山の頂から

やさしい風

二つの石

2007-11-18 23:09:11 | Weblog
 家の明かりを見てホッとした。
母の正子は会社の役員でもあるのだが、今日は家に帰っていた。
麻紀は帰宅の挨拶もそこそこに自分の部屋に急いだ。
机の引き出しを開け友禅の小袋に入れてある祖母の石を取り出す。
「ああ~~、やっぱり同じ。」麻紀は確信していたものが現実であったことに
満足に似たような気持になった。
両の石とも「ぎょく」だった。
それはよく似た石で、彫られている字体も一緒だ。
片仮名ではあるが同じ人物が彫ったと思われる。
麻紀は泣きたいような興奮を味わった。
これって何?いったいどういう巡り合わせ?
次第に鳥肌が立つような感覚を覚えた麻紀。
 すると階下から母の呼ぶ声がした。
「は~い」と返事はしたものの身体が動かない。
祖母ミツの穏やかに微笑む顔が思い浮かんだ。

二つの石

2007-11-18 06:57:06 | Weblog
 麻紀は石を見つめながら家のものと同じであることを確信していた。
それは不思議な感情なのだ。
勘とでもいうのか拾い上げた時からそう感じた。
説明のつかない漠とした思いがずっと心の隅にあった。
何なのだろ・・・この思いはと考えるうちに家のある駅に着いた。
改札口を抜けて家の方向へ帰る道に出るところで「あっ」と思った。
あの絵の作者、画廊の老人の名は確か「正吾」だった。
でもそれが何故?
麻紀は急に胸がドキドキとしてくるのだった。
本当にそれが何なの?と自問自答を繰り返しながら・・・