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前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
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(一服ざる)

映画『教皇選挙(Conclave)』

2025-03-20 21:54:04 | 舞台・映画など
映画『教皇選挙(Conclave)』を観てきました。



監督:エドワード・ベルガー
脚本:ピーター・ストローハン
音楽:フォルカー・ベルテルマン
出演:レイフ・ファインズ
   スタンリー・トゥッチ
   ジョン・リスゴー
   イザベラ・ロッセリーニ
製作:アメリカ・イギリス

※大事な部分のネタバレはしないように書きます。

カトリックの最高指導者・ローマ教皇の死去もしくは辞任後に行われる新教皇を選ぶ選挙のことを
「コンクラーベ(Conclave)」と呼びます。


物語はコンクラーベを執り仕切る首席枢機卿・ローレンスの視点で進みます。
このローレンス枢機卿役のレイフ・ファインズの演技が本当に素晴らしかった!
映画の評価は賛否あるかもしれませんが、これについては異論はないと思います。

投票前にローレンス枢機卿は「確信」という罪について話をします。
「確信」だけで「疑念」を抱かなくなれば不可解なことはなくなり「信仰」も必要なくなる・・・

このスピーチは作中の枢機卿団に言っていると同時に
映画を観ている我々にもその意味を問うているように感じます。

権謀術策が渦巻くドロドロの選挙戦・・・というだけの単純な物語ではありませんでした。


投票権のある枢機卿団は新教皇が決まるまでの間、隔離された状態で選挙に臨みます。
しかし、投票に影響を及ぼさないよう外界からの情報を遮断することは
見方を変えると世間(世界)で起きていることから目を逸らしているようにもとれます。

実際、舞台はバチカン市国の中だけで、司祭と修道士以外の一般人は全く現れません。

投票会場となる「システィーナ礼拝堂」と宿泊施設である「聖マルタの家」という閉ざされた空間の中で
扉を閉める音や鍵がかかる音が殊更強調され、密室感、閉塞感が増していきます。


その閉塞感に文字通り"風穴"を開けたのは皮肉にもローマ市内で起こった自爆テロの爆風でした。

カトリックにおいて聖霊(の息吹)は、しばしば"風"として表現されます。
最後の投票の際に割れた窓から吹き込んできた風の描写は印象的でした。
それにはやはり、何らかの意図(意志)があったのだと思います。

そしてもう一つ、そこにいるのにまるで"空気"のように扱われているシスター達も"風穴"を開けた一因かもしれません。
最後のカットがそれを象徴しているように感じます。

イザベラ・ロッセリーニが演じるシスター・アグネスは「聖マルタの家」の運営責任者であり
シスター達のリーダー的存在ですが、彼女が放つ「神は目と耳を与えてくださった」
という台詞はとても重く響きます。


最も相応しい人物が選ばれるよう"疑念"に誠実に向き合うローレンス首席枢機卿は前教皇の最も近くにいた人物ですが
シスター・アグネスもまた、ローレンスと同様に最も近くにいた人であり誠実な選挙を望んでいたでしょう。

表でコンクラーベを執り仕切るローレンス枢機卿と陰(裏)で支えるシスター・アグネス。

聖霊の息吹に導かれた枢機卿達は(自分達の意図を超えて)"結果"として最も相応しい人物を選んだのだと思います。


~私の証人となる主キリストを呼びます~
~主は私の票が選出されるべき方に与えられることを審判なさる~


サスペンス、ミステリーの様に喧伝されていますが、見ごたえのある重厚な映画です。
感動というのとは少し違いますが映画館で観てよかったと思いました。


インノケンティウス(Innocentius)[ラテン語]
イノセント(Innocent)[英語]:無罪の 潔白な

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