前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

映画 『ゴジラ-1.0』

2023-12-31 16:11:49 | 舞台・映画など
ゴジラ生誕70周年記念作品『ゴジラ-1.0』を観てきました。
ゴジラならばやはり銀座近辺で・・・ということでTOHOシネマズ日比谷で。



監督/脚本:山崎貴
出演者:
神木隆之介
浜辺美波
山田裕貴
青木崇高
吉岡秀隆
安藤サクラ
佐々木蔵之介
上映時間:125分

日米共に絶賛の嵐ですが、噂に違わず大変面白かったです。

妻は巨大な乗り物(船や飛行機等)が好きで、戦艦名やその来歴などは私よりも詳しく
重巡洋艦「高雄」や駆逐艦「雪風」について(上映後に)熱く語ってくれました。
特に田中美央(たなかみおう)さんが演じた「雪風」の元艦長・堀田辰雄が
五代目艦長・寺内正道氏にそっくりだ興奮?していました。


「雪風」元艦長・堀田辰雄を演じる田中美央さん


気になった?ところといえば、主人公で元特攻隊員・敷島を演じた神木隆之介さんと
機雷除去用の特設掃海艇「新生丸」の見習い乗組員・水島四郎役の山田裕貴さんの関係です。
水島は若かったため戦争には行っていない設定ですが、神木さんが童顔なので
山田さんが年下に見えないんですよね。実際、山田さんの方が年上ですし。

あと、特設掃海艇「新生丸」艇長・秋津淸治役の佐々木蔵之介さんが、
まんま「佐々木蔵之介さん」だったこと。

まあ些細なことで、最後まで少しもダレることなく観られました。
近年の日本映画に顕著なウェットな人間ドラマやオーバーな演技は苦手なのですが
本作では全く気になりませんでした。途中二度ほど落涙。


2016年の「シン・ゴジラ」は、現代の日本で(ゴジラに象徴される)「核兵器による戦争」が起きたら?
という設定での"リアル"なシミュレーションだったと思います。

一方本作は、すでに多くの日本人にとって"リアルではない"戦後が舞台です。
第二次世界大戦は(当たり前ですが)記録映像やドキュメンタリー作品、実際に戦争を経験した方々の
証言などによってしか知りません。
(勿論「戦争」そのものは今でも世界各地で起こっていますが)

ですから「戦争」について軽々しく語ることはできません。
でもこのような形で「戦争(の恐怖や悲惨さ)」に触れることも決して悪いことではないのだと思います。
例えそれが戦争を経験していない人たちが作った「(娯楽)映画」だったとしても。


映画のラスト
海の中に崩れ落ちていくゴジラに向かって「海神作戦」を決行した元海軍士官たちが敬礼をしますが
この敬礼の意味についてはいろいろと考察されています。
ノベライズでは「ゴジラも核実験の被害者である」という気持ちの表れと書かれているようですが。

ただこの映画は、主人公・敷島をはじめとして「生きて帰ってきた」が故の苦悩の物語であり
「(自分の)戦争がまだ終わっていない」者たちの物語です。
やはり最後の敬礼は、ようやく「戦争を終えることができた」者たちが
(ゴジラも含めて)戦争の犠牲となった全ての人々に対して行った"鎮魂の儀式"だったと思います。




モノクロ映像版となる『ゴジラ-1.0/C』も観に行こうと思います。

ウクライナ国立バレエ『雪の女王』

2023-12-30 17:35:25 | 舞台・映画など
ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)による『雪の女王』を観てきました。



振付:アニコ.レフヴィアシヴィリ
台本/音楽監督:A.レフヴィアシヴィリ、O.バクラン
(H.アンデルセンの原作童話による)
音楽:J.シュトラウス、P.マスカーニ、E.グリーグ、J.マスネほか

ゲルダ:オリガ・ゴリッツァ
カイ:オレクサンドル・オメリチェンコ
雪の女王:アナスタシア・シェフチェンコ
指揮:セルゲイ・ゴルブニチ
演奏:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団

全二幕、休憩を挟んで計100分の比較的観やすい時間です。
本作品『雪の女王』は日本初演ですが、物語もわかりやすく楽しめました。

バレエはあまり観ていないですし、技術的なことはよくわからないのですが
さすがはボリショイ劇場、マリインスキー劇場と並ぶ、旧ソ連の三大劇場です。
ソロだけでなく群舞も美しかった。


観劇の後、東京カテドラルでのクリスマス・ミサにも行ってきましたが
電車の中でなんとサンタさんに遭遇。
子供たちにプレゼントを配った"仕事帰り"だったようです。


(NPO法人チャリティーサンタさん)

