コラム:韓国ウォン急落シナリオの現実味=村田雅志氏
韓国の外貨準備の多くが流動性の低い証券で運用されている点も、ウォンの脆弱性を高めている。
通常、外貨準備は緊急時に備えて米国債といった流動性が高いもので運用される。
たとえば、日本の場合は、外貨準備(約1.27兆ドル)のうち1.18兆ドル程度が米国債であると言われている。
一方、韓国中銀の年次報告(2011年版)によると、韓国の外貨準備のうち流動性資金と分類される資産は全体の4.5%に過ぎず、残りは収益性資産が79.7%、委託資産が15.8%となっている。
商品別に見ると韓国の外貨準備のうち預金に分類される資産は全体の6.6%、政府債は36.8%となっており、政府機関債、社債、資産担保証券(ABS)、株式といった流動性の低い資産が外貨準備の過半を占めている。
韓国の外貨準備は3234.6億ドルと世界第7位の規模に達しているが、流動性危機が生じた際に転用できる外貨準備はせいぜい4割程度と考えられ、ウォン売りの流れを食い止めるには十分とはいえない。
ユーロ圏ではギリシャ、スペインを中心とした債務問題に加え、これまで底堅く推移してきたドイツも含め景気悪化懸念が強まりつつある。
米国では、いわゆる「財政の崖」問題をめぐりオバマ大統領と議会との交渉が難航するとの見通しが強まっている。
これを受けてムーディーズは、連邦債務の中期的な安定・削減策で政策当局者が合意できなければ、最上位の「Aaa」としている米国債の格付けを1段階引き下げる可能性もあると警告した。
今後、市場のリスク回避姿勢がさらに強まる可能性も否定できず、これまで底堅く推移してきたウォンが急落するシナリオが現実味を帯びてきたように思える。
*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
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