平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

(14)米国産牛肉輸入再開の「事前の現地調査」の実態

2006年01月31日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (14)

1月30日の中川昭一農水相の、「米国産牛肉の輸入再開前に、約束した事前の現地調査を行なっていなかった」、という発言はあきれるはてるものでした。

米国産牛肉が安全かどうかは、現地調査をしてから初めて結論が出せるはずです。そして、事実、政府は事前調査することを閣議決定していたのです。ところが、閣議決定に違犯して、輸入を再開してから調査団を送ったというのです。これでは何のための調査かわかりません。

要するに、小泉政権としては、ブッシュ大統領に言われて、輸入再開という結論が先にあって、あとは形だけの手続きをして、国民に適当に言い訳をしたかったわけですが、その形式的手続きすら、前後関係が入れ違っているほど杜撰なものであったわけです。

時系列順に書いてみます。

・2005年10月31日
 第34回食品安全委員会プリオン専門調査会開催。調査会は、「BSE発生で禁止された米国、カナダ産牛肉の輸入について、再開を容認する答申案をまとめることを了承した」。
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=488

・11月16日
 ブッシュ大統領が来日し、小泉首相と会談。米国産牛肉の輸入再開を要請。

・12月8日
 食品安全委員会が輸入再開を認める答申を出す。ただし、
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 北米産牛肉の安全性をめぐり、内閣府の独立機関である食品安全委員会・プリオン専門調査会の12人の専門委員のうち、半数近くが諮問の仕方や米国での輸入条件順守の実効性について、疑問や不安を抱いたまま、輸入再開を容認する結論を出していたことが共同通信社の聞き取り調査で7日、分かった。
 「生後20カ月以下で危険部位を除けば日本とリスクが同等か」という限定された諮問内容に対し「都合よく結論ありきの議論をさせられている」(品川森一委員=動物衛生研究所プリオン病研究センター長)との批判もあった。
 安全性を左右する危険部位の除去など、諮問の対象外である米国の安全対策への不安が専門委員の間にも強いことが浮かび上がった形で、禁輸解除に踏み出す政府は米国の安全対策の監視という「重い責任」を負うことになる。
 食品安全委は8日に答申を提出し、政府は12日にも輸入解禁を決める。
(共同通信) - 12月7日23時10分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051207-00000326-kyodo-bus_all

・12月12日
 政府は、事前調査を前提に輸入再開を正式決定。

・12月13日
 調査団、アメリカとカナダで現地調査を開始。

・12月15日
 厚生労働省と農水省が説明会。
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 北米産牛肉の輸入再開決定についての説明会を厚生労働省と農林水産省が15日、東京都内で開き「米国、カナダに輸入条件をきちんと守らせるよう取り組んでいく」などとして、集まった消費者、食肉業者ら約500人に理解を求めた。会場からは「食品表示が不十分」などの不安の声が出された。
 説明会では冒頭、厚労省の担当者が輸入再開決定について「食品安全委員会が、一定の条件を満たした場合の北米産牛肉と国内産では、安全性の差は非常に小さいと評価したため、輸入禁止措置を継続する科学的根拠がなくなり、輸入を認めることが適当と判断した」と説明した。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051215-00000216-kyodo-soci

・12月16日
 米国産牛肉、日本に到着。

・12月24日
 調査団、帰国。

・2006年1月19日
 第35回食品安全委員会、政府の手続きに危惧を表明。
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 食品安全委員会の専門調査会が19日開かれ、米国とカナダでの査察前に、牛肉輸入が再開されたことに対して疑問の声が相次いだ。吉川座長は「再開前に両省が米国に行って見てきて、それから再開だと思う」と発言。寺田雅昭・食品安全委員長も「これでは国民が牛肉(の安全性)について耳を貸さなくなる」と批判した。
(毎日新聞) - 1月19日22時4分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060119-00000144-mai-soci

・1月20日
 小泉首相が1月20日の第164回国会の施政方針演説で、
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 昨年12月、科学的知見を踏まえ、アメリカ産牛肉の輸入を再開しました。消費者の視点に立って、食の安全と安心を確保してまいります。
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http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2006/01/20sisei.html
と述べる。その数時間後、輸入牛肉から背骨が見つかる。

昨年12月15日の政府説明会で、厚生省の担当者が、「食品安全委員会が、一定の条件を満たした場合の北米産牛肉と国内産では、安全性の差は非常に小さいと評価したため、輸入禁止措置を継続する科学的根拠がなくなり、輸入を認めることが適当と判断した」と説明していますが、調査団は、アメリカ食肉業界が「一定の条件を満たし」ているかどうかをチェックするのが、その任務でした。

政府は当然、調査団の報告を受けてから輸入再開を正式決定すべきでしたが、それすらもしないで、輸入再開してしまったわけです。悪質としか言いようがありません。

それどころか、12月16日に米国産牛肉が日本に到着したということは、12月12日よりもだいぶ前に、日本への輸出が準備されていたことを示しています。輸出再開という結論が先にあり、あとはただの見せかけのアリバイづくりであったわけです。

しかも、この調査たるや、まともな調査ではなかったことは週刊文春にも出ていましたが、最近、多くの読者を集めている「きっこの日記」でその実態が暴露されています。

http://www3.diary.ne.jp/user/338790/ 1月31日

必読です。

(13)狂鹿病(CWD)とは

2006年01月30日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (13)

プリオンによる病気は牛だけではありません。羊にスクレイピーというプリオン病があることはすでによく知られています。

いま北米の鹿の間に、慢性消耗病(Chronic wasting disease: CWD)という病気がはやっています。この病気については、以下のサイトがわかりやすく説明しています。

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CWDはこんな病気

 CWDにかかったシカは、体重が減り、〈同じところを繰り返し歩行する、他の動物に無関心となる、頭部や耳がうなだれる、軽い運動失調を呈する、両足を広げて立つなどの行動の異常が見られる〉(杉山)。このような症状は数日間で終わることもあれば、1年以上続くこともあるのだが、〈末期には、過剰な飲水と排尿が見られ〉〈嚥下困難、過剰流涎あるいは異物の吸入により誤嚥性肺炎を引き起こ〉(杉山)して、最後には死んでしまう。
 発症するのはおもに成獣で、雄雌にかかわらず感染する。

原因は「プリオン」

 症状を見ただけではCWDと断定はできない。解剖して脳を調べる必要があるのだ。診断の決め手は、〈神経細胞および神経網の空胞変性と〉〈異常型プリオン蛋白質の検出〉(杉山)である。
 この異常型プリオン蛋白質が原因になって起きる病気は「プリオン病」と呼ばれ、牛のBSE(狂牛病)や、人間のクロイツフェルト・ヤコブ病もこの「プリオン病」の一種である。
 このプリオン、生半可な消毒や滅菌が効かない。煮沸くらいでは死んでくれないのである。〈死体の処理および汚染器具等の汚染処理の最も確実な方法は、完全焼却である〉(杉山)。

感染環

 BSEでは、異常型プリオン入りの濃厚飼料(肉骨粉の疑いが強い)を食べた牛が次々に犠牲になったが、シカのCWDでは、プリオンを直接食べなくても感染が進むらしい。〈これまでに捕獲・飼育されたエルクにおいて水平感染が観察されており(中略)自然界でもこのような感染経路が成立していると推定される〉(杉山)。水平感染とは、はじめ健康でも病人(シカ)と一緒にいるだけで同じ病気にかかってしまうことをいう。
 そしてやっぱり、異常型プリオンを口にしてもシカはCWDに感染する。プリオンは〈中枢神経系以外の組織にも存在する〉(杉山)ので、雌ジカの後産などとして〈体外に排出され土壌、牧草などに付着し〉〈CWDの感染源となる可能性は高い〉(杉山)。
 とはいえ、〈感染経路についての詳細もまだ完全には解明されていない〉(杉山)。

人に感染るの?

 世界保健機関は〈これまでにCWDがヒトに感染したという証拠はないと結論づけている〉(杉山)。でも〈リスクを完全に否定できないことから、北米の公衆衛生および野生動物管理に関わる機関は、ハンター、食肉業者、剥製業者などにCWDについての注意を喚起している〉(杉山)。
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http://www.yezodeer.com/newsletter/cwdreview.html

この病気が注目されたのは、鹿の肉を食べたハンターの中に、ヤコブ病になる人が多く出たからです。

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 牛海綿状脳症(BSE)や人のクロイツフェルト・ヤコブ病に似たシカ類の病気、「慢性消耗病」(CWD)の恐怖が米国で広がりつつある。
 英科学誌ニューサイエンティストによると、米国で3人のハンターが最近、ヤコブ病にかかり死亡。このうち2人がワシントン州の同じ町の友人同士だったことが判明。“CWD感染”の疑いが浮上した。
 通常、ヤコブ病は100万人に1人というまれな発生率。今回の調査結果は、汚染されたシカ肉を食べたという証拠がないとして、「CWDとは無関係」の結論を出したという。
 米国では一昨年、シカ類にCWD発生が確認され、農務省が緊急事態を宣言。その後、感染は拡大し、厚生省が人への感染の可能性を調べている。実際に感染するかどうかは不明だが、各国は米国産のシカ肉の輸入を禁止している。
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http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0506usa.html

