緑 島 小 夜 曲

春を愛する人は、心優しい人。

憶江南(4)

2009年11月02日 12時25分04秒 | 心境写生
 私が一人で明孝陵の神道(お墓を鎮護する神獣の像や翁仲らなどが列で立ってある石道)を散策した。

 初秋の日差しが暖かく両側の木々を照らしていた。古代なら秋を「悲しむ」のが慣わしだった。宋玉が『九弁』の冒頭文を「悲しむ哉(かな)秋の気配、物寂し兮(や)草木枯れ落つる」と記して「悲秋文学の祖」の地位を確立した。その以降の文学において、「秋を悲しむ」のが是が手本(モデル)となるという。

 しかしながら、目の前のこの暖かい秋景色に面して、私はどうしても悲しむことが出来なかった。心を込めて悲しむことに努力したが、成果として、西安香積寺(浄土宗の祖庭)の石碑の一句を思い出した――『悲欣交集』だった。弘一大師(李叔同)が最期の時の心の有様だそうだ。私にはそういう気持ちが無理だ。

 まあ、いいや。南京の秋は嬉しいこと!その神道にて私の悲秋は失敗を告げた。日差しのせいであった!