平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

夜回り先生(月刊『致知』2005年4月号より)

2005年04月14日 | 最近読んだ本や雑誌から
非行や薬物中毒の青少年を救うために、毎夜、繁華街を回っている高校の先生がいます(今は教員をおやめになりました)。水谷修さん、別名「夜回り先生」。以下はそのインタビュー記事の一部です。

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 夜の世界に行きたくて行く子はいません。誰だって昼の世界で認められたいんです。本当は親や先生に「おまえのここがいいよ、ここが素晴らしいよ」と褒めてもらいたい。でも、昼の世界の大人たちは決して彼らを認めなかった。
 そして夜の世界へ追いやられてきた子どもたちはふてくされ、非行、犯罪を繰り広げる。あるいは、悲しいかな、援助交際などという名のもとに一晩の男の優しさに救いを求め、さらに傷ついていきます。
 これまで夜の街で数え切れない子どもたちと出会ってきました。僕と出会い、人生をやり直した子もいましたが、さらに深い闇に沈んでいった子もいた。負けた回数のほうが多かったんじゃないかと思います。(10頁)

 日本で一番薬物についての本を出しているのは誰だと思います? 僕ですよ。一高校の社会科教師が専門書まで書いて、日本の第一人者と呼ばれている。それが日本の薬物の現状です。まともに薬物依存症の治療ができる医師は全国に十数名しかいません。
 しかし、対照的に若者の間ではわれわれが太刀打ちできないほどの速さで薬物が広まっています。いま第三次覚せい剤乱用期と呼ばれ、警察庁の発表では、日本のあらゆる薬物の乱用者は160万人といわれています。日本国民の70人に一人の割合です。
 専門家の間では、「薬物は大人は点で広がるが、子どもは面で広がる」といわれます。大人は見つかるとヤバイから隠れて使う。しかし、子どもたちは集団で使うからどんどん広がっていく。「子どもの薬物使用は感染症だ」と言った人もいました。(11頁)

 大人はずるい。いやなことがあっても、酒を飲もうが、夜の街で遊ぼうが、いくらでも鬱憤晴らしができる。でも、子どもには昼の学校と、夜の家庭しかないんです。そこで追いつめられたら心がパンク寸前ですよ。
 ここで子どもは二派に分かれます。
 ある程度心の強い子は、夜の闇に沈んでいく。でも、その何十倍もの心の優しい子どもたちは、「私が悪い」と自分を責め、一人で悶々と苦しんでいるのです。両親に怒られるのは私が悪いから、学校の先生に怒られるのも私が悪いから、友達にいじめられるのも私が悪いから……。自分を責め続け、イライラして夜も寝られない。そこでカミソリを持つわけです。(12頁)