日本と世界

世界の中の日本

大垣・養老での伊藤左千夫

2023-03-15 18:36:46 | 日記
 大垣・養老での伊藤左千夫
文・道下 淳
岐阜女子大学地域文化研究所
エッセイスト
 
 正岡子規の門人伊藤左千夫(1864-1913)は、歌人・小説家として知られている。

とくにその長篇小説「野菊の墓」は、戦後映画にもなったから、ご記憶の方も多かろう。この人、大垣とは縁が深く、3回来垣している。

 左千夫が最初大垣に来たのは、明治36年11月のことである。

敬慕する師の子規が、養老の滝見物のため、大垣に一泊したものの、豪雨により果たせなかったことがあった。

その残念な気持ちを生前、左千夫らによく話していたらしい。

そこで子規が死去、一周忌が済むと左千夫は、師の願いを果たすため、養老にやってきた-と、筆者は考えている。

同38年9月には、歌人で小説家の長塚節が、やはり亡師をしのんで養老を訪ねている。

 左千夫には同行者がいた。

子規門の歌人蕨真で、二人は浜松・名古屋と泊まりを重ね16日に大垣入りをした。

名古屋では地元の歌人・俳人たちのほか、岐阜の俳人塩谷華園(鵜平)らも合流、大垣・竹島町の拓植潮音宅を訪問した。

潮音も子規門の歌人で、左千夫や真・華園とは親しかった。

潮音を含め6人で、養老に向けて出発した。

この辺りのことは左千夫の記行文『西遊日抄』に、長歌短歌を交え記されている。

以下はその一節。

 『多度山の山並み、北に漸く高く南に従いて低し。大なる鯨の臥したるを横ざまに視たらん如し。中ほどの峰少しく割り込みたるあたり、百木の霜葉やや色たちて崖の落ちたる所、岩のうす白く見ゆる辺に滝のかかれるなりという。麓の村里はおくてのの稲未だ収めず、夕煙遠く立ちこめる木立をさして、男をみなの農夫らが、物荷ない、駒ひきなどして堤帰りゆく。広く静かなる初冬の山家、なつかしさ限りなし。
 山本の里の木立の夕煙紅葉を占めし家居しぬばゆ
 この景色この歌、いとはづかし(後略)』

 これは90年余り前の大垣-養老間の風景である。

馬を引き荷物を背負い家路を急ぐ人たちが行くのは、杭瀬川堤防か、また牧田川の堤防だろうか。

現在、沿道はほとんど市街地化して、当時の面影など全く見られない。

養老公園での一行は、緑台に腰をおろし、滝を見物した。

その時、左千夫は滝に打たれている人物に気付いた。

それは当時不世出の横綱といわれた常陸山であった。

彼は早速二首の短歌を詠んでいる。

 日の下の荒雄常陸か此滝に立ちうたれし荒雄ひたちがいみじかる滝のしるしに力士の荒雄常陸が病癒きや
 常陸山は巡業の帰りにでも、何かの病気を治すため、霊験あらたかな養老の滝に打たれていたのだろうか。

左千夫の歌からは、そのように感じられる。一行は同夜、養老公園に泊まった。

 翌朝、自然がいっぱいの神さびた養老山(多度山)に別れ難い思いを込め、左千夫は長歌を詠んだ。

次はその反歌。「多度の山祗」とは、養老山に鎮まる神という意味である。

 うつみそに背くすべなみ山くだる吾を呼ばぬか多度の山祗

 左千夫は明治40年6月、再び来垣した。

この時は潮音宅に立ち寄り、一緒に岐阜・長良川での鵜飼を見物した。

ところが翌年5月にも潮音を訪問、同家に一泊している。この時は北陸線経由での来垣であった。

 左千夫に次ぎのような恋の歌がある。

萌黄さす桑の家居ははやけやし越後乙女や人待つらむか

 この「萌黄さす」恋人を訪ねて彼ははるばる彼女の実家、新潟県・柏崎在まで出かけたが会えなかった。

その帰りに潮音宅に立ち寄ったのである。以上のことを柏崎の友人岡村(モデルは潮音)家での出来事として短篇小説にまとめ、同年9月の雑誌『ホトゝギス』に発表した。
題名は『浜菊』

