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前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

スティーヴ・ライヒ 80th ANNIVERSARY 《テヒリーム》

2017-03-04 13:03:15 | クラシック音楽
東京オペラシティ・タケミツメモリアルホールで
スティーヴ・ライヒ 80th ANNIVERSARY 《テヒリーム》
を観てきました。

曲目と出演者は以下の通りです。

 ●クラッピング・ミュージック(1972)
   スティーヴ・ライヒ
   コリン・カリー

 ●マレット・カルテット(2009)
   コリン・カリー・グループ

 ●カルテット(2013)
   コリン・カリー・グループ

 ●テヒリーム(1981)
   指揮:コリン・カリー
   コリン・カリー・グループ
   シナジー・ヴォーカルズ

ライヒ御大は80歳とは思えないほど、背筋も伸びて若々しかったです。


『クラッピング・ミュージック』は
初期の「イッツ・ゴナ・レイン」や「ピアノ・フェイズ」といった
同じ旋律が徐々にズレていく"漸次的位相変位プロセス"を
使った作品です。

但し、その名の通り楽器ではなく手拍子で奏でる作品ですが。
手拍子と言ってもかなり難しい?

YouTubeで検索すれば色々な"演奏"が出てきますが、
この動画が一番「わかりやすい」と思います。

https://www.youtube.com/watch?v=lzkOFJMI5i8


ライヒ御大は『クラッピング・ミュージック』を演奏し終えた後は、
客席後方の録画ブース前に座って、ほかの演奏を聴いていました。
(私達の席の右20メートル位の位置!)


『マレット・カルテット』は2台のヴィブラフォンと2台のマリンバの作品、
『カルテット』は2台のヴィブラフォンと2台のピアノの作品です。

2作品とも初めて聴きましたが、『マレット・カルテット』の方が好みです。
非常に美しい作品でした。

後方に位置するマリンバがパルスのような役割を果たし、
第1ヴィブラフォンが早い旋律を奏で始めた後、
少し遅れて第2ヴィブラフォンが旋律を重ねていきます。

カノン(フェイジング)のようにズレて旋律が奏でられているようですが、
複雑すぎてそこまでは聴き取れませんでした。


トークショーを挟んで、メインの『テヒリーム』です。

4人のヴォーカル、打楽器、木管楽器、弦楽合奏による作品です。

手拍子や太鼓による早いリズムの上に、ヘブライ語による「詩編」が歌われますが、
ヴォーカルは、やはりカノンのように微妙にズレて歌い出します。

弦楽器はドローンのように長く引き伸ばされた和音を奏でます。


ヴォーカル、打楽器、弦楽器それぞれ様々なテンポが絡み合いますので、
指揮はかなり複雑です。
コリン・カリーの正確かつ的確な指示も、見ていて気持ちよかった。


客席は、私のようなクラシック音楽から現代音楽という流れで
ライヒの作品を聴くようになった人と、
トランスやテクノ、あるいはアートといった分野から
ライヒに出会ったと思われる人が半々くらいだったでしょうか。


本来"再現芸術"であるはずの音楽作品でありながら、
極めて"私的"(非再現的)になりがちな「現代音楽」の分野で、
これほど幅広く支持されている作曲家はほかにいないかもしれません。


そんなライヒご本人とともに彼の作品を鑑賞できた貴重な演奏会でした。


クリスティアン・リンドベルイ 『モーターバイク協奏曲』

2014-10-05 16:53:37 | クラシック音楽
トロンボーン奏者、クリスティアン・リンドベルイ(Christian Lindberg)が演奏する
『モーターバイク協奏曲』(作曲ヤン・サンドストレム/Jan Sandstrom)のDVDを買いました。




先日の「題名のない音楽会 ~なんてったってトロンボーン~」の中で紹介されていて、
面白そうだなあと思ったので。

実は高校時代にちょっとだけトロンボーンを演奏した(正確にはポジションを体で覚えて音を出した)ことがあり、
その音色や演奏する姿など、今でも最も好きな楽器です。


番組では、トロンボーンの魅力や有名な演奏者の紹介がされており、
『モーターバイク協奏曲』は、バイクの走る様子(エンジン音)をトロンボーンで模していました。

楽器で動物の鳴き声や乗り物の音などを"物真似"することはよくありますが、
この曲は単なるギミックではなく、技術的にもかなり高度なようでしたので、
全曲聴いてみたくなりました。



衝撃でした。
トロンボーンでこんな演奏ができるなんて!

