韓国、なぜ反日から日本人ウェルカムに大転換?「ノー・ジャパン」を諦めた経済的な理由=勝又壽良
2023年2月9日ニュース出生率低下に矛楯噴出
韓国は、「国が消える」という切羽詰まった事態に遭遇している。
合計特殊出生率が、史上最低の「0.81」(2021年)に落ち込んでいるからだ。
この危機的な状況下にありながら、文政権は何らの手も打たずに傍観していた。
この危機的な状況下にありながら、文政権は何らの手も打たずに傍観していた。
それよりも、南北接近に政治的な情熱を傾けていたのだ。
こういう異常な出生減状況を打破するには、年功序列賃金の是正が大きなテコになるであろう。
それは、年功序列賃金の是正によって転職市場が広がることである。
それは、年功序列賃金の是正によって転職市場が広がることである。
自由に転職できる環境ができれば、「自営業」という不安定な状況から抜け出して、「雇用者」という身分が保証される場所を得られるからだ。
韓国の自営業者比率は、24.64%(2019年)である。
GDP世界10位の韓国には、似つかわしくない不釣り合いなデータである。
年功序列賃金のもたらす歪みが、こういう形で噴出していると見るほかない。
就業構造の前近代性をものの見事に現しているデータと言うべきだ。
年功序列賃金制が崩れれば、終身雇用制も意味をなさなくなる。
年功序列賃金制が崩れれば、終身雇用制も意味をなさなくなる。
新入社員と退職直前社員との給料差が、EUのように1.65倍程度に縮小されれば、1つの企業に「粘っている」こともなくなろう。
自分の適職を求めて移動を始める。それが、韓国の雇用構造を変えるのだ。
同時に、若い時代に「貧乏生活」を余儀なくされるケースも減って、結婚・出産がより可能になるであろう。
同時に、若い時代に「貧乏生活」を余儀なくされるケースも減って、結婚・出産がより可能になるであろう。
就職して、従来よりも高い給与が得られれば、親が学費の面倒を見る必要も減る。
学生ローンを就職後に払える余裕が生まれるからだ。
年功序列賃金制の見直しは、従来の桎梏を解きほぐす有力な手段になる。
年功序列賃金制の見直しは、従来の桎梏を解きほぐす有力な手段になる。
本人はもちろんのこと、親も経済的に助かるはずだ。
韓国では、老後資金の蓄えがほとんどない層が増えている。
韓国では、老後資金の蓄えがほとんどない層が増えている。
子どもの教育費や結婚資金に使い果たしたのが理由である。
韓国労組は、年功序列賃金制の見直しに強力なストライキを構えて対抗するであろう。
韓国労組は、年功序列賃金制の見直しに強力なストライキを構えて対抗するであろう。
既得権益を守る立場からだ。
企業が、この反対運動に屈して従来の路線を踏襲すれば、韓国の未来はゼロになろう。
韓国は2019年夏に「ノー・ジャパン」の狼煙を上げて反日不買運動を大々的に行なった。
その韓国が、今や様変りである。
各自治体が続々と日本に向かっている。
韓国の観光名所を広報し、投資誘致に乗り出しているからだ。
その背景には、韓国経済を支える「輸出」の異変がある。(『 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)
(『 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)
【関連】韓国、世界一の「借金癖」で3回目の通貨危機へ。救済されてもまた繰り返す=勝又壽良
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2023年2月6日号の一部抜粋です。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
「ノー・ジャパン」から大転換?
韓国が、2019年夏に「ノー・ジャパン」の狼煙を上げて反日不買運動を大々的に行なった。
ソウルのメインストリートには一時、「ノー・ジャパン」
「ノー・安倍」という幟が立てられる騒ぎまでに発展。
文在寅大統領(当時)は、「二度と日本に負けない」と感情むき出しの発言をするほどエスカレートした。
その韓国が、今や様変りである。
各自治体が続々と日本に向かっている。韓国の観光名所を広報し、投資誘致に乗り出しているからだ。
昨年10月、東京で開かれたクルーズ・ポートセールスでは、世界18カ国の船会社やクルーズ旅行会社などが参加した行事では、韓国からも多くの自治体が参加した。
釜山市、仁川市、済州島(チェジュド)、忠南(チュンナム)、瑞山市(ソサンシ)などだ。
韓国の自治体は、観光名所や祭りなどを紹介した。
反日からウェルカムへ……その背景は?
