山の頂から

やさしい風

二つの石

2007-11-24 01:43:14 | Weblog
 会場は狭かった。
麻紀は岡本正吾の姿を目で追った。
彼は2~3人の友人らしき男性と話をしていた。
麻紀には背を向けた恰好だった。
そっと作品を見て回ることにした。
会場の隅々に小ぶりなランの鉢が置かれ華やかな感じである。
作品は前回と全く雰囲気が違って少しデフォルメされた静物画がほとんどだった。
麻紀はその意外さに驚き、また彼の作品の幅に感心した。
明るい色調は元来の彼かも知れないと思った。
背後に人の気配を感じ、ハッと振り返ると老人が立っていた。
優しい眼差しで麻紀が訪ねてきた呉れたことに礼を言った。
麻紀は少し気恥ずかしい気もしたが気持ちが和んだ。
先ほどの人たちは帰ったようだった。
そして会場には他に誰もいなくなった。