寮の管理人(門衛をさす)が男女二人いる。二人とも中年で交替勤務の形で働いている。
一 男子の編
先日のことであった。昼ごはんを終えて寮に帰ったところ、緑化帯に紅い花が咲いているのを目にした。花弁が柔らかくてとてもきれいだ。それに、蕊がはにかんでドンヨリした外の世を眺めるようだった。
その門衛のおじさんがちょうど一階の階段でタバコを吸っていた。彼に尋ねた。
「これですね。これはハイビスカスと言います。南寧の市花です。」と、彼は親切に教えてくれた。
「なるほど、きれいな花ですね。」と私は言った。
「小さい頃、私達はよくハイビスカスの花を摘んで、その蜜を吸い込んだものですよ。美味しかったですよ。今はそういう光景はあんまり見えないんですね。」と彼は言いながら、憧れるような回想状態に陥れていた。
「昔ですね。南ネイでは鳳凰木という街路樹がありました。花期になると、真っ赤な花が火事が出るように満開していました。とてもきれいでした。しかし、鳳凰木は一種の毛虫をおびき寄せるため、花期の到来につれて、毛虫も増えていました。長い糸を吊るして、ふっと襟の後に、あるいは髪の毛にその毛虫が落ちたこともしばしばでとても困りました。あの頃ね、家々で鶏を飼っていましたが、それでも毛虫を全部啄ばめないほど多かったです。」
「はは、そうすれば、鶏がみなよく肥えていたでしょう?」
「そうなんですよ」
「仕様がなくて、結局鳳凰木を全部切り倒して、ハイビスカスを緑化樹木に植えていました。」僕にわかりやすく説明するため、おじさんは引き出しからノートとペンを出して、スッケチを書いてくれた。
その皺っぽいノートを捲った時、そばにいた私はざっとたくさんのスッケチを目にした。優れるスケッチとはいえないが、たくさん描いた。
「スケッチが描けるんですか」と僕は聞いた。
「いや、できないんです。ただ趣味として時々書きます。とんでもないものです。」とおじさんは笑いながら、軽快に言った。
二 女子の編
夕べ。自習後、寮に帰る途中、入口のところで、門衛の中年女性にはじめて気がついた。楽譜の書いてある本を夢中に読んでいた。簡単に挨拶してから、表紙を見ると、「中級声楽」という本だった。
「ええ、おばさんは声楽もできるんですか」
「いや、できないんですわ。趣味、ただ趣味ですわ。」文末の「わ」がとても親切であった。(実は「ラ」と発音して両広(広東と広西)の話す習慣ーよく文末に「ラ」という音が付く)
ちょっとその本を捲って読んだが、民間歌謡や外国名曲が多かった。
「ね、学生さん、君は歌に向いていますよ。特にテノール」と、おばさんはいきなり言い出した。
「声が響きますから」とまた教えてくれた。
まあ、ただの褒め言葉であろう。信じられないんだ。
しかし、僕はこの二人のことが好きになるようだ。別ではないが、その生活に対する心の有様がとても素晴らしいと、私は考えている。門衛とは、多くの人から見れば、そう偉い職ではないであろう。が、それでも、前向きに生活を愛する二人のことはえらいといえるであろう。
赤いハイビスカスの花は歌を歌っているよ。君は聞こえるか。