韓国の自治体が、ここまで「反日の旗」を降ろした裏には、韓国経済の落ち込みがある。
もはや「ノー・ジャパン」とは言っていられないほど、内需の低迷が明らかである。
IMF(国際通貨基金)による23年韓国経済見通しが、3回も連続下方修正されるなど悪化している点に窺えるのだ。
IMFは1月31日、今年の世界主要国の経済成長率の予測値を上方修正した。
だが、韓国経済の成長率は、昨年7月、昨年10月、今年1月と予測値を発表するたびに引き下げている。
つまり、2.1%→2.0%→1.7%である。
これに対して、主要国では次の通り上方修正されている。
米国(1%→1.4%)、中国(4.4%→5.2%)、ドイツ(マイナス0.7%→0.1%)、日本(1.6→1.8%)など、相次いで上方修正された。
これらに比べても、韓国の連続引き下げは「重症」と見るべきであろう。
このIMFの予測の中で、最もショックなのは韓国が、日本の予測値を下回ったことである。
IMFの予測が現実となれば、日本と韓国の成長率が通貨危機(1998年)以来25年ぶりに逆転する。
過去65年間で韓国の成長率が日本より低かったのは、1980年のオイルショックと1998年の通貨危機だけだった。
日本が長い間、低成長経済を経験しているが、韓国はそれよりも低い成長率を記録するとなれば、並大抵の危機ではないという認識をしているのである。
潜在的な経済成長率を示唆する「生産年齢人口比率」(2021年)は、日本(58.44%)、韓国(71.46%)である。
韓国は、日本を13ポイントも上回っている。
それにも関わらず、23年のGDP成長率が逆転すれば、韓国経済に「異常事態」が起こっていると疑って見ることが正しいはずだ。
GDPは輸出が支える
韓国の人口は、5,174万人(2021年)である。
世界28位の人口規模で、実質GDPは10位(2021年)という高ランクに位置している。
これは、輸出で経済規模を嵩上げしてきたことを示唆する。
事実、韓国輸出の対GDP比は、36.14%(2021年)と高く日本15.13%(2021年)を大幅に上回っている。
韓国は、輸出で稼ぎGDPを押し上げているのだ。
輸出で稼げなければ、韓国がGDP世界10位に止まれないことを覗わせている。
問題は今、この輸出で急変が起こっているのだ。
韓国の輸出先1位は中国である。
これまで、中国の輸出が伸びれば、韓国の対中輸出も伸びる関係にあった。
韓国の対中輸出の9割が、中間財であることで、その関係性を示している。
ところが、中国は2015年に発表した「中国製造2025」で、大規模な輸入代替策に転換した。
つまり、中国製造業の自給率向上によって、海外からの輸入を国内生産で賄う「輸入代替」で、中間財輸入を減らしているのだ。
韓国は、この事態の急変に気づかなかったもの。
これまで、中国のGDPが1%ポイント伸びれば、韓国のGDPも0.5%ポイントの増加と見込まれていた。
最近では、韓国は0.2%ポイントへと低下していることが分かってきた。
0.12%ポイントという厳しい試算も出ているほどだ。
中国に代わる市場を探す必要
韓国は、こういう局面転換を迎えて大慌てしている。
中国に代わる市場を探さねばならなくなっているのである。
韓国が2022年、最も多くの貿易黒字をあげた国はベトナムだ。
最大の貿易相手国である中国は、黒字の規模で22位にまで低下した。
中国が、2018年時点で韓国にとって黒字1位であったことを考えると深刻な事態だ。
ベトナムの人口は、9,747万人(2021年)である。
中国河南省に匹敵する人口のベトナムが、14億人規模の全中国をカバーできるはずもない。
韓国が、短期的に「ネクスト・チャイナ」を構築することは極めて難しい問題である。
今回韓国では、「輸出不振を克服するために根本的な変化が必要」と強調するものの、具体的な代案がないのだ。
韓国は最近、アラブ諸国で大口の輸出商談をまとめている。
だが、中国の穴をカバーするまでにはなっていない。
中国の人口高齢化に備えて、高齢者サービス市場へ積極的に進出しなければならない、という提言も出ている。
この面では、日本が中国ではるかに先行しているのだ。
韓国経済のガンは年功序列賃金制
韓国は、輸出に支えられた経済である。
全輸出の25%も占めていた中国に異変が起これば、当面は内需でカバーするほかない。
内需の柱と言えば個人消費(民間最終消費支出)である。
その名目個人消費の対GDP比が46.14%(2021年)と5割に達していないのだ。
日本は53.83%(同)、米国68.21%(同)である。
