生寮までには、この高楽寺の山門前を通らなければならぬ。
 9月末の東京はまだすこし暑かった。ある午後、一人で高楽寺を散策した。境内には、樹齢二百年以上の枝垂桜が生きている。
 どんよりした空の下に、一人で寺院散策するのは何よりいいことである。
 
 極楽の世はいったいどんな様子であろうかはまず別にして、この高楽寺だけが名の通り、最高の楽を感じさせるのであった。
 境内は広いとは言えぬ。地元の祭りの時、このしだれ桜もライトアップされるという。想像してみると、あの幻のようなライトアップがきっと最高であろう。

 しだれ桜の木の下に立って、暫く秋の蝉を聞きながら、のんびりした午後だった。

東京遊学歳時記(2)

2012年01月06日 16時08分30秒 | 歳時季語
    彼岸花花弁の数魂(たま)の数

 9月23日、日本での最初の朝。ちょうど秋の彼岸の3日だった。
 朝早く隣室の呉さんと出かけた。

 お墓参りに出かける人が多かった。黒眼鏡をかけている人もあれば、新聞紙に包まれた花を持つ人もある。みんな真面目な表情で、黙々と墓地へ急いだ。

 道端には彼岸花がよく見える。細長き花弁が魂のように曲がっている。日本では墓地に多く生長しているといわれる。だから死人花ともいうのであろう。

 高尾付近では、霊園がいくつかある。それに、高尾沿線の大光寺の境内にも寺院墓地が設される。

 火のような彼岸花、魂のような彼岸花。秋分の道端にしめやかに咲いている。

東京遊学歳時記(1)

2012年01月04日 13時06分34秒 | 歳時季語


   秋の雨しとしと降りし台場かな


 2011年9月22日、我々一同が東京成田空港に着陸しました。
 拓大のスクールバスが迎えてきました。

 船橋、赤坂、台場、新宿などを通り、八王子の高尾へ進みました。

 途中で雨が降ってきました。東京での最初の雨でした。しとしとと、大雨ではなかった。
 あのスクールバスで、東京の短期研修をいろいろ想像したり、計画したりしました。

 「もののあわれは秋こそまされ」といわれたように、東京の秋の雨がしとしと降ってました。お台場はロケとして名が響いていますが、実際に目にするとはスクールバスがレインボーブリッジで走っている時でした。

 どんよりした空模様を背景に、台場の一切がもやもやした秋の雨に滲みました。遠くの摩天楼のの窓より微かなる灯の光が見えました。

 ああ、秋の雨しとしと降りし台場かな。