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前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

ジョスカン・デ・プレ『ミサ曲:ロム・アルメ』

2021-06-19 15:59:25 | クラシック音楽
ジョスカン・デ・プレのミサ曲『ロム・アルメ』を聴いてきました。

グレゴリオ聖歌、聖書朗読を交えたカトリック「三位一体ミサ」の
枠組みの中で行われる、珍しいミサ形式の演奏会です。




ヴォーカル・アンサンブル・カペラ定期公演
「ジョスカン・デ・プレ没後500年記念演奏会2」

スペリウス:花井尚美・夏山美加恵
アルトゥス:富本泰成・渡辺研一郎
テノール:及川豊・根岸一郎
バッスス:櫻井元希・谷本喜基
音楽監督:花井哲郎

東京カテドラル聖マリア大聖堂


1521年没の方なので今年没後500年になります。

日本は室町時代後期、応仁の乱とか鉄砲伝来とかの時代です。
その頃の音楽を聴けるというのは、考えてみると凄いことですね。


ジョスカン・デ・プレは、今回の演奏された
「種々の音高による」ミサ『ロム・アルメ』のほかに
「第6旋法の」ミサ『ロム・アルメ』という曲も作っています。

プログラム・ノートには
違いや特徴などについていろいろと説明が書いてあるのですが
難しすぎて理解できません。

恐らく聴き比べても、よくわからないでしょう。


通常のミサ曲で歌われる
キリエ(Kyrie)
グロリア(Gloria)
クレド(Credo)
サンクトゥス(Sanctus)
アニュス・デイ(Agnus Dei)
の5曲がジョスカン・デ・プレによるもので
そこに、グレゴリオ聖歌の「アレルヤ唱」「昇階唱」「奉納唱」「拝領唱」
ラテン語の「聖書朗読」や「主の祈り」などが加わり
カトリック典礼の形式で演奏が行われました。

彼の曲は「メンスーラ・カノン」という
同じ旋律を複数の奏者が違うテンポで歌う手法が採られており
歌詞をある程度知っていても、どこを歌っているのかわからなくなります。


ですから正直言うと
グレゴリオ聖歌やラテン語で唱えられるパートの方が聴きやすいんですよね。

でも残響の長い教会聖堂で、美しいラテン語の歌声を聴くのは本当に気持ちがいい。
(特に東京カテドラルは別格ですね)
ヴォーカル・アンサンブル・カペラも素晴らしい。

ちなみに伴奏なしで歌われることをイタリア語で「ア・カペラ(a cappella)」といいますが
「cappella」は英語の「チャペル(chapel)」=「聖堂・礼拝堂」のことで
もともと「聖堂において」(in chapel)という意味だったそうです。
(妻に教えてもらいました)


演奏会に行ったのも、カテドラルを訪れたのも二年ぶりぐらいでしたが
久々に心洗われる一夜でした。



夜のカテドラル


ルルド

ストラヴィンスキー 『春の祭典』(ロト指揮&レ・シエクル)

2021-04-25 21:14:41 | クラシック音楽
フランソワ=クサヴィエ・ロト指揮、レ・シエクル(管弦楽)の
ストラヴィンスキー『春の祭典』を聴きました。



最近はほとんどCDも買っていませんし、このご時世なので
新宿タワーレコードやディスク・ユニオン(クラシック館)とかにも行っていません。

お店に行くと(買う買わないは別にして)色々見て回ってるだけで
あっという間に2時間くらい経ってるんですよね。至福の時間です。


このCDは随分前に買ったのですが、指揮者や演奏についてあまり予備知識もなく
1,2回聴いたきりだったかと思います。

近頃はHMVからくるメルマガが唯一の情報源なのですが
このところ、ロト&レ・シエクルのいろいろな演奏が話題になっており
「そう言えば・・・」と改めて『春の祭典』を聴き直した次第です。


特徴はというと
一つはピリオド楽器(初演当時に使われていた楽器)で演奏されていることです。
初演は1913年5月29日、パリ・シャンゼリゼ劇場ですが
今回使われた楽器も1890年代~1910年代のフランス製らしいです。

とはいえ、バッハやベートーヴェンの時代ほど古いわけではないですし
私の耳では、聴いていてそれほどの違いはわかりません。
(批評曰く「明るいフランス的音色」とのこと)


もう一つの特徴は1913年初演版の楽譜を使用していることです。
(通常演奏されるのは1967年改訂版とのこと)
ただこれも、楽器(パート)が非常に複雑に入り組んだ曲ですので
普通に聴いていて、版の違いはほとんどわかりません。

