山の頂から

やさしい風

二つの石

2007-11-11 22:48:32 | Weblog
 祖父の雄三郎は県北の、矢張り造り酒屋の三男だった。
父親同士が決めた結婚であったらしい。
祖母の口からその事を一度だけ聞いた。
麻紀はその時、聞かなければよかったと後悔に似た思いがした。
別に理由はなかったが、何となくそう思ったのだ。
雄三郎は優秀な事業家だった。
仕事に熱心で努力家でアイデアマンでもあった。
しかし、その他のことにはあっさりしていた。
興味がなかったのかも知れない。
祖母のミツの胸の内を聞いたわけではなかったが何か知れないものを麻紀は感じ取っていた。