現在では鹿肉によってヤコブ病になった人は、26名に及ぶという情報があります。

アメリカでは牛肉によるヤコブ病が1人しかいないのに、それよりも食べる人がはるかに少ない鹿肉では26人だというのです。あまりにもおかしな数字です。

CWDは、BSEと同じく、プリオンによって引き起こされますが、その起源は人間にあると考えられます。

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 最初の発生は1960年代後半にさかのぼる。米国コロラド州の養鹿場のミュールジカに衰弱死する疾病が発生し、CWDと命名された。本病は当時、人工飼育によるストレスと栄養素の欠乏によるものと思われていたが、1977年に狂牛病と同様の病変を示す「海綿状脳症」であることが判明した。1980年代には養鹿場および野生のエルク(アカシカ)でも発生が認められ、野生のミュールジカとオジロジカにも拡大した。
 カナダのサスカチュワン州の狩猟牧場では1977年、米国サウスダコタより輸入されたエルクでの発生が確認され、カナダも発生地域となった。CWDの現在の発生地域は、米国コロラド、モンタナ、ネブラスカ、オクラホマ、サウスダコタおよびカナダ、サスカチュワンのエルクの養鹿場である。
 野生ジカ(ミュールジカ、オジロジカ、エルク)での発生は、コロラド州東北部とワイオミング州南東部に限局していたが、最近カナダでも野生ジカでの発生が報告された。
 コロラドおよびワイオミングでの10年間の狩猟されたシカについてのCWDの陽性率は、エルク1.1%(1992~1996年、337例) エルクを除くシカ類で0~5.9%、平均2.5%(1983~1996年、6878例) であった。また、同地域の別の統計によるとミュールジカの発生率は4.9%(4.1~5.7)で オジロジカの2.1%およびエルクの0.5%よりも有意に高い値を示した。しかし、流行地以外の300例の調査では、すべて陰性であった。
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http://www.yezodeer.com/cwd/cwdreport.html

CWDは最初は飼育鹿に発生し、それが野生鹿にも広まっていったことがわかります。特定の地域の野生鹿の感染率が異常に高いことが気になります。

同じサイトは、さらにこう解説しています。

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 米国におけるCWDが何から感染したかは不明である。養鹿場で海綿状脳症の動物の肉骨粉を含む牛用飼料の給与も可能性として考えられるが、証明はされていない。野生シカでの流行については、その原因は何ら解明されていない。しかし、羊のスクレーピーでは生後間もない子羊が母羊から感染することが知られており、CWDの母子感染も否定できない。また、シカからシカへの水平感染の可能性も否定できない。
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飼育鹿の発病の原因は、やはり養鹿場でのプリオンを含んだ肉骨粉の投与だと思われます。

しかし、野生鹿にもCWDが発生しているのはなぜでしょう? 野生鹿をおびき寄せるために、ハンターが肉骨粉入りのエサをまいたと言われています。それを食べた鹿がCWDになることは理解できますが、それだけにしては感染率が高すぎます。上記サイトはさらに母子感染と水平感染の可能性を指摘していました。

母子感染が起こるとしたら、その原因の最大の可能性は母乳にあると考えられます。つまり、プリオンが母乳から子に伝えられるわけです。


(12)代用乳

2006年01月29日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (12)

1月24日の新聞に小さく出た記事です。

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 農水省は23日、北海道別海町の農場で死んだ乳牛1頭を牛海綿状脳症(BSE)と確定診断したと発表した。国内の感染牛は22頭目。肉や内臓などは焼却処分されるため市場には出回らない。
 農水省などによると、5歳4カ月の雌のホルスタインで、20日に死んだという。感染源の恐れがあるとされる肉骨粉が餌として禁止される前の2000年9月に生まれた。北海道は飼料などを分析して感染ルートを調べる。
 21日に道内の検査機関で実施した1次検査で疑陽性となり、2次検査でも陽性だった。(共同通信) - 1月23日22時46分更新
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昔なら一面トップに出るようなニュースですが、今では慣れっこになってベタ記事扱いです。

22頭目のBSE牛とは、アメリカの10倍ですね。日本でBSEが蔓延しているのか、アメリカでBSEが隠蔽されているのか。

アメリカでは、牛の肉骨粉が豚や鶏の飼料として今でも使われています。牛の肉骨粉を利用するかぎり、その肉骨粉が製造工場などの汚染で、牛に投与される危険性(これを「交差汚染」といいます)が残ります。

これに対して日本では、牛の肉骨粉の利用は2001年に全面禁止されましたが、豚や鶏の肉骨粉は、プリオンを含まないとして、今でも豚や鶏の飼料として使われています。(豚や鶏が共食いさせられるわけで、これも問題がないわけではありません)

記事の牛は2000年9月生まれですから、肉骨粉を食べた可能性はあります。しかし、日本の21頭のBSE牛の飼育状況を調べてみると、肉骨粉がすべての原因とは考えられません。BSEのもう一つの原因ではないかと疑われているのが代用乳です。

代用乳というのは、生後7日から約1カ月間、子牛に与えられる人工乳です。脱脂粉乳、動物性油脂、 動物の血漿タンパクなどが調合されています。なぜこのような人工乳を飲ませるかというと、

・母乳(牛乳)は人間用に販売する。
・子牛を早く肥育させる。

という二つの理由からです。

この代用乳の中に含まれている動物性油脂は、先に説明した「レンダリング」によって得られます。現在のところ、油脂そのものがBSEを引き起こすとは考えられていません。しかし、油脂の原料が牛である場合、そしてその牛がBSEであった場合、プリオンが油脂に混入する可能性はないのでしょうか?

この連載(4)の毎日新聞の記事にもありましたが、日本で見つかったBSE牛が飲んでいた「ミルフードAスーパー」という代用乳には、アメリカから輸入した材料が使われていました。それには「豚の血しょう」と「牛の油脂」が含まれていました。そのどちらか、あるいは両方がBSEを引き起こした可能性があります。

同じ記事によりますと、「群馬県宮城村で見つかった国内3頭目の感染牛には「ミルフードAスーパー」は与えられていなかったが、同工場〔科学飼料研究所高崎工場〕で製造された、豚の血しょうたんぱく入りの別の代用乳を飲んでいた」こともわかっています。「豚の血しょうたんぱく」だけでもBSEを引き起こすのでしょうか? それとも、豚の血漿に牛の血漿が混入していたのでしょうか?

血漿タンパクは、牛の血を材料とするものと、豚の血を材料とするものがありますが、どちらにしても、草食動物である牛の子に、牛または豚の血を飲ませているわけです。明らかに自然の摂理を逸脱していますから、そういう成分を含んだ代用乳を飲まされた牛がBSEになる可能性は否定できません。

日本で発生したBSEは、代用乳が原因の可能性が高いのです。以下は昨年12月段階での情報です――

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全農(全国農業協同組合連合会)とその最大組織である「ホクレン」がBSE汚染代用乳(生後直ぐの子牛に与えられる人工乳)を製造・販売し、これが日本のBSE発生の原因だったとの疑惑が強まっている。

これまで厚労省は、英国から輸入された感染牛に由来する肉骨粉による配合飼料への交差汚染が発生源の可能性が高いとして、肉骨粉を原因に仕立て上げてきた。しかし、肉骨粉全面禁止後に生まれ飼育された牛の感染が確認されるなど肉骨粉原因説は大きく後退し、あらためて代用乳原因説が浮上してきた。

日本政府は、日本でのBSE感染経路の解明に蓋をしたまま全頭検査を緩和して、さらに危険な米国産牛肉解禁に踏み切ろうとしている。発生源として敢えて否定されてきた代用乳をめぐる業界団体と農水省の動きを検証する。隠蔽体質に汚染された農水省は市民の命を守るという気などさらさらない。

表は、これまで確認された感染牛の出生・飼育県と出生年月日・生後月齢だ。これに感染源と疑われる代用乳(ミルフードA・ピュアミルクH他)の使用状況を書き加えたものだ。この表から読み取れることは三点。

1 国内でこれまで発見された二〇頭のうち一三頭の誕生が、一九九五年一二月から九六年八月に集中しており、2 これらは、問題の代用乳を一様に摂食している。3 しかしほとんどの感染牛に肉骨粉は与えられていない。

この表を見る限り日本のBSEは、「科学飼料研究所高崎工場」(全農子会社)製造の代用乳によって発生したと考えるのが当然だったのだ。もともとBSEは仔牛の時に感染しやすいと言われており、多くの生産者は、当初から代用乳を疑ってもいたのだから。

しかし「BSE疫学調査報告書」(二〇〇三年九月)は、「代用乳使用とBSE発生は関係があるとはいえない」と結論した。この時点で七頭の感染牛が確認され、その七頭ともが同じ代用乳を給与されていたにもかかわらずである。
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http://www.jimmin.com/doc/0443.htm

こういう代用乳で育て、へたり牛が続出しているアメリカで、BSE牛がわずか2~3頭というのは、本当におかしな数字です。

成牛に対する肉骨粉の投与もやめなければなりませんが、代用乳に動物性油脂や血漿を混入することもやめなければなりません。

小泉氏の皇室「改革」

2006年01月28日 | Weblog
いま発売中の『週刊文春』2006年2月2日号は読みごたえがあります。ライブドア事件の背後には巨大な闇が広がっていることが予感されます。この事件がきっかけになって、この闇が表に引き出され、消えてゆくことを期待しています。また、アメリカ食肉業界の驚倒する実態が報告されています。これを読めば、米国産牛肉の輸入など、危険きわまりないことがよくわかります(来週紹介します)。

日本人は性根をすえて現実を直視し、勇気をもって正しい選択をしなければならない時期にさしかかっています。

閑話休題。産経新聞2006年1月27日の記事より――

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 政府が今国会への提出を目指す女性・女系天皇を認める皇室典範改正案に、「女系天皇は皇統の断絶だ」と危機感を募らせた男系継承尊重派の包囲網が強まっている。政府・自民党内に提出見送り論が高まる中、小泉純一郎首相は「今国会で成立させた方がいい」と強気の姿勢を崩さない。このため、党内からは「首相は郵政民営化の時と同様、反小泉勢力による政局ととらえている」などの憶測が出ている。