 『汽車がとまる。瓦斯灯に「かしはざき」と書いた仮名文字が読める。予は下車の用意を急ぐ。3、4人の駅夫が駅の名を呼ぶでもなく、ただ歩いて通る(中略)乗客は各自に車扉を開いて降りる。

日和下駄カラカラと、予の先きに3人の女客が歩きだした。男らしい客が4、5人また後から出た。

一寸時計を見ると9時20分になる。

改札口に出るまでは躊躇せずに急いで出たが、夜は意外に暗い。
バッタリと闇夜に突き当たって予は直ぐには行くべき道に践み出しかねた。』

 これが冒頭の一章である。乗客がそれぞれ扉を開いて客車から降りる辺り、鉄道の時代性が出ていて面白い。

小説では柏崎駅(北陸線)の描写となっているが、実際には大垣駅である。

予(矢代)は人力車で岡村家に行き一泊したが、冷遇された旨、小説で述べ、終わりを次のように結ぶ。

『予は柏崎停車場を離れて、殆ど獄屋を免れ出た感じがした。(中略)とにかく学生時代の友人をいつまでも旧友と信じて、漫に訪問するなどは、警戒すべきであろう。(後略)』

 この作品を読んだ共通の友人長塚節が、二人の仲を心配した。

『浜菊』を読んだ潮音は腹を立てたものの温厚な人柄だけに、事を荒立てることはせず、節あてに手紙を書いた。
左千夫に対し『今後、それとなく一切の交信音信を断つべく決心致し候』と。

 この『浜菊』事件に対し、節や鵜平は潮音に同情的だったという。

特に鵜平はわざわざ潮音を慰めに出かけたと、鵜平門の俳人高沢坡柳から聞いたことがある。

 左千夫門の歌人土屋文明によれば『左千夫は弟子の家の迷惑もかまわず泊まりありくというのも考え合わせて、拓植邸における嫌われ方も理解されないではあるまい』(『小説にはならない話23』)と記す。

ここら辺りに真相があるのではなかろうか

韓国「青菜に塩」サムスン、台湾TSMCに格差広げられる「技術蓄積で劣る」

2023-03-15 18:29:23 | 日記
韓国「青菜に塩」サムスン、台湾TSMCに格差広げられる「技術蓄積で劣る」


2023年03月15日


  • 韓国経済ニュース時評台湾経済ニュース時評
   
サムスンは、メモリー半導体で世界一だが、市況変動の激しいことが悩みの種だ。一方、市況が安定している非メモリー半導体(ファウンドリー)では、台湾TSMCという強敵が控えており、この面を強化しない限り、とても「世界一」へはほど遠い。

『中央日報』(3月14日付)は、「台湾TSMC、堅固なファウンドリー世界1位 2位サムスンとの格差さらに広がる」と題する記事を掲載した。

世界的ファウンドリー(半導体委託生産)1位の台湾TSMCと2位のサムスン電子のシェア格差が昨年10-12月期にさらに広がったことがわかった。
(1)「台湾の市場調査会社トレンドフォースが13日に明らかにしたところによると、昨年10-12月期のサムスン電子のファウンドリー売り上げは前四半期より3.5%減少した53億9100万ドルと集計された。シェアは4-6月期の16.4%から7-9月期に15.5%に下落して10-12月期に15.8%で再び小幅の反騰を見せた」

非メモリー半導体は受注生産であるので、受注契約時に価格が決定する。正常利潤を確保できるので、ビジネスとしては恵まれている。メモリー半導体は、汎用品ゆえに市況変動は当たり前の世界だ。日本が参入する「2ナノ」非メモリー半導体企業「ラピダス」は、25年に試作品、27年から量産化へ着手する。北海道で工場新設が決った。いずれ、日本が、TSMCとサムスンを追いかける立場になる。

(2)「一方、TSMCの10-12月期売り上げは199億6200万ドルで、前四半期比で売り上げが1.0%減りサムスン電子より減少幅は小さかった。シェアは7-9月期の56.1%から10-12月期に58.5%に上がった。これに伴い業界2位であるサムスンとの格差は40.6ポイントから42.7ポイントに拡大した。トレンドフォースは「10-12月期にファウンドリー業界は低調な繁忙期実績と顧客在庫調整の影響を受けたが、TSMCの競合会社の実績不振でシェアを確保できた。サムスン電子は顧客が在庫縮小に集中したため先端工程受注減少と全般的な需要萎縮を経験した」と説明した」

