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前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

あなたの功績を永遠に讃えます

2020-02-07 00:03:41 | クラシック音楽
「NAXOS(ナクソス)」というレーベルをご存知でしょうか。
クラシック音楽ファンには有名だと思いますが、
そうでない方は、そもそもレーベルなんてあまり気にしないですかね。

Wikipediaによると1987年設立とありますが
私が知ったのはその数年後だと思います。

衝撃でした。何ってその値段に。

当時は国内CDが、まだ1枚3,000円くらいしていました。
なので、クラシックファンはよく秋葉原にあった石丸電気・輸入盤専門店に
買いに行ってましたね。2~3割は安かったと思います。

そんな時代に1枚1,000円でしたので。


ただ、グラモフォン(Grammophon)、デッカ(Decca)、フィリップス(Philips)、EMI
といった有名レーベルでは見たことのない指揮者や演奏家、オーケストラでしたので
「安かろう、悪かろう」という感じで、最初は手が出し辛かったですが。

あと値段以外にも驚いた点があります。
それは、聴いたことのない作曲家や
有名な作曲家でもあまり知られていない作品を取り上げていたことです。

マイナーな曲(作曲家)など"チャレンジ"するのにはよかったですね。

でも、聴いていくうちに演奏自体も「悪くないぞ」と思うようになりました。
そもそもNAXOSのポリシーが「無名でも実力のある演奏家を起用する」
ということでしたので。


そんなNAXOSの演奏家の中でも、もっとも名声を博した一人が
指揮者のゲオルク・ティントナーではないでしょうか。
ブルックナーの交響曲全集録音に起用されNAXOSデビューしたのは70歳代後半でした。
(初めてのファン・レターは日本人の学生からだったそうです)

私はその頃、クラシック鑑賞サークルに入っていたのですが、
友人らと「ティントナーのブルックナー、結構よくないか?」と語り合った記憶があります。


ブルックナーの交響曲は曲によっては何度も改訂を行ったために
同じ曲でも校訂者の違いにより複数の「版」があります。

当初は、それぞれの曲の全ての版を網羅するという壮大な企画でしたが、
すでに病気(悪性黒色腫)に冒されれていたティントナーは
交響曲全11曲を一種類ずつ録音し終えたところで、自ら命を絶ちました。
(第1番~第9番と、習作の第00番、"無価値"とした第0番)


のちにNAXOSから出たブルックナー交響曲全集の帯には
次のような言葉が書かれています。


「天国のゲオルク・ティントナー様、あなたの功績を永遠に讃えます」


このような賛辞を贈られた演奏家を私は他に知りません。
そして彼の功績はこの讃辞に相応しいと思います。
世界中の多くのブルックナーファンも同じ気持ちだと思います。




「MOSTLY CLASSIC」でブルックナー特集を読んだせいか、
私的にブチ・ブルックナー・ブームがきてます。

ソラブジ『100の超絶技巧練習曲』

2019-12-15 19:27:11 | クラシック音楽
このブログは元々、クラシックの演奏会やCDの感想を中心に
美術館に行った記録などを備忘録がてら書いていましたが、
N響の定期会員を辞めたことや引越ししたことなどもあり、
「交響曲」「協奏曲」といったクラシック音楽を聴く機会は少なくなりました。
(年に一度の「ラ・フォル・ジュルネ」は行きますが)


その代わり、バロックや中世の音楽、グレゴリオ聖歌などをよく聴きます。
(バッハ大先生のマタイ受難曲も実は割と最近ですね)

あと、ライヒやペルトといった現代音楽は相変わらず。
もっともペルトの曲は、聴いてると中世の宗教曲とあまり隔たりはないですが。


こういった好みの変化は、年齢的なものも関係しているかもしれません。
そもそも10年前にブログを始めるきっかけとなったのが、
ハイドン先生の交響曲全曲を聴き出したことですので。

学生時代、マーラーだ、ブルックナーだ、ショスタコだ、
などと騒いでいた頃には想像していなかった・・・、
というか「ああいう曲は歳を取ってから聴くのだ」など思っていました。

正しかった・・・少なくとも私に関しては。


今まで聴いたことのない曲、知らない作曲家は、なかなか手が出し辛く、
すでに知っている好きな曲の別バージョン(違う指揮者、演奏家)を
聴くということが多くなりがちなのですが、
たまにこういう作曲家、こういう曲のことを知ると、
"当たり外れ"はともかくとして、ワクワクします。


