緑 島 小 夜 曲

春を愛する人は、心優しい人。

俳句一首

2006年10月28日 13時38分49秒 | 俳句和歌
           汽車に梨とともに寝てる一男子
        「きしゃになしとともにねてるいちだんし」

  注:梨は中国語で[li]と読んで離別の「離」と同じ発音であり、秋の季語でもある。

以下の文章は私の恩師であるキタムラ先生に。

              夏の思い出
 私が物心つく頃、おばあさんがずっと身近だった。学校の夏休みはいつも長かった。だから、よくおばあさんの実家に行って夏を過ごしたものだ。
 隠れ里だから、バスに一時間乗った後、更に三時間歩かないと行けなかった。私はバスがいやだったから、この三時間はいつも楽しみにした。峠を越えたり小川を渡ったりして、とても面白かった。野良道のそばに色とりどりの花が咲き乱れ、野生の青いリンゴもいっぱい枝に実っていた。ときに牛飼いのお兄さんと会ったことがある。いつも葉笛を作ってくれた。私はうまく吹けなかったが、緑の葉からの自然の清純さを持つきれいな音がとても好きだった。
 時に四、五時間もかかって村についた。ずっと田舎にくらしていたおじさんがいつも村のはずれに待って迎えに来たのだ。そしていつも晩御飯の頃だった。
 岩と黄土の山に隠見した村はおばあさんの実家だった。迎えに来たのはいつもわたしの二番目の叔父だった。田舎の晩御飯は町よりそんなに豊かではなかったが、あっさりした自然の味だったから、いつも茶碗の底も見えるほど食べてしまった。オンドルのそばに名が「虎子」という老犬がいつも静かに寝ていた。どうも私に冷淡な態度だなと思った。
 食事後、おにごっこの時間になった。隣の仲間が十七、八人で組に分けて遊び始めた。今でも、私はその無気味なお化け屋敷のような廃墟をはっきり覚えていた。
「路路、帰りなさい」とおばあさんの声が遠くから耳に入った時、みんなが「狼が来た。狼が来た。帰ろう帰ろう。」と歌いながら、それぞれ自分の家に戻っていった。私が冷たい井戸の水で体を洗ってオンドルの上に体をのばして、とてものびのびした気持ちだった。おばあさんがこのときいつも怪談物を話してくれた。人間の皮を着て青白きインテリを化かす狐とか、おにごっこの子供を食う物凄い妖怪とか、とても面白かった。物語を聞きながら、僕は夢を見はじめた。
 朝はいつも朝寝坊をした。「おきなさい、おきなさい。太陽に笑われるよ。」というおばあさんの声がいやだった。ご飯を食べて、いつも西川に遊びに行った。空き瓶をもって、魚や川の蝸牛を取ったり水合戦をしたりした。名の知らない細長い水中の虫が澄んでいる空き瓶で一生懸命に踊る姿がとても面白かった。
 夏休みがいつも楽しかったが、終わりにいつも大変だった。問題は宿題だった。徹夜で三、四十編の日記をつけたり、同じ内容を何回も書いたりしたものだ。その中にたくさん書いたのはおばあさんの実家の出来事だった。
 昨年、私は昔と同じように叔父さんの家に行った。同じところだったが、祖母がいなくなった。同じ夏休みだったが、思い出がちがう。
                               2005年6月25日