TSMCは、日本企業との関係を密接にしている。TSMCの研究所を筑波に設置し、多くの日本企業が参加している。TSMCは、半導体素材を日本から供給されており、製品歩留まり率は、サムスンをはるかに抜いている。この結果、収益面でもサムスンを上回る。世界の半導体は、日米台が大きな協力チームをつくる可能性が高まっている。

『中央日報』(2月21日付)は、「韓国半導体、先端技術競争力を立証してこそ1位の夢が開かれる」と題する記事を掲載した。

現在ファウンドリー産業の最強者はTSMCだ。7ナノ以下の先端工程の売上高比重が上昇するに伴い、昨年7-9月期に世界1位(売上高基準)半導体会社に君臨し、10-12月期には売上高においてサムスン電子と格差を広げた。サムスン電子とインテルの今年上半期実績不振を考慮すると今年も売上高1位はTSMCが占める可能性が高い。

(3)「サムスンファウンドリーは大規模な設備投資と研究開発(R&D)にもかかわらず、TSMCに追いつけずにいる。その格差がむしろ拡大しているため短期間に追い越すのは難しいとみられる。だが、サムスンはTSMCの市場占有率を威嚇する潜在力も十分に備えている。それを現実化するためにはいくつかの実行が必要だ」

サムスンは、TSMCに追いつけず逆に、差を広げられている。その理由は、次のパラグラフにある。
(4)「第一に重要なのは技術と収率だ。今後先端工程で持続して性能向上と安定した収率を確保するなら大規模な取引先の受注が可能だ。第二に顧客との共生だ。ファウンドリー産業は顧客であるファブレスがいなければ存在できない産業だ。顧客のオーダーメード需要を十分に満たす繊細なアプローチが必要だ。このような相手に合わせたアプローチを通じて小さなファブレス企業が大きな企業に成長する時、サムスンファウンドリーも共に成長できることになる。第三に協力会社との連帯強化による生態系の拡張だ。ファウンドリー産業はデザインハウス、設計自動化会社、後工程パッケージング会社などが共に生態系を形成する。必要なら株式投資を通じても持続可能な連帯を強化して協力レベルを高めていくことが必要だ」

ここでは、3つの理由をあげている。
1)技術と収率(歩留まり率)
2)顧客との共生
3)協力会社との連携強化
メインは、1)であろう。TSMCは、日本企業との関係強化に務めている。その点で、サムスンは長い間の日韓不和に翻弄されてきた。TSMCは、日本の素材を使い素材メーカーと密接な関係を筑波の研究所で構築している。この関係は、日本の「ラピダス」が引継ぐ。



徴用工・挺身隊訴訟日韓関係

2023-03-15 18:17:01 | 日記
2023/3/15 08:00細川 昌彦無料プラン記事
  • オピニオン
  • 正論
徴用工・挺身隊訴訟日韓関係

