韓国メディアが喧伝する素材や部品の日本依存度の低下、その単純なカラクリ
羽田 真代
(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
韓国の聯合ニュースに、「上半期“素部装”輸入の日本依存度15.4% 歴代最低を記録(2022.07.20)」という記事が出た。
“素部装”とは、素材・部品・装備の略語だ。
2019年以降、日本が韓国に対して行った輸出管理の厳格化の影響で、韓国の日本輸入依存度は下降傾向が続き、今年の上半期は10年前(24.2%)と比べると8.8ポイントも低くなったという。
韓国・産業通商資源部の素材・部品・装備総合ポータル「素材・部品・装備ネット」によると、今年上半期の素材・部品・装備輸入額(HSコード基準)1300億6700万ドルのうち、日本輸入額は200億7200万ドルで15.4%を記録したそうだ。
これは統計が始まった2012年以降、半期基準で最低値である。
韓国メディアは相も変わらず、「日本に依存しなくても我々はやっていけるんだ」と国内外にアピールする記事を出しているが、全くそんなことはない。
確かに、輸入額に占める日本の割合を見れば下降傾向にある。だが、輸入額ではどうだろうか。
日本からの場合、2022年の輸入額は220.7億ドルと、2018年の119.8億ドルよりも増えている。
世界全体で見れば、2022年が1300.7億ドルと、2018年の1062.5億ドルよりも238.2億ドルも増加した。
聯合ニュースは「日本輸入依存度が過去最低だ」と主張し、同じ内容を報じた世界経済に至っては「日本政府の輸出規制措置が断行されてから3年間、輸入先の多角化と素材・部品・装備の国産化などを推進したことによる結果が実った」と分析している。
しかし、実際には全体の輸入金額が上がったため、その中に占める日本のパーセンテージが低下したにすぎない。
これで日本から依存脱却したと言えるだろうか。
せめて、対日輸入額を減少させてから主張してほしいものだ。
国産化を叫ぶ一方で輸出管理の撤廃を求める韓国
2022年7月18日から2泊3日で日本を訪問していた韓国の朴振(パク・ジン)外相が帰国した。
ソウルの金浦空港で記者たちに囲まれた彼は、日本との対話内容についてざっくりと語った。
その中に、「日本とのシャトル外交を続け、韓日軍事情報保護協定の正常化、輸出規制問題を総合的に判断して協議することにした」という言葉があった。
さらに、記者からの「日本の韓国輸出規制撤回が年内に可能だと考えているか」という質問に対しては、
「(撤回の)時点を定めたわけではない」
「日本財界関係者との面談でも輸出規制が結局は双方にとって損害であり、グローバルサプライチェーンが急激に変わる時代に両国が効果的に対応するためには輸出規制の解除が必要だと議論した」
と答えた。
文在寅(ムン・ジェイン)政権の頃から、韓国は
「素部装の国産化に成功した」
「今後は日本に頼らなくても韓国産で対応できる」
「日本の輸出管理規制は意味のないものだった」
と公言してきた。
だが、これら発言は韓国の誇張にすぎない。日本に依存する必要がないのなら、この5年間で輸入額は減少していなければならないはずだ。
韓国側が輸出管理の撤廃を求める必要だってない。
もちろん、韓国では国産化を目指す動きが高まっている。
(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
韓国の聯合ニュースに、「上半期“素部装”輸入の日本依存度15.4% 歴代最低を記録(2022.07.20)」という記事が出た。“素部装”とは、素材・部品・装備の略語だ。
2019年以降、日本が韓国に対して行った輸出管理の厳格化の影響で、韓国の日本輸入依存度は下降傾向が続き、今年の上半期は10年前(24.2%)と比べると8.8ポイントも低くなったという。
韓国・産業通商資源部の素材・部品・装備総合ポータル「素材・部品・装備ネット」によると、今年上半期の素材・部品・装備輸入額(HSコード基準)1300億6700万ドルのうち、日本輸入額は200億7200万ドルで15.4%を記録したそうだ。これは統計が始まった2012年以降、半期基準で最低値である。
韓国メディアは相も変わらず、「日本に依存しなくても我々はやっていけるんだ」と国内外にアピールする記事を出しているが、全くそんなことはない。数字を見れば歴代最低値のカラクリがすぐにわかる。
確かに、輸入額に占める日本の割合を見れば下降傾向にある。だが、輸入額ではどうだろうか。