どの声部・楽器を際立たせるかによっても「聴こえ方」が変わってきますので
指揮者によっては「あれ、こんなとこあったっけ?」と感じることも。


様々なアプローチが可能で、"一流の演奏"ならどれも面白くなるのが「ハルサイ」です。
今まで結構な数の演奏を聴いてきましたが
正直、世間での評判ほどの衝撃は感じませんでした。

ただ、普通?に聴きやすい、いい演奏だと思いますので
そういう意味で、繰り返し聴くCDになるかもしれません。


過去、古楽器オケで驚いたのは
ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団のモーツァルト(交響曲41番)と
コレギウム・アウレウム合奏団のベートーヴェン(交響曲第7番)ですが
楽器の音色というよりも"演奏スタイル(解釈)"の新しさ(古さ?)でしょうか。

あ、あと忘れてはいけないのが
ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークの
ベルリオーズ(幻想交響曲)ですね。
こちらはDVDで持っているのですが"見た目"も含めて衝撃的です。


革命的ロマンティック・オーケストラ


ただ、ニジンスキー振付(復刻)によるバレエ版にやられてしまった身としては
「春の祭典」は(演奏がどうのこうの、という)独立した管弦楽曲ではなく
「バレエとして観る(観たい)」という想いが強いですね。


↓興味のある方は是非こちらをご覧ください。
Rite of Spring - Joffrey Ballet 1987
https://www.youtube.com/watch?v=jo4sf2wT0wU


ロト&レ・シエクルのコンビでは、ベートーヴェンの評判がよいですが
個人的には「展覧会の絵」(ラヴェル編)の方を聴いてみたいですね。
大管弦楽、キンキンキラキラの音色というイメージですが果たして?

マーラー:交響曲第2番『復活』(バーンスタイン指揮)

2020-11-15 20:54:51 | クラシック音楽
レナード・バーンスタインはカラヤンと並び、20世紀を代表するスター指揮者ですが
正直、あまり好きな指揮者ではありませんでした。
CDも好んで聴くことは、ほとんどありません。

指揮・演奏のスタイル?が
中学・高校時代に出会って以来、好きになったゲオルグ・ショルティとは
ほぼ真逆だったのも一因かもしれません。

当時、勝手に抱いていたイメージとしては
・情熱的で情感たっぷりのバーンスタイン
・正確無比でクールなショルティ
という感じだったでしょうか。


ウィーン・フィルを指揮したブラームスの交響曲の演奏が
どうしても好きになれず、ずっとそれを引きずっていました。
自分のCDコレクションを探してみましたが見事に1枚もない。


今回、改めてマーラーを指揮する姿(ライブ映像)を観ました。
まだ50代、油が乗り切った頃の演奏です。


マーラー:交響曲第2番ハ短調『復活』

シーラ・アームストロング(ソプラノ)
ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)
エディンバラ音楽合唱団
ロンドン交響楽団
レナード・バーンスタイン(指揮)
1973年9月:イギリス・イーリー大聖堂(ライブ収録)


イメージ通り、いやそれ以上に"感情過多"の指揮ぶりです。

高校時代、ショルティが指揮するマーラーに夢中になっていた時には
すでにこの"映像"は撮られていたわけです。
今の様に気軽に観られる時代ではなかったですが
もしその時に観ていたらどう感じたでしょうか。

何事にも「出会う時期」があるのかもしれません。


終楽章
クロプシュトックの詩にマーラーが加筆した『復活』の賛歌。

蘇るために私は死ぬのだ
蘇るだろう 私は蘇るだろう
我が心よ
ただちに お前は蘇るだろう
お前の鼓動が 神のもとに
お前を運んで行くだろう



ソリスト・合唱団の誰よりも、感情を爆発させて「歌って」います。

そして、その"感情過多"の姿に、心が震え涙が出てきます。
あの頃のバーンスタインとそろそろ同い年。
今が「出会う時期」だったのかもしれません。

カルロス・クライバー指揮 『ブラームス:交響曲第2番』

2020-05-30 17:33:03 | クラシック音楽
「音楽の喜び」あるいは「音楽の楽しさ」
もっというと「幸せ」に満ち溢れた映像とでもいいましょうか。


NHK交響楽団の定期会員を辞めてから、
クラシックのコンサートに行く機会はかなり減りました。

それでも毎年、5月は「ラ・フォル・ジュルネ」に行ってましたし、
また3月、4月はバッハ大先生の「マタイ受難曲」が結構演奏され、
昨年、一昨年も聴いていたので、今年も楽しみにしていたのですが・・・。

こんなご時世なので、家でCDやDVDを観たり聴いたりしていたのですが、
改めてこのDVDの紹介です。



カルロス・クライバー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
モーツァルト:交響曲第36番ハ長調《リンツ》
ブラームス:交響曲第2番ニ長調