≪提出見送り論≫
 今週に入って、与野党第一党の国対委員長が相次いで「非常に反対論が大きくなっている」(自民党の細田博之氏)「拙速に決める話ではない」(民主党の野田佳彦氏)と、改正案の提出・審議に慎重な姿勢を表明した。特に細田発言は「やめた方がいいという官邸へのメッセージ」(国対関係者)とされる。
 二十六日、自民党の伊吹文明元労相は派閥総会で「皇室典範は憲法と対比されるべき基本法だから、その改正は野党ともかなり話さないといけない。皇室と政府に心の通い合う対話の関係も築かれないといけない」と述べた。久間章生総務会長も典範改正に慎重な考えを改めて示した。
 超党派の保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長、二百四十二人)も総会で「法案を強引に上程すれば、国論は分裂し、天皇のご存在の意義を損なう」として拙速な改正案提出に反対する決議を採択した。
 また、学者ら有志でつくる皇室典範問題研究会(代表・小堀桂一郎東大名誉教授)は同日、緊急記者会見を行い、問題解決の方策を提言した。
 提言は、(1)特別法を立案し、元皇族とその男子子孫に皇籍に復帰してもらう(2)皇室会議が対象者の中から年齢、経歴、適切な人数などを考慮して復帰をお願いする(3)復帰した者の皇位継承順位は、原則として現行の皇室典範の規定を適用する-など具体的な内容だ。

≪切り崩し図る≫
 首相は二十六日夜、「皇室典範に関する有識者会議」の吉川弘之座長(元東大学長)ら同会議メンバーと首相公邸で会食し、皇室典範改正案について「今国会で成立させる。安心してください」と明言した。首相に近い自民党幹部も各派の中堅議員に典範改正に反対する会合に出席しないよう呼びかけるなど、男系尊重派の切り崩しを図っているようだ。
 改正案提出見送りを進言した自民党議員は「首相は非常に硬く、私の意見は退けられた。改正案反対の動きはこれ以上広がらないとみている」と話す。
 首相が強硬姿勢を崩さない背景に、郵政民営化関連法をめぐって対立した平沼元経産相が改正案反対議員のリーダー格に納まっていることへの、首相サイドの警戒心を指摘する声もある。
 実際には、拙速な女系天皇容認に反対する議員と郵政民営化に反対した議員はあまり重なっていないが、一部では「皇室典範問題で小泉さんを攻撃しようとしているのは、郵政民営化に反対した人たちでしょう」(公明党幹部)といったうがちすぎた見方もある。

≪皇室も改革?≫
 首相の独特な考え方が、今回の皇室典範改正へのこだわりにつながっているとの観測も自民党内で広まっている。
 「小泉さんには、伝統や文化より合理化だという頭があるんだろう」
 自民党長老の一人はこう分析する。また、首相の宮中行事に対する言動を目撃した複数の関係者は、次のようなエピソードを紹介する。首相は、天皇が神々に新米を供え自身でも召し上がる新嘗祭に参列した際、「暗いから見えない。電気をつければいいじゃないか」と主張。周囲に「だから皇室はもっと開かれなければならないんだ」と話したという。
 また、歴代天皇、皇后らの神霊を祭る皇霊祭に参列したときには、宮内庁長官に「中で何をやっているのか」と質問。天皇、皇后両陛下に三権の長らが祝賀を述べる国事行為である新年祝賀の儀では、燕尾服着用を求める宮内庁側の要請に応じず、儀礼上、ふさわしくない紋付きはかまで通し「皇室ももっと改革が必要だ」と主張したという。
 関係者の一人は「首相は皇室の神秘的な伝統などは、不合理だとしか感じないのではないか」と危惧(きぐ)を示している。
(産経新聞) - 1月27日2時45分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060127-00000004-san-pol

今さら言うまでもないと思いますが、「女性天皇」と「女系天皇」はまったく違います。これまで、天皇家は「男系」によって継承されてきました。日本の歴史の中で、女性天皇は何人かいますが、女系天皇は一人も存在しませんでした。それが日本の伝統、天皇家の伝統でした。ところが、小泉首相の私的諮問機関である「皇室典範に関する有識者会議」は、わずか1年弱の審議で、女系天皇を認める答申を出したのです。

「皇室典範に関する有識者会議」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/

その結論の当否はさておき、長い歴史を根本的に変える(まさに革命です)にしては、いかにも拙速という感じが否めません。保守派のグループから、女系天皇に対する強い反対論が出てきたのも当然だと思います。

現在の皇族についに男子後継者が一人も生まれなくなったということには、何か深い意味がありますが、私はこの問題について、今のところ、何も言う気もありませんし、言うこともできません。天皇の問題は日本の本質にかかわる問題で、根本的には神知によってしか答えは出ないと思っているからです。

しかし、どのような答えになるにせよ、国民の大多数が納得する答えでなければならないし、国民の大多数の納得が得られるような努力が必要だと思います。それなしに一部の人が出した結論を強行すれば、国民世論が大きく分裂し、天皇という存在が、「日本国民統合の象徴」(日本国憲法第1条)ではなく、「国民分裂の争点」になってしまいます。

小泉氏が拙速なのは、日本や皇室の伝統に対する無知に起因しています。小泉氏は無知なだけではなく、傲慢、不遜でさえあります。

「暗いから見えない。電気をつければいいじゃないか」
「だから皇室はもっと開かれなければならないんだ」
「中で何をやっているのか」
儀礼上、ふさわしくない紋付きはかまで通し「皇室ももっと改革が必要だ」

皇室にも変えなければならない点は、たしかにあるのでしょう。しかし、天皇の儀式と皇室に対する小泉首相の言動は、なんとも心が寒くなります。皇室に対する敬意がどこにも感じられないからです。小泉氏の日本史知識というのは、せいぜい織田信長とその他の戦国武将の、敵をいかに騙し攻略するか、という情報だけなのでしょう。

2004年5月10日に皇太子殿下が、欧州歴訪前の記者会見で、「雅子のキャリアや人格を否定するような動きがあったことも事実です」という発言をなさいました。この発言が皇太子が口にしてよいものかどうかは別にして、皇太子からは明らかにSOSが発せられたのです。それに対して、皇室を援助するための反応を小泉氏は何らいたしませんでした。小泉氏には皇室に対する敬愛の念がまったく感じられません。

小泉氏の「改革」の本質は、その文字がホリエモンのTシャツに踊っていたことに象徴的に示されています。大いなるものへの畏敬の念を欠き、自分の力で何でもできるという思い上がりは、ホリエモンと共通しています。そんな「改革」で皇室問題に手を突っ込まれたら、たいへんです。

皇室に対する敬意を持たない首相を、日本の神々が許すはずがありません。自分が天皇になろうと思った信長は、天下取り間近で明智光秀に殺されました。日本史から学ぶのであれば、そういうことこそ学ばねばなりません。小泉氏の没落はもうじき始まるでしょう。というよりも、もう始まっています。小泉政権はとても9月まで持たないでしょう。首相を辞めたあとは、今のホリエモンと同じく、マスコミからさんざん叩かれることになるでしょう。

こういう人間を昨年の9・11選挙で大勝させた日本国民が不明だった、と言うほかはありません。それはホリエモンを英雄視したのと同じ愚かさであることを、日本国民は痛切に反省しなければなりません。


(11)隠蔽されているヤコブ病

2006年01月26日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (11)

前回、「アメリカでは、病気の牛を、ひょっとするとBSEかもしれない牛を、脊柱などの特定危険部位も除去することなく食用に供していたわけです」と書きましたが、そうするとアメリカではクロイツフェルト・ヤコブ病(以下ではヤコブ病と略称)の患者がかなりいるはずです。ところが、そういう数字はありません。公式発表によれば、

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プリオン病の中でも牛の海綿状脳症(BSE)との関係が指摘されているもので希な疾患に分類されます。イギリスを中心としたヨーロッパ諸国で167例(平成17年1月13日現在)が報告されています。内訳はイギリスが153例、フランスが9例となっており、ヨーロッパ以外のアメリカ、カナダで発生した症例については、イギリスの滞在歴があることがわかっています。
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http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenkou/kansensyou/cjd.htm

つまり、イギリスとフランス以外では、全世界で5例しかないというのです。アメリカ人でヤコブ病で死んだ人は1人です。日本人も1名です。

ところが、アメリカではこういう事件が起こっています。先の田中ニュースより――

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 アメリカ東海岸のニュージャージ州に住むフリーランスライターのジャネット・スカーベック(Janet Skarbek)さんが、その「異常さ」に気づいたのは昨年、地元新聞の訃報欄で同じ町に住むキャロル・オリーブ(Carol Olive)という女性が死んだという記事を読んだときだった。

 記事によると死因はクロイツフェルト・ヤコブ病だったが、スカーベックの友人だった別の女性も3年前の2000年に同じ病気で死んでいた。スカーベックは、ヤコブ病は100万人に1人しかかからない病気だと聞いていたので、そんな奇病にしては自分のまわりで起きる確率が高いのではないかと奇異に感じた。

 死亡記事をさらに読み進むと、もっと奇妙なことに気づいた。ヤコブ病で死んだ2人は、同じ職場に勤めていたことがあるのだった。その職場は「ガーデンステート競技場」という地元の陸上競技場で、そこにはスカーベック自身の母親も勤めていたことがあったので、よく知っている場所だった。(ガーデンステートはニュージャージ州の別名)