明星大学の細川昌彦教授

韓国政府が元徴用工訴訟問題の解決策を発表して、膠着(こうちゃく)していた日韓関係が正常化しようとしている。

米国からも両国に関係改善への強い働きかけがある。

この問題で尹錫悦政権の決断を後押しすべく、日本政府は韓国が要求する他の問題では譲歩し〝包括的解決〟に仕立てようとしている。

その結果、日本の韓国に対する輸出管理の厳格化措置では官邸主導で〝大局的見地〟から譲歩した。

もちろん大局的見地から官邸が各省に譲歩を指示することがあってもよい。

問題は譲歩の中身だ。「大局的見地」イコール「筋の通らない譲歩」ではない。
輸出管理問題での譲歩

2019年の輸出管理の厳格化措置の問題は「日本のルール重視」と「韓国の政治的面子(めんつ)」のぶつかり合いだ。

韓国が措置の撤廃を求めるのは実際上のニーズではない。

当時、「半導体供給網に大打撃」との〝空騒ぎ〟に韓国も過剰反応した。

これは輸出管理への無理解からくるもので、個別許可になっても実態上支障はないのは、台湾を見れば明らかだ。

韓国政府の解決策発表と同日、日本政府は「19年以前の状態に戻すべく関連の協議を速やかに行う」と発表した。

これはこれまで日本政府がこだわってきた「ルール」を明らかに逸脱した譲歩だ。

一つは輸出管理問題と元徴用工問題とのリンクだ。

韓国は「報復措置」だと反発していたが、日本は一貫して別問題としてきた。

しかし今回同じタイミングでの発表は誰が見てもリンクしていると見える。

岸田文雄首相の「別問題だ」とのコメントが虚(むな)しく響く。

この措置の「理由」はあくまで韓国に輸出管理上の問題があったからだ。

ずさんな管理の取引が頻発する不適切な事案もあり、第三国への横流しの懸念もあった。

また簡略な手続きを認める「Aグループ」の国(旧ホワイト国)とは緊密な意見交換が不可欠だが、韓国は対話に応じていなかった。

本来、元徴用工問題とは関係なく、韓国が実務的に是正さえすれば、解決するのは時間の問題だった。

なお米中対立の中で焦点になっている半導体関連で中国への横流しも懸念される。米国にとっても韓国の輸出管理は重要だ。

二つ目は「協議を行う」としたことだ。

輸出管理は国際的に各国が主体的に決めるもので、相手国との交渉を意味する「協議」にはなじまない。

従ってこれまで一貫して日本政府は「対話」という表現にこだわってきたが、今回の発表では韓国に譲歩した。

「歩み寄り」の演出に腐心

ところが翌日の記者会見では西村康稔経済産業相は軌道修正した。

「輸出管理の見直しは、他国と協議を行う対象ではない。対話で韓国の輸出管理の実効性を見極め、日本として判断をしていく」

国際ルールから当然だ。

しかし、解除ありきで対話での確認を形だけで済ませて言い逃れすることがあってはならない。

それでは実質的に譲歩も同然だ。

これらは19年の日韓首脳会談でも対立点だった。

当時の安倍晋三首相は「輸出管理当局同士の対話で問題が解決されるよう期待する」と明確に発言している。

一方、韓国が〝歩み寄り〟と見せるのに腐心していることも要注意だ。

一つは日韓の防衛機密を共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の〝正常化〟だ。

これは韓国の「独り相撲」だ。

前政権が日本の輸出管理措置への報復として協定破棄を日本に通告した。

しかし米国の圧力で破棄手続きを〝凍結〟し、現在も情報交換は行われている。

筋違いのGSOMIAの〝正常化〟は、決して韓国の歩み寄りではない。

二つ目に世界貿易機関(WTO)への提訴の〝中断〟だ。

当時、前政権は無理筋を承知で、国内世論にアピールすべくWTO提訴を行った。

この措置がWTO違反になるならば、各国が実施している輸出管理も違反になってしまう。いわば「言いがかり」だ。

しかも今回の発表ではWTO提訴の「中断」であって「取り下げ」ではない。韓国は政治的面子から拳を振り上げたままなのだ。

「ルール重視」こそ対韓の軸

譲れないものを明確にした「軸」が外交には必要だ。

それがなければ「無原則の譲歩」になる。

日本外交のよって立つ「ルール重視」の軸をぶれさせるべきではない。

反日と嫌韓という感情論が交錯する日韓関係だけに重要だ。

かつて慰安婦問題を巡る日韓合意は反故(ほご)にされた。

将来、韓国の政権が代われば手のひら返しのリスクが付きまとう。

だからこそ日本は政権が代わっても堅持することが重要なのだ。

元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとして「国際約束の遵守(じゅんしゅ)」という譲れない一線を明確にして守った。

輸出管理問題もあくまでもルールにこだわるべきだ。

尹大統領が訪日して日韓首脳会談が行われる。

対中国、対北朝鮮からも日米韓の連携は不可欠だ。そうした「大局的見地」はもちろん重要だが、目先の関係改善を急ぐあまり軸を見失って、譲歩の言い逃れに終始してはならない。

(ほそかわ まさひこ)


