緑 島 小 夜 曲

春を愛する人は、心優しい人。

土井晩翠『星落秋風五丈原』を真似して

2012年01月17日 19時01分16秒 | 若い詩歌

花落春愁吉野山

はなおつしゅんしゅうよしのやま





八幡宮(はちまんぐう)の花落ちて

春雪白し吉野山。

初音の鼓鳴り響き、

狐の姿消ゑて行く。  

本や同じ根生ぜしに、

相煎ることぞ急なりし。

入りにし人の後追はむ!





源軍の旗輝きて、

白拍子こそ最中なれ。

酒の盃交わし合ひ、  

舞の直垂美しき。

本や同じ根生ぜしに、

相煎ることぞ急なりし。

入りにし人の後追はむ!





悲しむ風に雨泣きて

叫ぶ非情の怒涛(なみ)の声。

同舟の光陰(とき)矢の如く、

烏帽子の下の別れ泪(なだ)。

本や同じ根生ぜしに、

相煎ることぞ急なりし。

入りにし人の後追はむ!

張学友・楚歌【試訳】

2010年08月02日 10時15分59秒 | 若い詩歌
淡淡野花香 烟雾盖似梦乡   野の花や微かに香る霧の夢

别后故乡千里外

那世事变模样         世の事に 別れる郷ぞ千里なる



池塘有鸳鸯心若醉两情长    池の鴛鴦心ひかれてつがいなる

月是故乡光与亮      

已照在爱河上我却在他乡    恋川を照らす月こそ光りけれ



千里关山风雨他乡       千里の関山に 異郷の風雨



乡音我愿听 家里酒我愿能尝  国のなまりに 郷の酒

     

莫道隔千山 朝夕里也梦想    千里の山を隔てても



但望有朝身化蝶        何時か蝶に化る時を待つ



对抗着风与霜 我再踏家乡    風霜を冒しても郷帰る

みちづれ(漢訳)

2010年06月21日 19時59分55秒 | 若い詩歌


水にただよう 浮草に
おなじさだめと 指をさす
言葉少なに 目をうるませて
俺を見つめて うなずくおまえ
きめた きめた
おまえと みちづれに

花の咲かない 浮草に
いつか実のなる ときをまつ
寒い夜ふけは お酒を買って
たまのおごりと はしゃぐ姿に
きめた きめた
おまえと みちづれに

根なし明日なし 浮草に
月のしずくの やどるころ
夢の中でも この手をもとめ
さぐりあてれば 小さな寝息
きめた きめた
おまえと みちづれに

萍水相逢一處
却似同命相慕
目潤婉首頷
回望寡歓依旧
縁数,縁数
応是一生同路

搖曳青萍花否
却待何日成熟
夜半寒意濃
難得筵歓沽酒
縁数,縁数
応是一生同路

一葉青萍歸處
却見月下滴露
甜夢索素手
睡中氣息依舊
縁数,縁数
応是一生同路

天宇・青衣

2008年11月19日 15時17分34秒 | 若い詩歌
毎逢秋去冬来是人去花又別       秋過ぎて 冬来にけらし
嘆一声縁分不該如此難求        人行きて 花別れ
所謂的愛与不愛相隔在哪般       愛てふものは どこにある
為何会譲你宁愿白頭也守候       霜降りつつの
時間已覆水難收            時流れ
弾訴哀愁泪不休            琵琶の弦弾く 憂き涙 
梦碎后已難再回首           振りさけ見れば 世の欠片(かけら)

弾琵琶又見当年鏡前你梳頭       鏡に映す 君の櫛
撥一首満花春秀            琵琶弾きて 花別れ
今日月下再醉孤酒           一人ぼっちの 月下酔(げっかよひ)
雨落枝頭年復一年誰白髪留       雨降りつつの 
譲愛随相思入梦左右          枝の霜
                    愛を偲びと 夢の左右(なか)
夢見我門還挽着手           振りさけ見れば 手の繋ぎ

注:1)「秋過ぎて 冬来にけらし 」は小倉百人一首第2首より借用されたもので、原文は

     「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」
                           持統天皇より

  2)「頭に霜降る」は古典によく出てくるもので、「霜」は「白髪」の意味。

  3)「世の欠片」は「不円満や何かが欠ける」という意味でありたいもので、「夢の欠片」なら字余りになるから、恐縮だ。

  4)「夢の左右(なか)」も同じように字余りが故に、「左右」を「さゆう」でなく「なか」を詠んでほしい。


  5)詞は流行歌手・馬天宇さんの「青衣」である。直訳するものではなくて、意味を考えながら、訳したものであるから、意訳するところが多い。

小さな囁き

2008年06月24日 18時14分07秒 | 若い詩歌

 
    一

  三つの「あ」


 
 「愛してる!」
 「アッ」とびっくり。
 「愛言うな。」


 「今の世なんて
  イメージできる? 