 100万人に1人の奇病が、同じ職場から3年間に2人も出るのはおかしい。そう感じたスカーベックは、地元新聞の訃報などを使い、地元におけるヤコブ病での死亡を調べてみた。すると、さらに驚くべきことが分かった。ガーデンステート競技場の約100人の職員のうち2人、競技場の会員パス(一定料金で何回でも入れる常連者用の定期券)の保有者1000人のうち7人がヤコブ病で死亡していたのである。このほか、競技場内のレストランで食事したことがあるという人がヤコブ病で死んだケースも見つかり、合計で13人の競技場に出入りしていた人々がヤコブ病で死んだことが分かった。(関連記事)

 こうした事実を突き止めたスカーベックは、競技場内のレストランで出した牛肉に狂牛病に感染したものが混じっており、それを食べた13人がヤコブ病にかかったのではないか、と推測した。13人はいずれも、1988年から92年の間に競技場のレストランで食事した可能性が高かった。
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ヤコブ病には、プリオンが原因で起きる「変異性」のほかに「弧発性」というのがあり、こちらは遺伝などいくつかの原因によって起きるとされています。上記の事件は、弧発性ヤコブ病だとされてしまいました。そんなことがありえないことは、誰にでもわかります。つまり、アメリカで「弧発性ヤコブ病」だとされている病気の中には、「変異性ヤコブ病」が相当数含まれている可能性が高いのです。

次に、変異性であれ、弧発性であれ、ヤコブ病そのものが隠蔽されている可能性があります。2005年7月のニュース――

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 米国で2頭目のBSE(牛海綿状脳症)感染牛が確認され、今秋にも輸入再開が見込まれていた米国産牛肉の安全性に再び疑問が浮上している。
 政府は米国の検査体制や感染状況を再チェックする方針だが、京大医学部付属病院の福島雅典教授は「アルツハイマーや若年性痴(ち)呆(ほう)と診断された患者にもBSE感染で発症する変異型ヤコブ病の患者がいる可能性がある」と衝撃的な指摘を行った。
 先月30日には、感染牛はテキサス州で生まれ育ったことが判明した。
 こうした事態を受け、輸入再開に向けて安全性評価を審議している日本の食品安全委員会プリオン専門調査会は先月末、詳細なデータを米国に要求、感染状況を再審議する方針を固めた。
 変異型ヤコブ病の詳しい症状は意外と知られていないが、京大の福島教授は「人類で最も悲惨な病気。ガンやエイズとは比べものにならない」とし、こう解説する。
 「破壊される脳の場所によって違うが、初めは数カ月にわたる進行性痴呆や視力障害、錯乱、めまい、無感情などの症状が見られ、次第に筋肉のけいれんや運動失調が起こり、最後は廃人となる。若い人が犠牲になるケースも多い。患者の大半は発病から約3~12カ月で死亡する」
 福島教授は、異常プリオンに汚染された硬膜を脳外科手術などで移植して発病した医原性ヤコブ病のケースから、変異型ヤコブ病についても潜伏期間が(1)約4年(2)約10年(3)10数年など数パターンある可能性を示唆。
 その上で、「正確に変異型ヤコブ病と診断するには、脳の生検か死亡後に患者の脳の病理解剖をするしかない。症状としてはアルツハイマーや若年性痴呆、弧発型ヤコブ病と似ており、そう診断された中に変異型ヤコブ病の患者がいる可能性はある」と指摘する。
 実際、民主党の山田正彦衆院議員は今年2月、国会でこんな不気味な質問をしている。
 「昨年10月14日のニューヨーク・タイムズで、NY州のクラスターという町(人口17万7000人)で、『100万人に1人』といわる孤発型ヤコブ症で4人が死亡したという報道があった。昨年はカリフォルニア、オクラホマ、ミネソタ、ミシガン、テキサス州などで集団発生が表面化している」
 米アルツハイマー病協会などの推定では、1975年は約50万人だったアルツハイマー病患者数が、2005年は約450万人、2050年には1100万人から1600万人になると分析。これは高齢化だけで説明できるのか。
 それでも、政府は米国の外圧を受け、輸入再開を急ごうとしているかにみえる。
 福島教授は「食の安全を守るのは政府の義務。米国産牛肉を輸入せざるを得ないなら、輸入した牛肉を日本の責任ですべて検査するしかないのではないか。情報公開と医学的調査体制を徹底すべきだ」と話している。
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http://www.zakzak.co.jp/top/2005_07/t2005070112.html

100万人に1人の孤発型ヤコブ病が特定の地域で集団発生するなどということは考えられません。

アメリカではアルツハイマーが急増しています。アメリカの数字を日本のそれと比較してみます。

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厚生労働省では3年ごとに患者調査を行っており、「患者調査の概況」(2002)の「主要な疾病の総患者数」によると医療機関で継続的に治療を受けているアルツハイマー患者の数は約89000人(男性28000人、女性61000人)で、その数は年々増加している。治療を受けずに放置されている場合もかなりあると考えられ、実際には日本では60万人~70万人がアルツハイマーにかかっていると推定されている。また高齢化の進展に伴い、患者数は今後急速に増加することが予想されている。
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http://pharmacy.client.jp/altzhimer1.html

単純計算をすると、2005年の数字でアメリカ人のほうが日本人よりも4倍ほどアルツハイマーにかかりやすいということになりますが、なぜそんなことになるのでしょう? アメリカのアルツハイマー患者と言われている中には、相当多くのヤコブ病患者が潜んでいることが推測されます。

(10)へたり牛(ダウナー牛)

2006年01月25日 | 食の安全
狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (10)

ライブドア事件の陰に隠れてしまいましたが、BSE問題も広がりを見せています。

中央紙のサイトには出ていないようですが、北海道新聞の2006年1月24日の記事です。

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 【オタワ23日共同】カナダ食品検査局は23日、西部アルバータ州の農場で牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛が見つかったと発表した。カナダでの感染牛確認は4例目。
 カナダ産牛肉は、2003年5月のBSE発生で日本への輸入が停止されたが、日本政府は昨年12月、米国産とともに輸入を再開したばかり。今月20日に米国産牛肉に特定危険部位の混入が見つかり同国産牛肉が再度輸入停止された後も、日本のカナダ産の輸入は続いてる。
 感染していたのは6歳の牛。人間の食用や動物の飼料用として流通はしていない。
 2003年12月に米国で初めて確認されたBSE感染牛も、カナダから輸入されていた。
 米政府は03年5月、BSE発生を理由にカナダ産の牛の輸入を停止したが、昨年7月、生後30カ月以下の牛に限って輸入を再開した。
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http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060124&j=0044&k=200601249484

より詳しい情報は「農業情報研究所」のサイト(私の情報源の一つです)にあります。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/06012401.htm

これを読みますと、BSEの原因はやはりMBM(肉骨粉)のようです。カナダでは「フィードバン」といって、牛の飼料に哺乳動物蛋白質を利用することを禁止する措置をとっているはずなのですが、「フィードバン」が完全に守られていない可能性があります。

カナダ産牛肉は安全なのでしょうか? 日本政府はどのような検証を行なっているのでしょうか?

肉骨粉に関してカナダよりはるかに規制のゆるいアメリカでは、これまで発見されたBSE牛はわずか2~3頭です。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview050816.html

これをもってアメリカは自国の牛肉は安全だ、と主張しておりますが、アメリカはまともなBSE検査をしていないから、見つからないだけなのです。

「田中宇の国際ニュース解説」2004年7月6日より――

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 1980年代にイギリスで狂牛病が大発生して以来、米農務省は「アメリカでは狂牛病は発生していない」と主張し続けてきた。だが、農務省は牛肉業界の圧力を受け、米国の狂牛病検査はごく限られた量しか行われてこなかった。狂牛病の確率が比較的高いと考えられる自力で歩けなくなった牛(へたり牛、ダウナー牛)の数の約1割にあたる年間2万頭前後に対してのみ検査が行われていた。全米で年間にされる3500万頭の牛のうち0・05%しか検査していなかったことになる。

 毎年1000万頭が検査されるEUや、毎年120万頭の全頭が検査される日本に比べ、アメリカは検査に消極的だった。特に、大手の屠場の中には全く検査をしていないところもあり、昨年末に狂牛病の牛が確認された西海岸のワシントン州では、州内700カ所の屠場のうち、検査をしているのは100カ所以下しかなかった。米当局がアメリカで狂牛病が発生していないと主張していたのは、検査対象が非常に少なかったことに起因していた可能性がある。
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http://tanakanews.com/e0706BSE.htm

まともに歩けなくなった牛を「へたり牛」「ダウナー牛」と呼びます。BSEを発症すると、牛は歩けなくなります。つまり、「へたり牛」になります。「へたり牛」すべてがBSEとは限りませんが、BSEの可能性はゼロではありません。アメリカでは「へたり牛」が毎年20万頭くらい出るのですが、その1割の2万頭しか検査されていないのです(それも、どの程度の検査なのか疑問があります)。

足を骨折した牛も歩けないから「へたり牛」ですが、外傷は見ればすぐにわかります。「へたり牛」の大部分は何らかの病気だと思われますが、その中にはBSE牛も含まれているに違いありません。

アメリカでBSE牛が発見される2003年まで、「へたり牛」の肉は食用に使われていました。畜産業者にしてみれば、せっかく子牛を購入し、飼料を与えて育てた牛を、へたったからといって廃棄処分すれば大損になりますから、病気の牛の肉でも売りさばいてお金にしたいわけです。アメリカでは、病気の牛を、ひょっとするとBSEかもしれない牛を、脊柱などの特定危険部位も除去することなく食用に供していたわけです。