前置きが長くなりましたが、
カイホスルー・シャプルジ・ソラブジ(Kaikhosru Shapurji Sorabji)の
『100の超絶技巧練習曲』というピアノ曲です。

ソラブジは1892年生まれのイギリスの作曲家(1988年没)。

でかでかと「100」その内の1番~25番。


演奏者はスウェーデンのピアニスト、フレドリク・ウレーン。

ちなみに精神科医でもあるそうです。


このソラブジという作曲家、とにかく曲が長いことで有名?らしく、
4時間、5時間は当たり前(1曲がですよ)。

本作品も超絶技巧曲が100曲ですからね。
1曲1曲は1分~5分程度ですが、全体で7~8時間。正気とは思えない。
(この作品を録音しようとした「Dr.ウレーン」も同様か?)


まだ聴き始めたばかりですが、
演奏しない人間にとっては、難しさの程度はよくわかりません。
片手が白鍵のみ、もう一方が黒鍵のみ、という曲もあるそうですが。

「超絶技巧練習曲」といえば、やはり元祖、リストの作品を思い出します。
あちらは演奏の難易度はわからずとも、曲がいいので1曲1曲楽しめますが、
ソラブジ版は本当に練習曲みたいです。
(若干、無味乾燥というか)


ソラブジについてはいろいろ"付加情報"が多いのですが
(独学で作曲とピアノを学んだとかゾロアスター教徒であるとか)、
一番参考になったのは、Amazonの「ニゴチュウ」という方のレビューですね。
曲の解説や聴きどころ、それに演奏者ウレーンについても触れていて、
大変助かりました。
(「殿堂入りベスト500レビュアー」だそうです。さすが)

ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019

2019-05-05 00:03:10 | クラシック音楽
『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019』に行ってきました。




聴いたのは、3日と4日で計3公演。

◆平和~パス・サローム・シャローム(公演№122)
 カンティクム・ノーヴム(地中海沿岸の伝統楽器アンサンブル)
 エマニュエル・バルドン(歌、音楽監督)

"パス"はスペイン語、"サラーム"はアラビア語、"シャローム"はヘブライ語で
いずれも「平和」を意味するそうです。
キリスト教世界と東洋世界が出会う地中海地方の音楽と、
西欧の音楽を自在に融合させる器楽・声楽アンサンブル。



あまり目にする機会のない楽器ばかりでした。


ニッケルハルパ。
鍵盤で弦を押さえて弓で弾く楽器です。
ハーディ・ガーディに似ています。


カヌーン(カーヌーン)。
琴のように指で爪弾いて弾きます。

そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバやリュート、リコーダーの
親戚みたいな楽器と打楽器など。

聖母マリアへの賛歌などが中心でしたが、旋律は中近東の音楽のよう。



◆慈愛-中世ヨーロッパの愛の旅(公演№124)
 ヴォックス・クラマンティス(合唱)
 ヤーン=エイク・トゥルヴェ(指揮)

グレゴリオ聖歌、中世の多声声楽曲、現代音楽を得意とする合唱団で、
作曲家ペルトから多くの作品を献呈され初演しています。



グレゴリオ聖歌:アレルヤ
マショー:キリエ(ノートルダム・ミサから)
ダンスタブル:あなたはなんと美しいことか
ペロティヌス:祝福されたる子よ
ダンスタブル:われ、わが園にくだりゆけり
グレゴリオ聖歌:あなたはまったく美しい、マリアさま
バンショワ:愛の神への感謝
マショー:アニュス・デイ(ノートルダム・ミサから)
オケゲム:死よ、そなたは矢で傷つけてしまった


アレルヤを歌いながら、会場後方から入場。
そして、ギョーム・ド・マショーのキリエに。

何という美しい歌声。神聖さ、荘厳さ。


◆ペルト作品(公演№233)
 ヴォックス・クラマンティス(合唱)
 ヴォックス・トリオ(弦楽三重奏)
 ヤーン=エイク・トゥルヴェ(指揮)

ペルト:何年も前のことだった
ペルト:7つのマニフィカト・アンティフォナ
ペルト:スターバト・マーテル


ペルトの音楽に出会ったのは、第一作品集「タブラ・ラサ」が
出た頃なので、もう27~8年前になるでしょうか。
ライヒと共に、もっとも支持を集めている現代作曲家になりました。