有名な演奏なので、ご存知の方も多いでしょう。


実はクライバーに関しては、生前はあまり興味がなく、
亡くなったのち、クラシカ・ジャパンなどで映像を観てから好きになりました。
演奏を聴くのが好き、というより彼の指揮姿を観るのが好き、といった方が
正しいでしょうか。

「踊るような」などと評される彼の指揮姿は、
確かに観ていてうっとりするほど美しいのですが、
同時に「音楽そのもの」を具現化したような指揮振りでもあります。
「旋律」をそのまま動きで表すような。

このDVDに納められている2曲は、
お互いを知り尽くしているウィーン・フィルとのコンビ、ということもあってか、
どちらもそんなクライバーの特徴が堪能できる演奏です。


途中、ほとんど指揮をしていない?ような、
相手(ウィーン・フィル)を信頼しきっているようなモーツァルトも楽しいですけど、
おススメはブラームスですね。


指揮棒を動かさず聞き入っているクライバー


楽しくてしょうがないクライバー

「旋律そのままの動き」がたっぷり観られる第2、第3楽章もいいのですが、
繰り返し、何度も観てしまうのはやはり第4楽章。
冒頭の言葉は、その感想です。

指揮者、演奏者、観客、全てが幸福感に満たされているような、
「音楽の喜び」そのものとでもいうような「奇跡の瞬間」が
映像に納められている気がします。


こんな指揮者、もう二度と現れないでしょう。


<追記>
今年の1月にNHKのBS8Kで、このコンサートが放送されたようです。

まだ8Kどころか4Kもなかった2014年、
幕張メッセの宇宙博で8Kの映像を観た時は、
まるで実際の風景を観ているような「実在感」に驚きました。

このDVDはあまり鮮明な映像ではないのですが、
オリジナルフィルムからリマスターしたのでしょうか。
8Kのハードが普及した際は、真っ先に観てみたいですね。

メンデルスゾーン『弦楽八重奏曲 変ホ長調』(初稿版)

2020-04-11 15:20:41 | クラシック音楽
メンデルスゾーンは、正直それほどよく聴く作曲家という訳ではありません。
知っている曲といえば、ヴァイオリン協奏曲と交響曲を数曲、
あとは「真夏の夜の夢」序曲くらいでしょうか。

そんな中で、最も好きなのが『弦楽八重奏曲』なのですが、
この曲に関しては、あらゆる室内楽作品の中でもトップクラスに好き、です。

メンデルスゾーンは、38歳で亡くなった"早熟の天才"作曲家ですが
「真夏の夜の夢」序曲と同じく、16歳の時(1825年)の作品です。
私のような、あらゆる分野で"凡人"の人間が言うのもおこがましいのですが
正に"天才の閃き"という部分がたまらない魅力です。


通常演奏されるのは改訂版なのですが、今回聴いたのは「初稿版」です。
存在自体は知っていたのですが、ようやく耳にすることができました。


(ヴァイオリン協奏曲の「初稿版」も入っています)


改訂版は全く淀みのない仕上がりで
全編流れるように曲が進んでいきます。
それに比べて初稿版は、やはりところどころ
処理に苦労したような部分が感じられます。

もっとも最初にこっち(初稿版)を聴いていたら、
それはそれで好きになっていたと思いますが。


私が聴くたびにいつも"天才の閃き"を感じるのが
第1楽章コーダで他の楽器の伴奏の中、
ヴァイオリンのソロ(途中から第1、第2ヴァイオリンのユニゾン?)が
出てくるところです。

最後は冒頭主題に戻って曲が締めくくられるのですが、
曲が終わる"雰囲気"が出てきた辺りから冒頭主題に行くまでの"道筋"が、
これが唯一の「正解」という気がします。

でもメンデルスゾーンはその正解に、試行錯誤の末ようやくたどり着いた、
という感じが全くしないのです。


「まず、こう来て、それからこうで、そしたらこうで、こう、こう、こうではい、出来上がり」
というような。
「この展開以外、あり得ないでしょ」という絶対的な確信というか、
天才の赴くまま筆を走らせたらこの旋律になった、というような自然さというか。


実はこの「初稿版」、最初に聴くときこの部分がどうなっているか
少し心配だったのですが、この旋律は現在演奏される改訂版と全く同じでした。
やはりここは、16歳の天才に舞い降りた「神の旋律」だったのでしょうか。



最初に聴いたのは、こちらの
ゲヴァントハウス四重奏団とベルリン四重奏団による演奏です。
(もちろん改訂版)

癖のない、聴きやすい演奏です。
特に第4楽章の冒頭はヘッドホンで聴くのがおススメ。
チェロからヴァイオリンへと、順に楽器が移っていく様子が
手に取るようにわかります。