それが食用禁止になったのは、アメリカでBSEが見つかった2003年の12月30日です。

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 【ワシントン30日共同】米農務省のベネマン長官は30日、米国初の牛海綿状脳症(BSE)感染牛が確認された問題で(1)「へたり牛」(ダウナーカウ)の食用全面禁止(2)BSE検査の結果が判明する前の販売禁止(3)牛の生産履歴などを迅速に把握するための家畜識別番号(ID)制度の導入-などの追加的な安全対策を発表した。
 また米国のBSE対策について客観的な評価を下してもらうため、専門家で構成する国際的な委員会を設置する方針も明らかにした。
 BSE感染牛の発見からわずか1週間後に現時点で実行可能な対応策を素早く示すことで、牛肉への国民の不安や、国際的な「米国牛離れ」を沈静化する狙いがある。ただ今回の対策で最大輸入国の日本などが輸入禁止の解除に応じるかどうかは不透明だ。
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http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=NGK&PG=STORY&NGID=main&NWID=2003123101000316

日本も2003年まで、米国産へたり牛肉を輸入していたことになります。
http://blog.livedoor.jp/manasan/archives/17603520.html

もし日本が米国産牛肉の輸入を再開するつもりならば、少なくともアメリカの業者が「へたり牛」をきちんと排除しているかどうかを確認しなければなりません。アメリカが「きちんとやっています」と言っても、今回の脊柱混入事件でもわかるように、言葉だけでは信用できません。輸入再開に際して消費者から強い反対の声が出されたのに、日本政府はアメリカの言うことを、たいした検証もしないでよくもそのまま信じましたね。

とくに危険なのは、牛を・解体したあとの「くず肉」の回収です。

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 昔懐かしい手回しの洗濯物搾り機を想像してほしい。これと同じ原理に強力な水圧をプラスして、大掛かりな装置にする。そこに、濡れた洗濯物ではなくされた牛を入れる。

 それが先進的食肉回収システム(AMR)の基本的な仕組みだ。この技術を使い、圧力をかけて、処理後の骨に付着している肉をはがし取る。こうした処理は、かつて自動ナイフを操る作業員によって行なわれ、AMRに比べると効率が悪く危険度は高かった。

 AMR(図)を使えば、肉や骨に手で直接触れるのは機械に入れるときだけで済む。この機械は、肉の付着した骨を約15センチほどの長さに切断し、それを水圧室に入れる。水圧室では肉付きの骨が2本の回転シリンダーに挟まれて押しつぶされる。1本のシリンダーが篩(ふるい)のように肉だけを濾し取り、骨と結合組織を反対側に残す。そこで分離された肉は最後にもう一度、より目の細かい篩に通され、残留していた骨片や軟骨が取り除かれる。

 AMRで回収された肉は通常、ソーセージやタコス用トッピングなど加工肉製品に混ぜられる。
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http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20040121303.html

もちろん、脊柱など特定危険部位も「先進的食肉回収システム」にかけられます。もしその牛がBSEだった場合、プリオンが「AMRで回収された肉」に入り込む可能性があります。牛肉だけではなく、「ソーセージやタコス用トッピングなど加工肉製品」、ハンバーグなどもきわめて危険だと言うことがわかります。

特定危険部位の除去はもちろんのこと徹底しなければなりませんが、こうした「先進的食肉回収システム」も中止しなければなりません。そして、根本的には、肉骨粉や代用乳(後述)といったBSEの原因となる飼育方法を改めなければなりません。


ライブドアとオウム真理教

2006年01月24日 | Weblog
ライブドアに強制捜査が入って以来、ホリエモンを英雄として囃し立てていたマスコミが、手のひらを返したように、その違法な手口を報道し始めました。変わり身の早さには感心します。

私は株のことはわかりませんが、その道のプロは、ホリエモンの手口の胡散臭さをとっくに見破っていました。昨年のフジ・サンケイグループの買収のとき、「ホリエモンの錬金術」という、いまアクセスが多いブログで、山根治さんという方が次のように指摘していました。

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 今回のホリエモンの一連の買収劇を見ていますと、まさに「から騒ぎ」以外の何ものでもありません。さしずめ、「マネー・ゲームのから騒ぎ」(Much ado about empty money)といったところでしょうか。
 それにしても、各テレビ局には有識者と称していろいろな人が出てきては、いかにももっともらしいことを喋っていますね。
 テレビに顔を出してはコメントしている大学教授、証券マン、証券アナリスト等、この人達は株とか企業の実態を本当にご存知なのでしょうか。疑問ですね。
 マスコミのこのから騒ぎについてのとらえ方もピントが外れているようです。
 たとえば、旧体制と新興勢力とのせめぎ合いととらえている向きもありますが、なに、日本の超優良企業グループ(フジ・サンケイグループ)に対して、ホリエモン率いるインチキ虚業集団(ライブドアとその関連企業)が、ハゲタカ・ファンド(リーマンブラザーズ)の手先となって、仁義なきケンカを仕掛け、一般投資家とフジ・サンケイグループを食い物にしようとしているだけのことです。
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http://blog.goo.ne.jp/yamane_osamu/

ホリエモンのような詐欺師を時代の寵児としてもてはやした「有識者」=「大学教授、証券マン、証券アナリスト」は、詐欺師と同じくらい責任重大だと思います。なにせ、今の子供たちに「理想の人物は?」と質問すると、「ホリエモン」という答えが返ってくるそうです。「ホリエモン」というあだ名自体が、「ドラえもん」との類推で作られているネーミングで、いかにも無害で子供たちの味方のような印象を与えます。しかし、「稼ぐが勝ち」「心も金で買える」と公言する人物を憧れるような人間が充満したら、世も末です。そういう子供たちも、今回のホリエモン逮捕で目を覚ましてくれるといいのですが。

こんな詐欺師を「改革」の旗手として持ち上げた小泉首相、竹中平蔵大臣、武部幹事長、そして経団連に受け入れた奥田碩トヨタ社長・経団連会長の目も節穴だったわけですが、「稼ぐが勝ち」という価値観を共有していたので、怪しいともなんとも思わなかったのでしょう。

このライブドア事件の報道を見ながら、どういうわけか1995年のオウム真理教事件を連想しました。

ライブドア事件の主役がみな30代の青年であるのと似ていますが、オウム真理教事件も若者たちの犯罪でした。最初は奇妙な団体だと思われていましたが、その奇妙さがマスコミに受け、マスコミに露出して、「ああ言えば上祐」氏らが詭弁を振り回していました。ところが、何人かの著名な宗教学者が彼らを持ち上げ、英雄扱いさえしました。オウム真理教の洗脳に手を貸していたわけです。

宗教犯罪と経済犯罪と領分は違いますが、よく似た構造です。

昨年の総選挙広島6区では、8万4千人がホリエモンに騙されました。マスコミが洗脳の道具になることがよくわかります。


狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (9)

2006年01月23日 | 食の安全
(9)「20ヶ月以下」と全頭検査

2005年12月、日本は、特定危険部位の除去を前提に、アメリカから20ヶ月以下の牛の肉を輸入再開することにしました。

日本は全頭検査を行なっていますが、日本で今までプリオンが発見された中で最も若い牛は月齢21ヶ月だそうです。20ヶ月以下の牛の検査をしても、プリオンの蓄積量が少なく、検出は困難だと考えられています。

※ただし、それはこれまでのことであって、検査方法が改善されれば、これからはもっと若い牛からもプリオンが見つかるかもしれません。

アメリカのBSE検査態勢が杜撰なことは、これまでの記述でもおわかりのことと思いますが、それでは、全頭検査という日本のやり方が正しいのかというと、これもかなり奇妙なものなのです。

日本でBSEの発生が見つかったとき、日本では全頭検査という方法が導入されました。年齢に関係なく、すべての牛でプリオンの検査をするのです。

しかし、20ヶ月以下の牛は、たとえBSEにかかっていても、プリオンの検出ができません。したがって、20ヶ月以下の牛に対しては、プリオン検査は無意味なのです。にもかかわらず、日本政府が全頭検査にこだわったのは、日本産牛肉に対する消費者の不安が高まり、売れ行きが落ち込んだからです。

それが起こったのは、現在、自民党の幹事長をしている武部勤氏が農水大臣だったころですが、武部大臣は、日本産牛肉は安全だとして、テレビで日本産牛肉を食べるパフォーマンスをしました。武部氏は北海道の畜産業者を支持基盤としています。今回、武部氏はアメリカに対して強硬発言をしていますが、それは、日本産牛肉を米国産牛肉と差別化し、日本産牛肉の売り上げを落とさないための言動であると思います。

日本産牛肉への不安を取り除くためには、政府は本来、日本におけるBSEの感染ルートを徹底的に解明し、その予防措置を講ずるべきでしたが、それをせずに、全頭検査という方法を導入しました。そして、全頭検査によってBSE牛をすべて発見できるという、偽りの安心感を日本の消費者に与えたのです。

それがなぜ偽りの安心感かというと、何度も言うように、20ヶ月以下の牛では、たとえその牛が潜在的にBSEにかかっていても、プリオンは検出できず、20ヶ月以下の牛には検査は無意味だからです。日本では不必要な検査のために、膨大な費用が無駄に使われています(全頭検査の費用は100億円とのことです)。しかし、誰もそれをやめようと言い出しません。その理由は、

・政府は国民に対して、万全な対策をしているという言い訳ができる。
・食肉業者は日本産牛肉の販売を増やすことができる。
・検査業者は検査で儲けることができる。
・消費者は何となく安心できる。

検査が意味をもつのは、あくまでも20ヶ月以上の牛だけなのです。

全頭検査という過剰検査によって、消費者は無駄な検査費用を負担させられています。これを「愚民政策」と批判する人がいます。
http://square.umin.ac.jp/massie-tmd/bse.html