もともと宗教色が強く、静謐な作品が多いので、
無伴奏合唱曲などは、前出の中世の宗教曲などと並べても
違和感がありません。

『7つのマニフィカト・アンティフォナ』は初めて聴く曲でしたが、
男声低音、パートごとの移り変わりと重なりがしびれます。

『スターバト・マーテル』は冒頭、弦楽三重奏で始まりますが、
ペルトらしい下降していく旋律で、そこに合唱が加わると、もう限界。
「Stabat mater dolorosa」のところで思わず落涙。


ヴォックス・クラマンティスは、これまでもラ・フォル・ジュルネに
出演していたようですが、今まで知りませんでした。
機会があればまた聴きたいです。


CDを購入しました。
グレゴリオ聖歌とペルトの作品集。

モーツァルト『レクイエム』(追悼ミサ)

2019-04-06 23:39:07 | クラシック音楽
カトリック洗足教会で行われた
モーツァルトの『レクイエム』を聴いてきました。



当日知ったのですが、
モーツァルトの『レクイエム』でミサを行うことが
亡くなられた方の生前の希望だったそうです。


洗足教会およびオラショクラブという合唱団の協力のもと、
通常のカトリックミサの式次第の中に、
『レクイエム』を組み込む形で行われました。

全曲一気に演奏されるのではなく、ミサの要所に、
司式に沿った形で曲が挿入されます。


合唱を行ったオラショクラブは、18世紀のウィーンのミサ曲を中心に、
演奏を行っている混声合唱団だそうです。

ちなみに「オラショ」とは、
ラテン語のオラシオ(oratio、祈祷文)に由来するもので、
禁教下で潜伏キリシタン、隠れキリシタンによって伝承されたものです。


演奏者は最前列にいたのでよく見えませんでしたが、
おそらく弦楽器数人(弦楽四重奏?)とホルンのみで、
足りない部分はオルガンが補っていたと思われます。
(ホルンは第4曲でトロンボーンの代わりを務めました)

演奏自体は正直、上手いというわけではありませんが、
もともとミサ曲や受難曲は、教会内で演奏されたものです。
そういったある種の「素朴さ」や「素人っぽさ」が逆にリアルで、
崇高さ、気高さを感じさせ、心に響きます。
(それも教会内で本当のミサと共にですから)


なにより、このようなカトリックの正式なミサと共に演奏される
モーツァルトの『レクイエム』は、二度と聴く機会はないかもしれません。
非常に貴重な体験でした。




式が始まる前に教会に行って、撮影許可を頂きました。
洗足教会については改めてアップする予定です。

J.S.バッハ『マタイ受難曲』(BWV244bに基づく単一合唱版)

2019-03-09 22:52:37 | クラシック音楽
バッハ大先生の『マタイ受難曲』(BWV244bに基づく単一合唱版)を
聴いてきました。
単一合唱版は世界初演だそうです。


ヨハネス・カントーレス第14回演奏会

合唱・管弦楽:ヨハネス・カントーレス
指揮・アルト:青木洋也
福音史家:松原友
イエス:藤井大輔
ソプラノ:藤崎美苗、金成佳枝
アルト:高橋ちはる
テノール:石川洋人
バス:黒田祐貴

ウェスレアン・ホーリネス淀橋教会




通常の『マタイ受難曲』は、
2組のオーケストラ、2組の四声部合唱で演奏されますが、
今回は、初期稿を精査し、また当時の演奏者の人数も考慮に入れた
一つの試みとしての「単一合唱・単一オーケストラ」での演奏です。

パンフレットには、その辺りの研究過程が詳しく載っていますが、
難しいので詳細は割愛します。
(「根源形の復元」というべきではないと書かれています)


実のところ、普段『マタイ受難曲』を聴いているときに、
2組のオケ・合唱を意識してるわけではありません。

ただ、最初の合唱の部分など、いつも聴きなれている響きとは
ちょっと違う感じがしました。
(2組の方が立体感があるような気が・・・)


昨年の、C.P.E.バッハ『ヨハネ受難曲』と同様、
指揮の青木洋也さんは、女声部ソロ(アルト)を熱唱。
これがまたうまい!

結構、大柄のイケメンなのですが、
オケを指揮しつつ、客席側を振り返って朗々と(女声で)歌う様は、
ちょっとした"スペクタクル"です。
この光景だけでも毎年見たい!


何はともあれ『マタイ受難曲』。今年2回目。

復活祭前のこの時期には、教会などで沢山『受難曲』が
演奏されていることがわかったので、毎年楽しみです。