全土で抗議デモ、富裕層はシンガポールへ移住…嫌われる中国共産党の統治スタイルに逆行する動きが

2023-03-15 18:01:16 | 日記
全土で抗議デモ、富裕層はシンガポールへ移住…嫌われる中国共産党の統治スタイルに逆行する動きが

国際 中国
2023年03月15日

習近平国家主席

 中国の全国人民代表大会(全人代)が3月5日から13日にかけて開催された。


 全人代は中国の国会に相当する機関にあたり、年に1度、3月に北京の人民大会堂で開催される。

代表は約3000人で、任期は5年。

今後1年間の政治・経済を始めとする各分野の政策運営方針を審議し、国防費を含む予算案を承認する。

 会議の冒頭、自身として最後の政治活動報告を読み上げた李克強首相は、今年の経済成長目標を昨年の「5.5%前後」を下回る「5%前後」に設定した。

 目標の数字が数十年ぶりの低さだったことで、市場関係者の期待(ゼロコロナ政策の解除による中国経済のV字回復)は冷や水を浴びせられた形だ。

課税強化への警戒感

 李氏が演説の中で「安定」との言葉を33回述べたことにも注目が集まっている(3月6日付日本経済新聞)。

習近平指導部の発足後で最も多かったからだ。

 中国経済の回復を妨げる様々な構造的な課題があることが関係している。

(1)不動産市場の不調
(2)コロナ禍で冷え込んだ消費
(3)地方政府の財政難など

一筋縄ではいかない問題が山積みだが、李氏の口からは構造改革についての具体的な言及がなかった。

 全人代では今後の経済政策を司る高官が相次いで習近平国家主席に忠誠を誓った。

 李克強氏のような専門家に代わって李強氏のような習氏に忠実な人物、いわゆる「イエスマン」が経済政策の舵取りを担うようになれば、

痛みを伴う経済改革を断行する可能性はゼロになったと言っても過言ではない。

 むしろ「経済分野への介入がさらに強まるのではないか」との懸念も生じている。

 習近平国家主席は6日「民間企業は国有企業とともに『共同富裕』の実現を目指して責任を負い、豊かで愛情深くあるべきだ」と述べた。

民間企業の間では「共同富裕の名の下に事実上の課税強化が進められるのではないか」との警戒感が生まれている。

 中央金融工作委員会(共産党指導部直下に設置)を20年ぶりに復活させ、金融セクターの監視を強化することも既定路線となっている(3月2日付ブルームバーグ)。

 心配なのは経済政策だけではない。

地方分権的全体主義の負の側面

 中国共産党の統治のあり方そのものにも疑念が生じている。

 米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国の統治制度を「地方分権的全体主義」と定義している
(1月27日付日本経済新聞)。

 中国共産党は1950年代初期、政治・経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義の制度をソ連(当時)から導入したが、50年代半ば以降、「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、その制度を改めた。

 個人崇拝などで最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政の立案・運営の権限のほとんどを最高指導者が任命する地方の指導者に与えるものだ。

これにより、中国共産党はソ連より強固な一極集中の体制をつくり上げることに成功した。

 この制度の下、地方の指導者は最高指導者の意向に沿った取り組みを競い、切磋琢磨してその実現に邁進した。

 大躍進や文化大革命という悲劇の原因になった一方で、改革開放という華々しい成功事例も生まれた。

地方政府間の激しい競争が民間セクターの発展を可能にし、政治改革を伴わずに中国は高度成長を長年にわたり享受することができたからだ。

 だが、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題をもたらし、今や負の側面の方が大きくなっている。

政府に失望する富裕層

 半世紀以上にわたり続いた地方分権的全体主義が限界に達しつつある中、習氏はさらに事態を悪化させる方向に舵を切るようだ。

 中国政治を長年研究してきたテイー・クォ・ブルネル大学ビジネススクール上級講師 らは
「習氏はソ連型の全体主義を復活させようとしており、支配を正当化するための経済発展すら放棄しつつある」と警鐘を鳴らしている(2月16日付ニューズウィーク)。