全頭検査によってBSEが防御できると信じ込めば、日本の消費者が米国産牛肉に対しても同じ処置を求めるのは当然です。しかし、日本よりはるかに多くの牛を飼育し、多くの牛肉を消費しているアメリカでは、全頭検査をすれば超膨大な費用がかかります。その上、BSE牛が続々と発見されて、アメリカ政府と食肉業界の嘘がばれ、パニックが起こります。日本向け牛肉に対してだけ全頭検査をして、アメリカ国内向けには全頭検査しないというのであれば、今度はアメリカの消費者が納得しません。アメリカも全頭検査をせよ、という要求は、米国産牛肉輸入の妨害するための貿易障壁だとアメリカは受け取りました。(そういう要素もなかったわけではないでしょう)

そこでアメリカは、全頭検査という日本の措置は「科学的でない」という反論を加えてきました。実際、20ヶ月以下の牛に対してはプリオンは検出できないのですから、全頭検査はたしかに科学的にはおかしい部分があるのです。アメリカの批判はそれ自体としては正しく、日本政府もそれに反論できませんでした。日本政府の「愚民政策」のために、アメリカにツッコミを許す余地が生まれ、20ヶ月以下の牛を無検査で輸入再開することになったのです。

しかし、アメリカが狙っているのは、20ヶ月以下の牛ではなく、30ヶ月の牛の無検査輸出です。20ヶ月でするよりも、30ヶ月でしたほうが利益が大きいからです。

30ヶ月の牛になると、プリオン検査でBSEが発見できますが、検査をすると費用がかさみます。もし検査の結果、やたらにBSE牛が発見されたら、米国産牛肉への信頼が地に落ちますから、アメリカとしてはそれもやりたくありません。30ヶ月牛を無検査で輸出できれば、利益を最大化できますし、米国産牛肉への不信も避けることができます。

アメリカでは、牛を1頭ごとに管理していませんので、その牛の年齢は見た目で判断することになっています。20ヶ月の牛肉と30ヶ月の牛肉を区別するするのは、客観的基準があるわけではなく、アメリカ側の自主申告しかありません。そうすると当然、日本向けに20ヶ月以上の牛も紛れ込んでくることは避けられません。

日本政府がアメリカに対して行なうべきだったのは、全頭検査の要求ではなく、まさに「早期輸入再開を求める会」が掲げていた、

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I.人がBSEに感染しないために、SRM(特定危険部位)を人にたべさせない=牛肉として流通する前にSRMを除去する
II.牛がBSEにならないために、牛の肉骨粉を牛にたべさせない
III.IIの対策の効果測定のための、病牛や死亡牛のBSE検査
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という処置をアメリカが本当に行なっているかどうかの検証であったはずです。しかし、実際に検証してみれば、アメリカでは、

Iがまともに行なわれていないことは、今回の事件ではっきりしました。
IIも抜け穴だらけであることは、すでに見ました。
IIIもきちんと行なわれていないのです。

日本政府はまともにアメリカの状況を検証せず、アメリカの言い分をそのまま受け入れ、上記3条件が満たされているとして、輸入再開を認めました。これは日本政府の失態です。今回の事件は、アメリカのいい加減さと日本政府の場当たり的な対応を二つながらに暴露しました。

小泉首相が1月20日の第164回国会の施政方針演説で、

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 昨年12月、科学的知見を踏まえ、アメリカ産牛肉の輸入を再開しました。消費者の視点に立って、食の安全と安心を確保してまいります。
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http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2006/01/20sisei.html

と述べた数時間後にアメリカの違犯が判明するというのは、あまりにもできすぎています。

※最近、ヒューザーの小嶋氏の清和会(森・小泉派)との癒着が判明したり、「改革」の目玉、亀井静香氏への「刺客」として擁立したホリエモンが捜査を受けたり、シャロン首相との会談がキャンセルされたり、明らかに小泉政権への逆風が吹き始めています。昨年9月12日のブログにも書きましたが、「陽きわまれば陰となる」で、総選挙で大勝した小泉氏の(悪?)運も終わりつつあるようです。

もう一度繰り返しますが、プリオンが検出されないということと、その牛がBSEでないということとは別のことです。20ヶ月以下のBSE牛は、プリオンが微量なために検出できないだけです。20ヶ月以下の牛だから安全ということにはなりません。

現在、徹底しなければならないのは、全頭検査ではなく、20ヶ月以下の牛も含めて、特定危険部位の完全な除去なのです。今回の事件は、アメリカがそれを行なっていないということを証明したわけで、きわめて深刻な事態です。


狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (8)

2006年01月22日 | 食の安全
(8)アメリカの反応

今回の脊柱混入事件では、アメリカはめずらしく早々と謝罪しました。

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 BSE(牛海綿状脳症)対策で除去が義務付けられている牛の脊柱(せきちゅう)(背骨)が米国産牛肉から見つかった問題で、マイク・ジョハンズ米農務長官は20日、緊急記者会見し、混入は米国の検査官が、日本向けの輸出基準をよく知らなかったのが原因と認め、謝罪した。

 米政府は日本の禁輸(輸入停止)の解除に向け、再発防止策を急ぐ方針だが、検査官が基準を知らないお粗末さに対する批判が高まりそうだ。

 ジョハンズ農務長官は、米業者が対日輸出の禁止部位を出荷したことについて「農務省の担当検査官が違反に気付くべきだった」と検査の不備を認めた。

 問題の牛の月齢は4か月半。日本は月齢20か月以下の牛について、脊柱などの特定危険部位を除いた上で輸入を認めていたが、「月齢30か月未満は安全」とする米国の基準では危険部位を取り除く必要はない。業者の従業員と検査官は、日米の基準の違いを十分認識していなかったと見られる。

 同長官は、全米の食肉処理施設に配置された農務省検査官の再研修や、すべての輸出向け牛肉処理施設の追加検査などを行うと発表した。できる限り早期に日本政府に、調査結果や対策の実施状況を報告する方針だ。今回違反が見つかった業者の輸出許可は、すでに取り消したとしている。

 昨年まで強硬に日本に輸入再開を迫っていた米側が全面的にミスを認め、再発防止に乗り出したのは、日本の消費者を刺激せず、再度の輸入停止を短期間にとどめたいためと見られる。

 全米最大の食肉業界団体、米国食肉協会(AMI)のパトリック・ボイル会長は20日の記者会見で「問題の牛肉は米国内では食用が認められている」と強調し、「1施設による1回だけの出荷だけで、日本政府が米国産牛肉を全面的に輸入禁止とするのは支持できない」と述べている。

 米農務省は、長官の会見に先立って出した声明で、輸出向け食肉施設に対する抜き打ち検査などの対応をとるとしている。しかし、米側の再発防止策が十分かどうかの見極めは難しい。日本の禁輸が長期化すれば、日米の摩擦が再燃する可能性もある。(ワシントン=広瀬英治)
(読売新聞) - 1月21日14時22分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060121-00000104-yom-bus_all

ところが、上の記事にもあるように、「1施設による1回だけの出荷だけで、日本政府が米国産牛肉を全面的に輸入禁止とするのは支持できない」と米国食肉協会(AMI)の会長はいたくご不満です。

しかし、問題は「1施設による1回だけの出荷」ではなく、「〔アメリカの〕食肉処理場の検査体制はずさんである」とアメリカ農務省の現役食肉検査官までが認める、アメリカ食肉業界の構造にあるのです。

検査が厳しいはずの日本向け牛肉にさえこういうミスが起こるということは、アメリカ国内に出回っている牛肉には、特定危険部位が適切に取り除かれていない肉がかなり含まれていることが推測されます。それにしては、アメリカにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病患者の数が少ないのですが、それは情報が隠蔽されている可能性が高いのです。これについてはあとで論じます。

今回の日本側の反応について、アメリカの政治家はこう発言しています。

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 【ワシントン20日時事】グラスリー米上院財政委員長は20日、日本が輸入した米国産牛肉に特定危険部位が混入していた問題で、米農務省が再発防止策を打ち出していると指摘、「日本人が今回の事態に過剰反応しないよう促したい」と述べ、日本の消費者に冷静な対応を求めた。
 同委員長は、農務省が新たな検査体制を約束しており、「日本が市場を閉ざさないよう望んでいる」と語った。また、「米国産牛肉は安全だ」と強調し、米国は日本製品の輸入で良識ある態度を取っており、日本側も同様に対応すべきだと主張した。 
(時事通信) - 1月21日7時1分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060121-00000017-jij-int

自分のミスを棚に上げて、問題を「日本人の過剰反応」にするのは、相変わらず救いがたい思い上がりです。

「米国は日本製品の輸入で良識ある態度を取って」いるとおっしゃっていますが、アメリカは日本におけるBSEの発生を受けて、2001年9月から神戸牛などの日本産牛肉の輸入を禁止しました。その禁輸解除を決めたのは、2005年12月12日、つまり日本が米国産牛肉の輸入再開を決めた直後です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051212-00000319-kyodo-bus_all

つまりアメリカは、日本における牛の肉骨粉の使用禁止、全頭検査など、とっくの昔から日本が行なっていたBSE対策を評価したわけではなく、日本が米国産牛肉の輸入再開を決めたので、アメリカも日本産牛肉の輸入再開を決めた、というだけのことです。今度の事件で、アメリカは日本産牛肉の輸入を再禁止するのでしょうか。

アメリカへの日本産牛肉の輸出などは微々たる額ですから、再禁止しようがしまいが、日本経済に大した影響はありませんが、牛肉の禁輸によって、いずれ自動車や電子機器などのその他の工業製品の輸入も制限するぞ、という脅しをかけるのが、アメリカの言う「良識ある態度」なのです。

狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (7)

2006年01月20日 | 食の安全
(7)特定危険部位

今日1月20日のニュースです。

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 政府は20日、輸入された米国産牛肉に、BSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい特定危険部位の脊柱(せきちゅう)が混入していたため、12月に再開したばかりの輸入を、再び全面禁止する方針を決めた。