ついでに、中国を見ると38.37%(同)である。
これは、絶望的なほど低い状態に放置されている。
総資本形成(インフラ投資・民間住宅投資・民間設備投資)が、経済を牽引する発展途上国型経済であり、「未富先老」を地で行っている形だ。
個人消費の対GDP比の多寡は、その国の活力の原点を見せつけている。
米国が7割近い個人消費比率に達しているのは、国内の規制を取り払っている結果であろう。
その点で、日本はまだまだ改善の余地がある。
労働市場の流動化を促進するべく、年功序列賃金と終身雇用制の徹底した見直しが必要だ。
韓国の場合は、日本以上に遅れている。労組の強い抵抗で年功序列賃金の手直しがまったく手つかずの状況にある。
韓国ユン政権は、こうした異常事態にメスを入れようとしている。
年功序列賃金を改めて、職務・成果中心の体系に切り替えるというもの。
韓国では初めての試みだ。
これによって、労働市場二重構造の改善を目指すとしている。
4月に賃金制度の改善企業支援策を発表し、9月には職務・成果中心の賃金体系定着のロードマップを示す計画だ。
韓国大企業で勤続年数30年目の社員は、新入社員に比べて2.87倍の賃金を受け取っている。
日本の場合は2.27倍、EU(欧州連合)では1.65倍に過ぎないという。
日本は、韓国とEUの中間に位置しているが、出生率引き上げにはEU並みのなだらかな賃金上昇カーブに均すことが必要である。
韓国の問題は、日本にも通じる側面があるのだ。
49歳での「早期リタイア」が増加?
韓国企業では、年功賃金制による賃金コストの上昇回避目的で、生産性が劣る中高年労働者を減らそうとしている。
その結果、40代後半~50代前半の年齢で、早期退職が日常化している。平均退職年齢が、49歳という「早期リタイア」になっているのだ。
強力な労組のため人員削減が難しい大企業や公企業では、代替案として青壮年の新規採用を減らすので企業組織が老化する事態を招いている。
このように、長い目で見れば企業や労働者の双方に利益にならない年功序列賃金が、労組による既得権益主義の反対で手つかずにきたのだ。
政府委員会は、賃金体系を職務・成果給制へ変えた企業に対し、税制上のインセンティブを与えるという。
一方、年功序列賃金を固守する企業には、税制上の不利益を与えることを検討する。
企業は、法人税の優遇措置が受けられるかどうかという選択を迫られよう。
若者世代は、圧倒的に「生産性に見合った賃金」を要望している。
韓国も、ようやくその方向へ動き出すのかどうか。分岐点に来ている。
出生率低下に矛楯噴出
韓国は、「国が消える」という切羽詰まった事態に遭遇している。
合計特殊出生率が、史上最低の「0.81」(2021年)に落ち込んでいるからだ。
この危機的な状況下にありながら、文政権は何らの手も打たずに傍観していた。
それよりも、南北接近に政治的な情熱を傾けていたのだ。
こういう異常な出生減状況を打破するには、年功序列賃金の是正が大きなテコになるであろう。
それは、年功序列賃金の是正によって転職市場が広がることである。
自由に転職できる環境ができれば、「自営業」という不安定な状況から抜け出して、「雇用者」という身分が保証される場所を得られるからだ。
韓国の自営業者比率は、24.64%(2019年)である。
GDP世界10位の韓国には、似つかわしくない不釣り合いなデータである。
年功序列賃金のもたらす歪みが、こういう形で噴出していると見るほかない。
就業構造の前近代性をものの見事に現しているデータと言うべきだ。
年功序列賃金制が崩れれば、終身雇用制も意味をなさなくなる。
新入社員と退職直前社員との給料差が、EUのように1.65倍程度に縮小されれば、1つの企業に「粘っている」こともなくなろう。
自分の適職を求めて移動を始める。それが、韓国の雇用構造を変えるのだ。
同時に、若い時代に「貧乏生活」を余儀なくされるケースも減って、結婚・出産がより可能になるであろう。
就職して、従来よりも高い給与が得られれば、親が学費の面倒を見る必要も減る。学生ローンを就職後に払える余裕が生まれるからだ。
年功序列賃金制の見直しは、従来の桎梏を解きほぐす有力な手段になる。
本人はもちろんのこと、親も経済的に助かるはずだ。
韓国では、老後資金の蓄えがほとんどない層が増えている。子どもの教育費や結婚資金に使い果たしたのが理由である。
韓国労組は、年功序列賃金制の見直しに強力なストライキを構えて対抗するであろう。
既得権益を守る立場からだ。企業が、この反対運動に屈して従来の路線を踏襲すれば、韓国の未来はゼロになろう。