日本からの場合、2022年の輸入額は220.7億ドルと、2018年の119.8億ドルよりも増えている。世界全体で見れば、2022年が1300.7億ドルと、2018年の1062.5億ドルよりも238.2億ドルも増加した。
聯合ニュースは「日本輸入依存度が過去最低だ」と主張し、同じ内容を報じた世界経済に至っては「日本政府の輸出規制措置が断行されてから3年間、輸入先の多角化と素材・部品・装備の国産化などを推進したことによる結果が実った」と分析している。
しかし、実際には全体の輸入金額が上がったため、その中に占める日本のパーセンテージが低下したにすぎない。これで日本から依存脱却したと言えるだろうか。せめて、対日輸入額を減少させてから主張してほしいものだ。
国産化を叫ぶ一方で輸出管理の撤廃を求める韓国
2022年7月18日から2泊3日で日本を訪問していた韓国の朴振(パク・ジン)外相が帰国した。
ソウルの金浦空港で記者たちに囲まれた彼は、日本との対話内容についてざっくりと語った。その中に、「日本とのシャトル外交を続け、韓日軍事情報保護協定の正常化、輸出規制問題を総合的に判断して協議することにした」という言葉があった。
さらに、記者からの「日本の韓国輸出規制撤回が年内に可能だと考えているか」という質問に対しては、
「(撤回の)時点を定めたわけではない」
「日本財界関係者との面談でも輸出規制が結局は双方にとって損害であり、グローバルサプライチェーンが急激に変わる時代に両国が効果的に対応するためには輸出規制の解除が必要だと議論した」と答えた。
文在寅(ムン・ジェイン)政権の頃から、韓国は
「素部装の国産化に成功した」
「今後は日本に頼らなくても韓国産で対応できる」
「日本の輸出管理規制は意味のないものだった」
と公言してきた。
だが、これら発言は韓国の誇張にすぎない。
日本に依存する必要がないのなら、この5年間で輸入額は減少していなければならないはずだ。
韓国側が輸出管理の撤廃を求める必要だってない。
もちろん、韓国では国産化を目指す動きが高まっている。
2022年7月21日付けの電子新聞にも、「政府が2030年システム半導体市場占有率10%、素部装自立化率50%達成などを通じて、半導体超強大国に跳躍するための青写真を描いた」とあるくらい、政府が主導となって力を入れている。
5年間で340兆ウォン(約35.7兆円)以上の投資をする予定だそうだ。
台湾TSMCの後塵を拝するサムスン電子
世界全体が半導体を欲している現状を考えれば、政府主導で半導体超強大国を目指す方向性は間違っていない。
サムスン電子は今後20年間にわたり、約2000億ドル(約27兆4000億円)もの大金を投じて米国テキサス州テイラー郡に11の半導体工場を新設する計画だ。
現在、同社は税制優遇措置の手続きを進めている。
一方で、台湾積体電路製造(TSMC)の勢いが止まらない。
同社の製品は、サムスン電子よりも歩留まり(良品率)が良いと評判で、ここ数年シェアを拡大している。
同社もまた、米国アリゾナ州フェニックス市に5ナノメートル製造プロセス工場を建設中で、こちらは2024年の量産開始を目指している。
サムスン電子は米国市場において、TSMCに後れを取る格好だ。
世界時価総額ランキング(2022年6月時点)で、サムスン電子は25位だった。前月は17位だったから8位分転落したことになる。ちなみに、TSMCは12位(前月9位)で、 日本のトップはトヨタ自動車で40位だった。
こちらはよく知られた話だが、韓国GDP(国内総生産)の約14%はサムスンが占めている。
そのため、国家の稼ぎ頭が失速すれば、韓国経済全体が失速することになる。だから、韓国にとって半導体は国の存続に欠かせない産業なのだ。
日本に負けたくないという一心で、韓国メディアが「日本依存度が歴代最低を記録した。
日本に依存しなくても我々はやっていける」と報じる。
その一方で、韓国政府は輸出管理の撤廃を求め、今後も日本と積極的に貿易をしたいと言う。なんともバランスが取れていない。
今回の外相来日で繰り広げた下手な外交
そもそも、韓国メディアのデータ分析はめちゃくちゃだし、韓国政府は今回の来日で、日韓秘密軍事情報保護協定の正常化をダシに輸出管理の撤廃を求めるという下手な外交を繰り広げた。
これで日本を言い負かすことができる、日本は条件を飲むだろう、と考える韓国の対日姿勢はまだまだ甘い。
2022年の下半期や、2023年の上半期の日本依存度はどのように変化するだろうか。世界的に半導体需要は高まっているから、韓国の輸入額は増加して日本比重は下がるかもしれない。
そうなればまた「日本依存度が最低を記録した」とメディアは騒ぐのだろう。だが、一方で韓国政府は輸出管理の撤廃を求める……。
いつまでも進展しない両国関係がこの先も続く気がしてならない。