  嘘ばかり。」

 僕は日本詩歌(特に俳句や和歌)の影響を受け、5・7・5調を好むようになるのである。これを日常的会話において実践しても、かなり古典的なリズムができる事に気がついた。


    二

   仮名二人


 「ス」の表(かお)に
 「す」がバレーをし・・・


 これは短いとは短いであるが、けっして文字の遊びと言葉の積もりではない。
 漢字の画質やイメージ感が中心。それに想像力も必要であろう。
 塾で五十音図を初心者たちに教えた時にも、「ピン」っと頭に飛び込むこの発想が仮名を記憶するいい方法にもなるのであろうか。
 

西瓜

2007年07月18日 22時15分39秒 | 若い詩歌
夏風は柔らかい波線を引きました
包丁をぬらした 俎板をぬらした
皿をぬらした 匙をぬらした

唇と舌をぬらした
歯をぬらし、胃をぬらし、血をぬらした
爽やかに心臓と肝をぬらした、

この赤波の勢いは
私の神経をぬらした。




空歓喜

2007年06月13日 13時02分56秒 | 若い詩歌
庭外燕子巣中空歓喜、人間同窓網上憶別離。                遥想去年平湖小風景、又有多少依稀変夢里。

注:1、「人間」とは、「世の中」という意味です。
  2、「網上」とは、「ネットのこと、またオンライン」という含みもあります。
  3、「依稀」とは、「おぼろに」という意味です。
  4、「喜、離、里」は、中国語のピンインで「xi,li,li」と読みますから、韻を踏むことになります。

千年の書斎(散文詩)

2007年06月08日 18時42分25秒 | 若い詩歌
  千年の書斎、詩文の避難。

  千年の書斎、聖賢の隠居。

  千年の書斎、唐宋元明清。

  千年の書斎、灯窓弦眠心。

  千年の書斎、永遠の所載。

 注:今日は「千年書斎」という散文を読みました。それを要約して音読を生かしながら、以上の「千年の書斎」を書きました。中国の書斎文化をどれぐらい伝えているかが分かりませんが、ごゆっくり楽しんでください。「灯窓弦眠心」は書斎文化の核心だと、私は思っております。
 「唐」対「灯」ー古代の中国では電気などがまだありませんでしたから、灯火を用いて読書するのは一般的でありました。
 「宋」対「窓」ー「寒窓苦読」という言葉があります。「窓」が書斎文化の一つとして、中では伝統的な透かし彫りが多くあり、中国特有の趣が現われます。それに「深窓」などの言葉からもその趣が感じられると思っております。
 「元」対「弦」-古代で楽器を「糸竹」だと呼びました。ですから、「糸竹」を「管楽と弦楽、楽器の総称また音楽」などと考えたらば、間違いないです。
 「明」対「眠」-「春眠曉を覺えず,處處啼鳥を聞く。夜來風雨の聲,花落つること知りぬ多少ぞ。」という詩を知る日本の方が少なくないと思います。ですから「眠」は理解できると思っております。そして、ここの「眠」はただ「寝る」あるいは「眠る」の意味だけでなくて、のびのびして読書を楽しむ人々の心のありようをも表します。
 「清」対「心」-ここで「心」を「心境」に理解したら、問題ないと思います。それに、「清朝」の「清」は「清い」の「清」でもありますから、書斎文化における清くて静かな心を追求する目当も分かってくれるでしょうか。
 以上で一言説明いたします。

潮狩り

2006年04月13日 12時27分42秒 | 若い詩歌
両手の優しさで
波を揚げる女子よ
貝殻と螺が
僕の幻に
その洗われたベッドカバーから
落下!

夢の影に
僕は潮狩り子の如く
一個、一個
海の匂いが赤い桶から溢れた
青い波に漂う
風とともに

僕が自分の海中
螺を耳にして
清清しい海風が
遠方から聞こえる

 ある日、学校の2B女子寮の或るベランダで一人の女子学生がベッドカバーを洗うのを見た後、この詩を書いた。空の薄青と同じようなその貝殻と螺の模様があるベッドカバーが僕の美しい連想を誘った。


午後の運動場

2006年04月01日 22時27分25秒 | 若い詩歌
春の午後
運動場が寂しい
草が囁いたり
笑ったりして
西の隅で
鉄棒が
黙ってる

春の午後
運動場が恥ずかしい
風が走ったり
跳んだりして
真ん中の球場に
笑い声が
消えてる

春の午後
運動場が悲しい
空が晴れたり
曇ったりして
東の樹の下に     
鉄の欄干が
錆びてる

ああー!午後の運動場よ
君は休憩してるのか
なぜ黙々と
何も話してくれない!

 でんどう三輪車さんのご指摘で、完璧な詩となりました。




デビュー面接

2006年03月31日 22時11分48秒 | 若い詩歌
春の奏鳴曲に伴う
若葉が老樹の皴に
しん——と
舞踏する————清清しい朝

柳煙の路地を通じる
三輪車が靄の中で
りん——と
市場へ走った——元気な八百屋さん

今朝の321バス
スピードが速い
「あっ!」と
足が踏まれた——可哀相なミス(Miss)

自信を持っている私
スーツを着て
NECへ行く——デビュー面接