あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

クィーンズタウン

2011-07-27 | 日記
今ボクはクィーンズタウンに来ている。
夏の間、働いていたタンケンツアーズのボスに呼ばれてやってきたのだ。
先々週ボスのリチャードが電話口でこう言った。
「7月終りの1週間は誰もいなくなってしまうんだ。そこでオマエの助けが必要だ。それにオマエ長いことこっちで滑ってないだろ?たまにはこっちで滑ったらどうだ?ドライバーの仕事だから昼間は滑り放題だぞ。」
確かにボクは以前はクィーンズタウンでスキーのガイドをしていたが、ここ10年ほどはカンタベリーのスキー場ばかりだ。
たまにはクィーンズタウンやワナカの冬景色も見てみたい。
正直、気持ちは大きく動いた。
「そんなこと言ってもなあ。深雪の面倒もあるし、ミセスの了解を得なきゃあならんしなあ・・・」
ボクは電話口から女房を盗み見た。
一部始終を聞いていた彼女は仕方ないわねという顔で首を縦に振った。我ながら良く出来た女房である。
「ヘイ、リチャード、ミセスがOKを出したぞ」
というわけでバタバタとクィーンズタウン行きが決まった。

会社が飛行機を予約してくれて24日の朝、空港へ行った。
チェックインを済ませ登場口へ行ったがなかなか搭乗できない。
そのうちにアナウンスが入り、クィーンズタウンが大雪の為しばし天候待ちをするとのこと。
結局、1時間後フライトはキャンセル。バスで行くことになった。
飛行機なら55分、バスなら休憩も入るので7時間。
気が重いが天気に文句を言っても始らない。
すべての結果を肯定的に受け入れること。自分への課題でもある。
バスに揺られテカポを越えオマラマへ、そしてその先にはリンディスパスという峠がある
この道は雪が多ければ閉鎖にもなる。そうなったらバスの中で一晩を明かすこともありうる。
絶妙のタイミングでバスドライバーがコメントを入れる。
「前にこれと同じことがあったんだけど、その時は夕方4時にクライストチャーチを出てクィーンズタウンに着いたのは朝8時でした。」
こうなるととにかく無事にクィーンズタウンに着いて欲しい。それだけだ。
リンディスパスは案の定雪道。積雪5cm。今はまだ通れるがこのあとも通れる保証はない。
かなりゆっくりだがなんとか越えると、その向こうにはきれいな星空が広がっていた。
星空の下、バスは快調に走る。
だがクィーンズタウンの近くまで来るといきなり星空は曇り、辺りは大雪となった。
道路の上にも10cm近く積もっている。
車をピックアップして普段は20分の道を30分かけて走る。
目の前の車が雪で滑り路肩から落ちて誰かの家のフェンスにぶつかった。
結局トモ子さんの家にたどり着いたのは9時半を回っていた。
家を出てから13時間か、長い1日だった。

次の日は仕事がキャンセル、急に休みになった。
仕事は休み。山には新雪。
この状態で滑らずして何をせよというのだ。
ボクはいそいそとコロネットピークへ向った。
この山で滑るのは13年ぶりぐらいか。
20年前ボクがスキーを覚えたのもこの山だし、女房と初デートしたのもここだ。何かと想い出は多い。
コロネットは地形が複雑で毎日滑っていても飽きない山だ。
91年から3シーズン、ボクはここで仕事もせずに毎日毎日スキーをした。俗に言うスキーバムというやつだ。
その時にパウダーの楽しさを知り、その白い粉はボクの人生さえも変えてしまった。
この日もパウダーは軽く、複雑な地形は遊ぶ所が多く、僕は充分に楽しんだ。ノスタルジックな思いに浸りながら。
だがここはリゾートでもある。
リフトは自動改札、人口降雪機は300台。駐車場まで道は舗装されている。
カフェでコーヒーを頼めば、自分の番号と注文した物がスクリーンに表示される。
何と言っても高速リフトである。
深雪が小さい時に、初めてリフトに乗った時の言葉を思い出した。
「チェアリフトってすごいね。座ってるだけで山の上に着いちゃうんだから」
ロープトーとTバーしか知らない人がリフトに乗るとこうなる。
ともあれコロネットピークはニュージーランドで一番進んでいるスキーリゾートだろう。
ブロークンリバーとは対極の位置にある。
たまに来るのにはいいかもしれないが、自分のホームはここではない。
はっきりとそれを感じた。
コメント (1)
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