トロンボーンの超絶技巧?で「熊蜂の飛行」を吹くのは知っていますが(これでも凄いんでしょう)、
さらに次元が違う。

圧巻は曲終盤のカデンツァ?です。
超高音でスライドを動かしながらのタンギングと倍音への自在な移行。
そこからの(恐らくは)5オクターブ以上?の半音階下降!!
(うまく説明できないし、そもそもこの表現で正しいのか・・・)

どんなに早い高音のパッセージをも、正確無比に、そして楽々と吹きこなす
その技術と体力。




クリスティアン・リンドベルイは1958年、スウェーデン生まれで、物知りウィキさんによると、
「世界でただ1人、フルタイムのソロ・トロンボーン奏者として成功している人物で、
 これまでに70曲以上の協奏曲を含む200曲以上もの作品を初演」
だそうです。


本来、凡人が超一流、天才の技巧をあれこれいうことはできないのですが・・・。

例えば、160kmの速球を、落差の大きいホークボールを投げられるからといって、
その投手が超一流だとは限りません。

巧みな配球や打者との駆け引き、投球のテンポ、フィールディング、
シーズンを通して活躍できる体力や、大事な場面でも動じない精神力。
それらを兼ね備えて勝ち続ける投手が、超一流なのでしょう。


オーケストラで活躍する奏者であれば、単に技巧だけでなく、
指揮者の要求に瞬時に応える表現力や音楽性、指揮の意図を先読みする力、
パートをまとめるアンサンブル能力などがないと、超一流とはいえないのでしょう。


ですから、ソロ奏者とオーケストラの演奏者を単純に比較はできなでしょうけど、
(非難覚悟でいわせてもらえば)
クリスティアン・リンドベルイという人、現代最高の、いや史上最高のトロンボーン奏者
ではないのでしょうか。

それほどの説得力をもった、圧倒的な演奏です。


「神の楽器」と呼ばれるトロンボーンを自在に操る、「トロンボーンの神」の名がクリスティアン
なんて、ちょっとできすぎでしょうか。


CDも膨大にありますし、作曲もしているそうなので(当然自作自演)、
この衝撃はまだまだ続きそうです。

ショスタコーヴィチ 交響曲第9番&第15番(アンドレイ・ボレイコ指揮)

2014-05-31 18:39:26 | クラシック音楽
久々に大型CDショップでクラシックのCDを買いました。

ショスタコーヴィチの交響曲第9番と第15番のカップリングで
指揮はアンドレイ・ボレイコ、オケはシュトゥットガルト放送交響楽団です。




お気に入りの2曲が一緒に聴けて嬉しいです。
これに第1番が入っていたら完璧なんですけど時間的に無理か。

第9番(特に第1楽章)は何度聴いても変な曲ですね。そこが魅力でもあるのですが。
ライブ演奏ですけど、それを感じさせない演奏クオリティ。さすがです。
ホルン凄い!


正直、買った理由は、激安セールで700円(新品ですよ)という値段だったのですが、
お買い得でした。




ハイドン先生と暗いドミトリー君

ウクライナ国立歌劇場管弦楽団演奏会

2013-12-31 21:51:05 | クラシック音楽
ウクライナ国立歌劇場管弦楽団演奏で、
ベートーヴェンの第九を東京オペラシティで聴いてきました。

  指揮:ミコラ・ジャジューラ
  ソプラノ:ヴィクトリア・チェンスカ
  メゾソプラノ:アンジェリーナ・シヴァチカ
  テノール:ドミトロ・クジミン
  バリトン:セルヒイ・コヴニル
  合唱:The Metropolitan Chorus of Tokyo

第九を生で聴くのは(というかコンサート自体)久しぶりです。
やっぱり生オケはいいですね。


はてさて、ウクライナとはどの辺の国?
「旧ソ連邦の構成国だろうな・・・」とは思いましたが、
ソビエト連邦崩壊後は東ヨーロッパに属するようですね。

首都は「展覧会の絵」の最終曲、「キエフの大門」でお馴染みのキエフです。


で、肝心の演奏は・・・と。

オーケストラも指揮者も決して悪くないと思ったのですが、
如何せん、東京オペラシティホールの音響が・・・。

ネットのクチコミを読む限りでは、結構評判がいいようですので、
私の座った席(2階)がたまたまよくなかったのでしょうか。
金管楽器、特にトロンボーンがほとんど響いてこない。
(ホルンは比較的まし)

合唱団を配するために無理な楽器配置にしたためでしょうか。
せめて木管群、金管群は一段高くしてもらえれば、少しはよかったかも。
(ステージ後方と2階席正面に陣取った合唱団は特等席)