 安全が確認されるまでの措置。食品の安全性をめぐる議論の末に、一度は決着した米国産牛肉の輸入禁止問題は、振り出しに戻る。米国側のずさんな対応と同時に、米国に対する配慮から輸入再開を急いだ日本政府への批判も強まると見られる。

 問題の牛肉は、20日に成田空港に到着したもので、空港の動物検疫所で調べたところ、米国の業者から届いた41箱(390キロ・グラム)のうち、3箱(55キロ・グラム)に脊柱が混入しているのが見つかった。脊柱は、脳などとともにBSEを引き起こす病原体が蓄積されやすい部位とされ、除去することが日本の輸入条件となっている。

 小泉首相は20日夜、記者団に対し、「中川農相から米国産牛の日本への輸出は全部ストップすると電話で報告があった。米国にしっかりとした対応を求めるというので『それはいいことだ』と言った」と述べ、輸入の再禁止を了承したことを明らかにした。首相は中川農相に「厚生労働相とよく協議して米国にしかるべき対応を求め、適切な措置を日本として求めるように」と指示した。

 中川農相は同日夕に農水省で記者会見して、脊柱が混入した米国産牛肉が発見されたと発表し、「輸入プロセスの重大な違反となり、極めて遺憾だ。きちっと調査をして、米国政府に厳重に申し入れをしたい」と強い不快感を表明した。

 米国産牛肉は、米国内でのBSE発生を受けて2003年12月に日本が輸入を停止。内閣府・食品安全委員会のプリオン専門調査会(座長=吉川泰弘・東大大学院教授)で、輸入再開のリスクを検証し、脳や脊髄(せきずい)などの特定危険部位の除去や、生後20か月以下の牛に限ることを条件に、2年ぶりの再開を決定。12月16日に解禁から初めての米国産牛肉が成田空港に到着した。

 米国内での特定危険部位の除去作業をめぐっては、昨年8月、米国政府が自ら1000件を超える手続き違反を公表していたこともあり、以前からずさんさが指摘されていた。

 食品安全委は、昨年12月8日に農林水産、厚生労働両省に出した答申の中でも、輸入再開の条件が守られなかった場合は「(再開後に)輸入を停止することも必要」と指摘している。
(読売新聞) - 1月20日21時38分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060120-00000013-yom-bus_all

日本政府の、米国産牛肉輸入再開の決定が誤りだということが、露呈しました。これによって、米国産牛肉の輸入がしばらく延期されることは、たいへんよいことです。

BSEが蔓延している今日、牛肉を食べる場合、プリオンが含まれている可能性がある特定危険部位(SRM)を除去することが大前提です。ところが、アメリカの食肉処理場ではSRMが適切に取り除かれていないということを、今日のニュースは証明しました。

すでに2005年4月に以下のように報道されていたのです。

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 BSE問題に関連して、アメリカ農務省の現役食肉検査官がNNNのインタビューに対し、「食肉処理場の検査体制はずさんである」と具体的に証言をした。現役の検査官がテレビカメラの前で、このような証言をしたのは初めて。
 食肉処理現場のずさんな実態を証言したのは、牛の月齢判別や危険部位の除去などが適正に行われているかを監視する農務省・食品安全検査局の現役の食肉検査官。検査官は「米国内で本来、食肉として処理されてはいけない、月齢30か月以上の牛の危険部位が処理される場面をこの2日間だけでも2度目撃した」と述べた。また、処理場の従業員の多くが、まともな訓練も受けないまま、月齢判別などの現場を任されているため、間違いや見過ごしが日常的に起きていると述べている。さらに、間違いや見過ごしを指摘した場合にも、処理場や農務省の幹部にはとりあってもらえず、現場の検査官の権限がほとんど生かされていないと訴えている。その上で検査官は「処理業者が、農務省に指図をするという構図にはもううんざりだ。結局、業者は検査官をなるべく排除しようとしているんだから」と述べた。
 今回の取材に応じた検査官以外にも、農務省の基準が守られていないと主張する現場の担当者は全米で声を上げ始めている。
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http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/e/89c21679c9a1a74908daa94270800649

こういうことが以前から指摘されていながら、米国産牛肉の輸入再開を決めた政府関係者、食品安全委員会、また輸入再開を求めた「早期輸入再開を求める会」の責任は重大です。彼らは日本国民の健康を何と考えているのでしょうか。国民の生命よりもブッシュ政権の意向や、外食産業の利益のほうが大事なのでしょう。

1月17日のブログにも書きましたが、最近は嘘、ごまかし、不正が暴露されるがどんどん早くなっています。ライブドア事件もそうですね。業の世界の消滅が加速しつつあります。

狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (6)

2006年01月19日 | 食の安全
(6)吉野家の牛丼

日本にはいくつかの牛丼チェーンがありますが、その中でも吉野家は米国産牛肉にこだわっています。やや硬いオーストラリア産を使わず、あくまでも米国産牛肉の柔らかい肉質を求めているのです。このような肉はどのように作られているのでしょうか?

「衆議院農林水産委員会での2005/2/24の質疑」で、民主党の山田正彦議員が以下のように指摘しています。

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 いいですか、大臣。私がきのう見に行ってきたら、ショートプレートというのがメキシコから入っていました、かなりの量です。そのショートプレートというのは、通称吉野家カットといって、牛丼になる部分です、これは。そこに何と書かれておったかというと、糖みつ飼育の若姫牛と書かれておった。糖みつ飼育の若姫牛。
 糖みつ飼育というのは、大臣わからないかもしれない。これは、鶏ふんを牛に食べさせる。アメリカで行われているんです。そのときに、鶏ふんを牛がなかなか食べないから、もう臭いし、おいしくないし。どうして食べさせるかというと、糖みつをかけて食べさせているんです。これはアメリカで行われています。
 そして、私は、この牛肉は、ショートプレート、いわゆる牛丼に使う分は、アメリカの牛肉がメキシコに来て、メキシコから入ってきたんじゃないかと疑った。
 メキシコから入ってきたショートプレートというのは、僕は脂肪の厚さから肉の質まで全部この目で見させてもらった。これはどうもメキシコの云々というか、やせた牛の云々じゃあり得ないと思って、穀物を食べさせた、私もかつて牛を飼って肉屋もやりましたから、牛丼屋もやりましたから、わかっているつもりですが、これはおかしいと。そこで、獣医である検疫官に聞いてみた。そうしたら、検疫官が答えたのは、いわゆるアメリカからのショートプレートとメキシコからのショートプレートは、私の見た目には違いはありませんと。
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http://www.asyura2.com/0403/gm10/msg/559.html

※山田正彦氏はご自分でも牧場経営した経験があります。昨年、『アメリカに潰される! 日本の食』(宝島社)という本を出して、その中でBSE問題を詳しくレポートしています。

吉野家の肉は、まさに糖蜜飼育された牛なのです。糖蜜飼育の際には、ニワトリのフンに混じった肉骨粉も食べていますから、そういう牛はBSEに感染している可能性があります。

現在は、プリオンはいわゆる特定危険部位(SRM)のみに含まれていると言われていますから、危険部位を取り除けば、たとえBSEの牛の肉であっても、即、危険ということはないかもしれません。ところが、これまでは危険部位ではないと言われていた末梢神経や副腎からも、微量ながらプリオンが検出されています。
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/bse/news/1102-531.html

今まで大丈夫だ、と言われていた部分が、急に危険だ、と言われることになるかもしれませんから、用心するにこしたことはありません。

過去において吉野家の牛丼を食べてしまった人は、どうすればよいのでしょう? 一生懸命、世界平和の祈りを祈り、印を組み、肉体への感謝、食べ物への感謝、動物への感謝をして下さい。

狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (5)

2006年01月18日 | 食の安全
(5)ニワトリのエサと糖蜜飼育

肉骨粉を豚や鶏のエサに使用するかぎり、飼料の製造・流通過程で肉骨粉の混入が避けられないことは明らかですが(代用乳の問題はあとで触れます)、とくに問題なのはニワトリのエサの場合です。というのは、製造ラインだけではなく、エサの使用場面でも汚染が生じる可能性があるからです。

肉骨粉を含んだエサをニワトリに与えても、牛のタンパク質自体は、雑食動物であるニワトリの体内で、ニワトリのタンパク質に変換されるはずですから問題はないでしょう(プリオンはどうなるのでしょう?)。しかし、アメリカでは、「容器からこぼれた鶏の飼料は、鶏の廃物と一緒にかき集められ、牛の飼料として転用されている」(暗いニュースリンク)ので、結局のところ、牛の肉骨粉がニワトリの飼料を経由して、ふたたび牛に投与されることになります。牛が牛の肉骨粉を食べさせられるわけですから、牛がBSEを発症する可能性があります。

ニワトリのエサの中の肉骨粉にプリオンが含まれていた場合、それは(a)ニワトリの体内で安全なタンパク質に変化するのでしょうか? それとも(b)プリオンのままにとどまり、体内に蓄積されるのでしょうか? (c)卵として排泄されるのでしょうか? (d)フンとして排泄されるのでしょうか?

(b)や(c)の場合、プリオンが鶏肉や卵として、人間の口に入る可能性があります。(ただし、プリオンは脳などの特定部位に蓄積されるので、その可能性はきわめて小さいと思われます)

しかし、なぜ、「容器からこぼれた鶏の飼料は、鶏の廃物と一緒にかき集められ、牛の飼料として転用されている」のでしょうか?

