あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

10月4日 Porters

2012-10-05 | 最新雪情報
10月頭、ニュージーランドの学校は春休みである。
娘とその友達を連れてポーターズへ上がった。
10月に入ると街は春爛漫、街にいるとスキーという気分ではなくなるのか、山にも人は少ない。
ポーターズもシーズン終了予定は6日。
ゲレンデ下部は雪も少なく、通路のように雪が残っている。
だが上部には雪はたっぷりあり春スキーが楽しめる。

子供達を連れて山頂で景色を眺める。
僕は子供達に言った。
「今立っているこの場所はクライストチャーチから見える山だ。そのむこうにはこの景色が広がっているんだよ。そしてこれが君達の住んでいる国だ」
娘の深雪が言った。
「うわあ、気持ちいいね」
「そうだ。その『気持ちいい』というのを感じることが大切なんだよ」
こんな場所で地理の勉強もする。
「さて、みんなニュージーランドで一番高い山はどこだ?」
「マウントクック」
「そうだな。ここからでも見えるぞ、どれか分かるか?」
「あれじゃない?」
一番年少の坊主が言った。
「そう、あの遠くで上が平らに見えるでっかいのがそうだ」
別の娘が言った。
「もっと、尖っているかと思った」
「そう、君が前に見たクックは湖の方から見ただろ。そうすると尖って見える。だけど横から見るとああいう形で見える。山ってのは見る角度で違った形で見えるんだよ」

景色を眺めた後は体育の授業、スキーの時間だ。
急斜面は子供達を引き連れて滑り、緩斜面は各自で滑らせる。
子供一人一人に課題を与え、それぞれにやらせる。
他所のとあるスキー場ではこんなことをしたらスキーインストラクターが営業妨害だと文句を言ってくるが、ここでは僕もスタッフの一員なので何も問題はない。
ワンポイントのアドバイスだけで子供達は見る見る上手くなる。
何より楽しく滑るということが一番なのだ。
ハーフパイプにだって入る。
ジャンプなどはできないが、その中を行ったり来たりするのだって楽しい。
深雪がきっちりと小さい子の面倒を見ている。
実によろしい。

時には雷も落とす。
僕は自分の子供と同じように他人の子供を叱る。
そして自分の子供と同じように他人の子供を誉める。
子供というのは自分だけの物ではない。
子供は地球の、全人類の財産なのだ。
その子供達にこういう経験をさせるというのが自分の役目だと思っている。
自分にできることをする。
それには自分が何をできるのか知らなければならない。
今日の自分にできるのはこれである。
何の疑いもない。
何故ならその行動の原動力は愛だからである。
これが僕の愛だ。
子供が育つのに20人の大人の愛が必要だと言う。
それは親の愛はもちろんだが爺ちゃん婆ちゃん、親戚のおじさんおばさん、学校や塾の先生、クラブ活動のコーチ、近所のおじさんおばさんなどなど。
甘やかすだけが愛ではない。
時にはきびしく怒鳴りつけるのだって必要だ。
自然を甘く見た人間が痛い目にあうように、きびしい警告も知らなければならない。
そしてそれを与えるのが父親の愛だ。

1日の終わりごろには全員一人でTバーに乗れるようになり、初級者コースは難なく滑れるようになった。
最後の1時間は好きなように滑らせる。
だが釘を刺すのも忘れない。
「いいかみんなよく聞け。俺はスキーパトロールをやってきた。その経験で言うが、1日の終わりが一番ケガが多い時間だ。知らないうちに体が疲れてきてるからな。みんなも最後の最後まで気を抜かないように集中して滑りなさい。ケガをして痛いのは自分だ。俺じゃない。自分の身は自分で守りなさい」
釘が効いたのか、山の神が守ってくれたのか、子供達は怪我もなく最終リフトまでスキーを楽しんだ。
僕は帰る前に手を合わせ山に拝み感謝の言葉を唱えた。
「今年も良いシーズンでした。子供達も今日は良い1日を過ごせました。ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。」
来シーズンにはこの子供達も、急斜面を滑るようになる事だろう。
そしてそれを見守ってやろう、それが自分にできることだと思いながら山を下った。


この景色ともしばしお別れ。山に向って拝む。



午前中は下部で練習。


名物バーン、ビッグママの雪も途切れた。


全員が一人でTバーに乗れるようになった。そういう時は思いっきり誉める。



そして山頂へ。


とにかく楽しい。


深雪がきっちりとスピードをコントロールして滑る。こうなると大人も楽だ。


パトロールのデイブがマットを引っ張って降りてきた。僕も昔やっていた事を思い出した。


子供が楽しいと大人も楽しい。皆ハッピー、笑いながら滑る。





コメント (3)
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