コロナ禍明けの、久しぶりにクリスマスらしいクリスマスを過ごしました。


『神的なもの ~ピアノ作品集~』(ヨアキム・カール)

2023-12-17 19:26:22 | クラシック音楽
ノルウェーのピアニスト、ヨアキム・カールが弾く『神的なもの ~ピアノ作品集~』
というCDを聴きました。



収録されている曲は以下の通りです。

バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』
リスト:2つの伝説より第1曲『小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ』
バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『来たれ、異教徒の救い主よ』
メシアン:『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より第5曲『御子に注ぐ御子のまなざし』
バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ』
リスト:2つの伝説より第2曲『波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ』
バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『来たり給え、創造主なる聖霊よ』
メシアン:『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より第14曲『天使たちのまなざし』
フランク:前奏曲、コラールとフーガ

ノルウェー、ロフォーテン諸島のスタムスンド教会で録音されています。


コラール前奏曲『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』は
塚谷水無子さんの「ブゾーニ編:ゴルトベルク変奏曲」の解説によれば
「ヨーロッパの人々に最も愛されている」コラール前奏曲だそうです。
私もとても好きな曲です。

アンドレイ・タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」で流れるのがこの曲ですが
未来?を描いたSF映画の冒頭にバッハを用いた段階でこの映画の"評価"は決まった気がします。

『目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ』は曲名は知らなくても
一度はどこかで耳にしたことのある有名な曲ですね。


リストは「超絶技巧練習曲」や「タンホイザー序曲」(ピアノ版編曲)など
派手で煌びやかな印象が強いのですが、1861年にローマに移住して以降
キリスト教に題材を求めた作品が増えていきます。

どちらも二人の聖人(フランチェスコ)にまつわる逸話を基にした曲ですが
『小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ』は小鳥たちの囀りを描写するトレモロが印象的で
神秘的で静かな風景です。

『波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ』は荒れ狂う海をマントを広げて渡る力強い情景が描かれ
壮大なクライマックスを迎えます。


オリヴィエ・メシアンは神学者でもあったそうで、やはりキリスト教的な主題の作品も多いです。
パリのサントトリニテ教会で60年にわたりオルガン奏者を務めました。

『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』は2時間を超える大作で"音楽語法"もかなり複雑です。
第1曲「神のまなざし」に登場する<神の主題>
第2曲「星のまなざし」に登場する<星と十字架の主題>などが他の楽曲にも現れます。
殆ど現代音楽のような曲ですが「共感覚」の持ち主で一音一音に異なる「色」を感じるメシアンには
違う情景が見えていたのかもしれません。

メシアンの曲といえば、以前に聖イグナチオ教会(カトリック麹町教会)
「キリストの昇天」の第3楽章「キリストの栄光を自らのものとした魂の歓喜の高まり」を
聴いたことがあります。
コンサートが終わった後のアンコール?だったのですが
突如として鳴り響いたパイプオルガンに度肝を抜かれました。

教会のステンドグラスは、聖書の物語を分かりやすく伝える意味もありますが
教会で歌われる、演奏される音楽もまた同様です。

教会のパイプオルガンで聴くメシアンは特別なものでした。


普段はこのような「企画物」はあまり聴かない(手に取らない)のですが
バッハのコラール前奏曲『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』で始まり
フランクの『前奏曲、コラールとフーガ』で幕を閉じるという構成に惹かれてしまいました。

他の曲はどれも「標題音楽」ですが、フランクのみ「絶対音楽」です。
にもかわらず「神的なもの」と題するCDの最後に(バッハ、リスト、メシアンを経て)フランクを選ぶとは。

『前奏曲、コラールとフーガ』については
以前にも書きましたがホルヘ・ボレットの演奏が私にとっての究極の1枚です。
そのボレットには及ばないまでも、ヨアキム・カールの演奏も余計な飾りを排した
静かで美しい、この「神的なもの」の最後を飾るに相応しい響きです。


因みに本CDの原題はラテン語の「numinosum」で「神々しい」というような意味です。
心理学者ユングの自伝「思い出・夢・思想」に出てくる言葉からインスピレーションを受けて
選曲したそうです。

チバユウスケ逝去

2023-12-05 22:37:14 | クラシック以外の音楽
稀代のロック・ヴォーカリスト
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケ氏が2023年11月26日に逝去されました。

今では彼らの演奏はYouTubeで多数聴くことができますが
アベフトシのギター同様、自分も、そして何より若い人達がもう二度と彼の歌声を生で聴くことができない
それが残念であり悲しいです。
ご冥福をお祈りいたします。



あのさあ
一回死んだ星はまた生き返ると思う?
俺は生き返ると思う