まあ、第九は金管メインじゃないので、それでもまだいいのですが・・・。



実はこの日はダブルヘッダーで、夕方から同ホール、同指揮者、同オケで
「今年の鬱憤、今年に晴らせ!」と題された特別演奏会も聴いたのでした。
盛り上がる有名どころの曲だけ(とも言い難いのですが)の約1時間のコンサート。

  R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」より導入部(←のみ)
  ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」
  ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
  スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より「モルダウ」
  ムソルグスキー:交響詩「禿山の一夜」
  ショスタコーヴィチ:交響曲第5番の第4楽章(←のみ)
  ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」よりプロムナード、バーバ・ヤーガ~キエフの大門

という休憩なしのラインナップ。


今度は1階の端っこで聴いたのですが、やはり音響は変わらず。
う~ん、室内オーケストラを聴いている感じ。
なんか、オケも指揮者も可哀想になってきました。

それとも公演最終日の最終プログラムで疲れ切ってたのかな。
アンコールのハチャトゥリアン「剣の舞」が一番盛り上がりました。
(もうホントに最後の最後だから?)


第1試合、第2試合ともに、首席ホルンが素晴らしかったですね。

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調 (朝比奈隆/シカゴ交響楽団)

2013-06-02 20:34:16 | クラシック音楽
朝比奈隆が1996年に初めてシカゴ交響楽団を指揮した、
ブルックナーの交響曲第5番のDVDを買いました。

NHKで放送された当時も録画して観ていましたが、改めて観たく(聴きたく)なったので。


例えば、ベートーヴェンをあるいはブラームスを得意とする指揮者、
チャイコフスキーやショスタコーヴィチを好んで取り上げる指揮者もいると思いますが、
彼らを「ブラームス指揮者」「ショスタコーヴィチ指揮者」などと呼ぶのを
あまり聞いた記憶はありません。

唯一、ブルックナーにだけ「ブルックナー指揮者」なるものが存在します。
(「マーラー指揮者」って言い方もするかな?)

その人達の指揮と、他の指揮者のブルックナーと一体何が違うのか?
その本質がなんなのかはよくわかりません。

テンポが遅め?(マタチッチは結構早いですね)
スケールが大きい?(音量が大きいのと同じこと?)


故・岩城宏之さんの著書「フィルハーモニーの風景」の中に書かれてある、
ベームが指揮したミュンヘンのオケについてウィーン・フィルのメンバーが
語っていることはとても印象的です。

  オーケストラ自体は非常に優れている。だがわれわれと違うところは・・・
  ミュンヘンのオペラオーケストラは、歳をとったベームの間延びしたテンポに、
  忠実につけて弾いていただけだった。
  おれたちフィルハーモニカーは、ベームの遅いテンポ通りに演奏するが、
  ジイさんの心の中の本当の意図を読み取って音楽を盛り込み、
  充実させて救っている。
  ミュンヘンのようでは、ベームはただの老人指揮者であるに過ぎない・・・


朝比奈御大がシカゴ響でブルックナーを振った時、すでに88歳!
その遅いテンポの中、シカゴ響の手練達は、朝比奈の意図を汲み取ったのか。

ただ言えるのは、終楽章のコーダ、壮大なクライマックスを聴くたびに、
胸が、そして目頭が熱くなるということです。

聴衆の喝采は、高齢の指揮者が長大な交響曲を指揮したことに対する、
単なる"労い"の拍手ではないでしょう


朝比奈隆の指揮を観る機会は何度かありました。
その中でも特に印象に残っているのが、
1994年6月4日、NHK交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第5番です。

確かN響の定期公演に登場するのは7、8年振りとかだったと思います。


素晴らしい演奏に接した際の"感動"にも"質の違い"がありますが、
感動の大きさ、という点でいえば、今もってこの演奏会を凌ぐものには出会っていません。
まさに体が震えるような。

その時、強く感じたのは「これは本物だ」という想いです。

日本から遠く離れた国で、その文化、歴史の中で、200年近く前に作られた音楽作品。
極東の島国・日本で、日本人指揮者、日本人ばかりのオーケストラで演奏されたベートーヴェン。

だが、これは世界中のどこに出しても恥ずかしくない「本物のベートーヴェンだ!」
そう確信しました。
(理由や傍証を求められても説明はできません)


朝比奈隆の指揮全てが"名演"というわけではありませんし、
全ての演奏を手放しで賞賛するつもりもありません。
でもこの、シカゴ響とのブルックナーは、紛れもないブルックナーです。
だからそれが、「ブルックナー指揮者」と呼ばれる証なのでしょう。