平成太平記

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韓国史上最大「経常収支黒字」のカラクリと“中進国の罠”から抜け出せない現実

2015年08月07日 14時11分54秒 | Weblog

韓国史上最大「経常収支黒字」のカラクリと“中進国の罠”から抜け出せない現実 

2015.08.07

韓国銀行によると、2015年6月の韓国の経常収支が122億9000万ドル(約1兆5291億円)の黒字となり、上半期の黒字額総計が史上初めて500億ドル(約6兆2210億円)を突破したとのことである。

以前の韓国であれば、「わが国の経常収支が史上最大の黒字を記録した!」などと、報道で騒ぎ立てていたところだ。

最近の韓国の経済関連の報道は、随分と冷静になっている。経常収支の黒字が最大になったことを受け、「なぜ、黒字が膨らんだのか」についても、冷静な記事が書かれるようになったのだ。

実は、韓国の上半期の経常収支黒字が膨らんだのは、輸出の増加ではなく「輸入の減少」によるものなのである。

経常収支とは、「貿易収支」「サービス収支」「所得収支」「経常移転収支」の4収支からなる。

韓国の経常収支に最も影響を与えるのは貿易収支だ。

貿易収支は「財の輸出」から「財の輸入」を引いて計算される。

輸出が伸び悩んだとしても、輸入が激減すれば、貿易収支や経常収支の黒字は拡大する。

現在の韓国の財の輸出は、伸び悩みどころか減少している。

韓国の7月の輸出額は、前年同月比3・3%減少となった。

これで、7カ月連続のマイナスである。

ところが、輸入の方は2ケタを超える減少になっているのだ。

通関基準で見た韓国の6月の輸入は前年比13・6%減少。

さらに、7月は15・3%の減少である。

輸出が減ったにも関わらず、それ以上に輸入が減少し、貿易収支、経常収支の黒字が拡大する。

まさに、典型的な「不況型経常収支黒字の拡大」である。

韓国の輸入が大幅に減少した理由は、内需の不振だ。

MERS(マーズ=中東呼吸症候群)問題などの影響で、韓国の内需は消費を中心に縮小が継続している。

結果的に、外国からの輸入が減り、経常収支黒字が上半期としては史上最大になったわけである。

加えて、世界的な需要縮小を受け、製造業の設備投資も鈍っている。

特に、最大の貿易相手国である中国の輸入縮小は、韓国経済を直撃する。

15年1月-5月の中国の輸入額は、前年同期比で21%も減少した。

株式バブルが崩壊した以上、中国の輸入が回復する見込みは、現時点では全くない。

韓国の14年の輸出依存度は43・87%と、相変わらず4割を上回っている(ちなみに、日本は15・26%)。

結局のところ、韓国は内需が主導する「先進国型」の経済モデルを構築することに失敗したのだ。

今後の韓国経済は、

外需縮小と内需不振という二重の枷(かせ)をはめられ、

国民所得が伸び悩む、

いわゆる「中進国の罠」から抜け出せない状況が続くことになる。

 ■三橋貴明(みつはし・たかあき) 1969年、熊本県生まれ。経済評論家、中小企業診断士。

大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は「経世論研究所」所長。

著書に『中国との貿易をやめても、まったく日本は困らない!-中国経済の真実』(ワック)、『繁栄の絶対法則』(PHP研究所)、『超・技術革命で世界最強となる日本』(徳間書店)など多数。