 そのせいだろうか、習氏に対する信頼の失墜が進んでおり、金融と貿易の中心である上海でこの傾向が特に顕著だ(3月1日付ブルームバーグ)。

上海市民は匿名を条件にしながらも、習氏と新たな右腕となる李強氏に対して不信感を露わにしている。

 米国の人権監視団体フリーダムハウスによれば、昨年第4四半期に中国のほぼ全ての地域で抗議デモがあった。

政府への抗議を示す国民の行動が大胆になっていることの表れだ。

 政府に失望した富裕層はシンガポールへの移住を加速させている。

「一党支配を強いる代わりに、市民の経済的な繁栄を実現する有能な統治を約束する」という、中国共産党の正当性を支える社会契約が急速に失効しつつあるように思える。

「寝そべり幹部」の増殖

 共産党内における習氏の基盤は盤石 に見えるが、「寝そべり幹部が増殖している」との指摘がある(2月8日付ニュースソクラ)。

政府の各部門の幹部たちは1960年代の生まれがほとんどで、毛沢東時代の個人崇拝を毛嫌いしている。

このため、毛氏のやり方を強引に踏襲しようとしている習氏に対し、幹部の多くは面従腹背に徹し、実質的には何もしない「寝そべり」族になっているわけだ。

 香港の各種メデイアによれば、香港特別行政府が深刻な人材不足に陥っている。

 中国共産党の統治スタイルが嫌われ、海外に移住する公務員が後を絶たない。

香港政府は海外人材の獲得に躍起だが、人材難は当分解消しない見通しだという。

 慣れ親しんできた統治制度を抜本的に見直すことは困難だ。

だが、そうしない限り、中国の体制の危機が一気に進んでしまうのではないだろうか。

藤和彦

経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部



アメリカで“銃から遠い”アジア系の銃所持率が急増 背景には“不安”「自分以外は信用できない」

2023-03-15 17:20:12 | 日記
アメリカで“銃から遠い”アジア系の銃所持率が急増 背景には“不安”「自分以外は信用できない」

【現場から】

3/15(水) 13:08配信

TBS NEWS DIG Powered by JNN

銃社会アメリカでアジア系の住民は人種別の銃所持率が低かったんですが、最近、銃を持つ人が急増しています。

意識の変化の背景には解消できない「不安」がありました。

 アメリカ西部・ロサンゼルス近郊の射撃場。 

銃に慣れるための授業が行われていますが、参加しているのはほとんどがアジア系です。

ここでは受講者に占めるアジア系の割合が増え、その大半が一度も銃を触ったことがない人だったといいます。

 射撃場インストラクター トム・ニュエンさん 
「アジア系は街で安全だとは感じていません。“恐怖”を感じています」
 もともと銃所持率が低いアジア系は「銃から遠い」人種でしたが、所持率は2020年に半年で42%も急増。新型コロナの拡大に伴い、激化したアジア系へのヘイトクライムを背景とする「不安」が大きな要因として指摘されています。
 ベトナム系のIT技術者エディ・ドウさん(34)もそのひとり。
3年前、初めて拳銃を購入し、ときおり練習に通っています。 
エディ・ドウさん 
「パンデミックでロックダウンになった時、何かが起きる前に家族を守ろうと思い、銃を買いました」 

こうした中、

1月にはアジア系が多く住むロサンゼルス近郊の街で銃乱射事件が起き、旧正月を祝うイベントに参加していた11人が殺害されました。

 記者 「事件から2か月が経過しようとしていますが、現場近くの市役所には11人の犠牲者を追悼する場所が設けられています」 

住民の65%をアジア系が占め、治安が良いと言われた街で事件の衝撃はいまだに残っています。

 事件現場付近の住民 
「ここは本当に平和で、高齢者も安心して出歩けたのに」 
「おじいさんを見ても銃を持っているのではと思うようになってしまいました」
 住民の銃に対する意識にも変化が…。

 銃規制が厳しいカリフォルニア州では特別な許可がない限り、銃を持ち歩くことができませんが、現場近くの銃販売店では事件前には全くなかったこの許可に関する問い合わせが急増。

アジア系を中心に毎月60件以上も受け付けていると言います。

 銃販売店オーナー デイビッド・リューさん 
「中国系の人々は銃を怖がっています。そんな人たちでさえ、銃を持ち歩きたいと思うようになった、何かがおかしいです」 

バイデン大統領は日本時間けさ、現場近くを訪れて演説し、殺傷能力の高い銃の規制を強化し、「安心できる社会のために力を尽くす」と訴えました。

 一方で、3年前に初めて銃を買ったエディさんは不安が解消できず、銃を3丁まで増やしました。

 3年前に初めて銃購入 エディ・ドウさん 「誰かが銃を持っていて、私が持っていないければ不利になります。自分以外は信用できませんから」

 アジア系住民にも広がる銃。今年アメリカで死傷者が4人以上出た銃撃事件は110件で、2018年以降、最多のペースで発生しています。

TBSテレビ