「アメリカの蓄牛は鶏の廃物、牛の血液、外食産業の残飯を摂取」させられている、と「暗いニュースリンク」は書いていますが、これについてもっと詳しく説明します。

「鶏の廃物」というのは、具体的にはニワトリのフンです。(3)のコメント欄で「杉」さんも書いていますが、ニワトリのフンに糖蜜をかけて、これを牛に食べさせるのです。その際、肉骨粉を含んだニワトリのエサがこぼれてフンに混入します。アメリカでは、それを全部集めて牛の飼料として利用しているのです。なんでこんな変なものを牛に食べさせるかというと、すべて経済効率の考え方からです。

牛は草ばかり食べていれば肥育が遅くなります。そこで肥育を早めるために牛に動物タンパク質を食べさせます。牛の・解体で、食用にならずに余った部分を肉骨粉として利用すれば、処理費用もはぶけて一石二鳥というわけで、肉骨粉の使用が始まったのです。(肉骨粉を最初に利用したのはイギリスです)

ニワトリのフンもきっと、牛の成長を早めるために投与されているのでしょう。それに安価ですし、フンの処理費用もはぶけます。すべて経済効率の考え方です。

しかし、(d)の場合、プリオンを含んだ鶏糞が牛のエサとなります。鶏糞からBSEが広まる危険性はないのでしょうか?

「牛の血液」についてはあとで述べますが、「外食産業の残飯」には当然、肉が含まれますから、そういうものをエサとして食べた牛はBSEを発症する可能性があります。

阪神淡路大震災、耐震偽装、証人喚問

2006年01月17日 | Weblog
今日は、1995年1月17日に阪神淡路大震災が起こって、11年目になります。

あの日の朝はどういうわけか普段よりも早く目がさめ、5時から世界平和の祈りの統一をしておりました。私は首都圏に住んでおりますから、地震が起こったことには気がつきませんでしたが、朝のニュースで地震のことを知りました。

一瞬にして6000名以上もの方がなくなりました。

地震発生から2ヶ月くらいたってから、神戸の町を訪問する機会がありました。お祈りしながら被災地を1時間ほど歩きましたが、一軒の家がまったく無傷なのに、隣の家が崩壊している、という状況に驚きました。

場所によって地震の強度が異なっていたのでしょうし、各建物ごとの耐震強度も違っていたのでしょう。

11年後の1月17日に、例の耐震強度偽装問題の証人喚問が行なわれる、というのも、何かの示唆でしょう。

今朝の毎日新聞より――

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 民間分譲マンションだけで172棟が全半壊した阪神大震災。昨年明らかになった耐震偽造事件は「震災の教訓はどこにいったのか」と被災者に大きな衝撃を与えた。倒壊した欠陥マンションで身内を亡くした遺族とやっと再建にこぎつけた被災マンションの住民は「建設業界関係者だけでなく国にも責任がある」と口をそろえた。
(毎日新聞) - 1月17日3時30分更新
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060117-00000019-mai-soci

172棟の中には、おそらく偽装設計、手抜き工事が相当数あったものと思われます。その犯罪を徹底的に暴き、二度と同じことができないような建築確認システムをその時に作っておくべきでした。

しかし、その後の流れは、建築確認に時間がかかっては再建が遅くなる、という理由で、建築確認を民営化するという形で、むしろそれを甘くする方向に進んでしまいました。人間生活のことを衣食住といいますが、いま連載中の「食」はもとより、「住」に関しても、生命の安全よりもお金のほうが大事、という風潮の中で、様々なごまかしが入り込む余地が生まれてしまいました。

人間一人一人が良心に基づいて行動すれば、法律などは必要ありませんが、残念ながら、現在の社会は、「性悪説」で対処しなければならない人類が大多数を占めているのです。

昨年から今年にかけて、今まで隠蔽されていた様々な嘘、ごまかし、腐敗、利権構造が、表面に浮かび上がってきました。耐震偽装事件もそうですが、狂牛病問題、イラクの大量破壊兵器に関するブッシュ政権の嘘、北朝鮮の拉致事件、韓国のES細胞偽造問題等々。こういう闇の部分が光に照らし出され、消えていってはじめて、平和で明るい日本と世界が生まれるのでしょう。(1月17日、朝)


狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (4)

2006年01月16日 | 食の安全
(4)毎日新聞の記事

以下の2001年12月の毎日新聞の記事をお読み下さい。

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北海道の狂牛病:
感染牛の代用乳、95年から豚の血しょう添加

 狂牛病(牛海綿状脳症)感染が3頭確認された問題で、北海道産の感染牛2頭に与えられていた群馬県高崎市の工場製の代用乳は、95年8月の成分変更で、豚の血しょうたんぱくが添加されるようになったことが4日、分かった。この代用乳と、餌の製造ラインでの肉骨粉混入が、これまでに感染ルートの可能性として浮上しているが、いずれも裏付けはない。代用乳なのか餌なのか、他のルートがありうるのか――。謎は深いままだ。

 豚の血しょうたんぱくは、農水省が今年10月、製造や販売を禁止した。同省は、感染した3頭が生まれた96年春と、95年8月の成分変更とが近接していることに注目している。

 同工場などによると、豚の血しょうたんぱくは病気への免疫力などを高めるため、米国の会社から輸入し新たに加え始めた。これに伴い、代用乳の商品は「ミルフードAスペシャル」から「ミルフードAスーパー」に変更。「ミルフードAスーパー」は半年後の96年3、4月に生まれた両感染牛に生後2カ月まで与えられていたことが、同省の調べで判明している。「ミルフードAスーパー」には牛の油脂も成分として含まれていた。

 同省の独立行政法人・肥飼料検査所(さいたま市)は11月25日、12月2日の両日行った同工場の緊急立ち入り調査で、95、96年当時同工場で製造していた代用乳の成分の配合割合や製造記録などを回収した。

 群馬県宮城村で見つかった国内3頭目の感染牛には「ミルフードAスーパー」は与えられていなかったが、同工場で製造された、豚の血しょうたんぱく入りの別の代用乳を飲んでいたことが県の調べで分かっている。

 一方、3頭目の感染牛に与えられていた餌を作っていた同県大間々町の飼料製造工場で、肉骨粉を原料に使う豚・鶏用の飼料の製造ラインが牛の飼料用と一部重なっていたことも判明。同工場に製造委託している全国農業協同組合連合会(全農)は、製造過程で牛用の餌に肉骨粉が混入した可能性を認めている。

 北海道産の1、2頭目の感染牛に与えられていた配合飼料を製造した釧路市と訓子府(くんねっぷ)町の工場も、肉骨粉の混じる豚・鶏用ラインと共用だった。

 さらに牛用と豚・鶏用の飼料を宮城村の農家に運ぶ輸送車が、共用されていたことも分かった。豚・鶏用の飼料を運送した後は、トウモロコシなどの穀物で洗浄することになっていたが、全農は「肉骨粉が完全に除去されたとは言い切れない」としている。【三木陽介、清水憲司】

[毎日新聞12月4日] ( 2001-12-04-15:01 )
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http://www.asyura.com/sora/gm2/msg/288.html

これを読みますと、

(1)飼料工場では、牛用、豚用、鶏用の製造ラインが共通であり、輸送車も共通であり、製造と運搬の段階で、牛用飼料に肉骨粉の混入が避けられない。

(2)子牛に与えられる代用乳に豚の血が含まれている。

ということがわかります。

これは日本の状態ですが、アメリカでも同じだと思います。


狂牛病(BSE)と狂鹿病(CWD) (3)

2006年01月13日 | 食の安全
(3)製造工場での汚染

飼料工場では様々な材料を混ぜて飼料を作るわけですが、牛のエサ用の製造ライン、ブタのエサ用の製造ライン、トリのエサ用の製造ラインを別々に設置しているとは考えられません。そんなことをすると、設備費が膨大になってしまいます。同じラインを使いながら、その時々に配合する材料を変えているだけでしょう。

そうすると、たとえばニワトリのエサの製造に肉骨粉を使うと、製造ラインには当然、肉骨粉が付着します。それを完全に取り除けばよいのですが、それには膨大な手間がかかります。何せ動物のエサなのですから、そんなに清潔に掃除するとは考えられません。

そういうラインで、ニワトリのエサの次に牛用のエサを作ると、そこには当然、肉骨粉が混入します。この混入は、「突発的」どころか、恒常的に生じていると考えるほうが自然です。つまり、今でも牛の飼料には肉骨粉が微量ながら含まれていると考えられます。

それどころか、アメリカの検査態勢はきわめていい加減ですから、今でも牛の飼料に肉骨粉が闇で使用されている可能性も排除できません。

肉骨粉の原料は、「処理場に運ばれる前に死んだ動物たち、頭部や足、毛根骨や足根骨、毛、羽毛、乳腺」であることを思い出してください。「処理場に運ばれる前に死んだ動物たち」の中には、当然、病気で死んだ牛もいます。その中には、ひょっとするとBSEで死んだ牛もいるかもしれません。「頭部」も利用されますが、脳はプリオンがたまりやすい「特定危険部位」です。

肉骨粉を利用し続けるかぎり、プリオンが食物連鎖の中に入ってくる可能性があります。

肉骨粉を家畜用飼料として利用することを全面禁止にしなければ、牛の飼料には肉骨粉が混入し、それどころか、プリオンまで混入し、常に狂牛病のリスクが存在していることになります。

現にEUでは、肉骨粉が全面使用禁止になりました。ところが、アメリカと日本では、まだ牛以外の飼料への肉骨粉の使用が禁止されていません。

日本でもかつて、狂牛病で死んだ牛が、焼却されず、肉骨粉として利用されていたのです。
http://www.bunrishoin.co.jp/susume8.html

恐ろしいことです。アメリカの状況はかなり危険ですが、日本の状況も決して安心できるものではないのです。