韓国、不動産神話崩れる、値上がり期待一転、低迷長期化、消費・建設投資に冷や水。
【ソウル=島谷英明】韓国で「必ず値上がりする」と信じられてきた“不動産神話”が崩れている。
ソウル首都圏を中心に、米金融危機後に起きたマンション売買件数や取引価格の落ち込みが長期化。個人消費や建設投資の足を引っ張り、家計の負債膨張や中小金融機関の経営悪化を招いている。
ウォン安を武器に輸出主導で力強く成長しているようにみえる韓国だが、不動産不況が国内経済に重くのしかかっている。
首都圏落ち込む
ソウル近郊のベッドタウン、龍仁市。幹線道路沿いに立ち並ぶ新築の高層マンションは夜でも明かりがともる世帯は半分ほどだ。
「分譲中。価格は問い合わせを」。完工から1年近い別の物件には値下げをにおわす垂れ幕が掲げられている。
韓国の実質国内総生産(GDP)の伸び率は10年に6・2%、11年も4%台半ば(政府予想)と堅調な拡大が続く。
だがエンジン役は輸出で、民間消費主体の内需は力強さを欠く。その元凶が長引く不動産不況だ。
韓国の家計資産は8割を不動産が占める。日米の2倍にのぼり、不動産市況が家計の景況感や消費意欲を決定づける効果が大きい。
市況低迷で差益を狙っての転売が難しくなったほか、消費意欲も減退。不動産を軸とする家計マネーの回転が鈍っている。
売買落ち込みの背景には07年ごろまでの活況期に需要予測を無視して開発された物件のだぶつきがある。首都圏の未分譲住宅は2万6000戸強と高水準で、先安観がぬぐえない。
不動産開発に貸し込んだ中小金融機関の「貯蓄銀行」は全体の2割に相当する10~15行程度で経営が不安視されている。
こうした問題を一挙に解決するには「政策の後押しで不動産市場を活性化すべきだ」(大手銀行の経営首脳)との指摘もあがる。
だが一方で持ち家のない低所得者層の間では価格下落は「高すぎた価格が正常化しているだけ」との見方も根強い。
李明博(イ・ミョンバク)政権には、ただでさえ「大企業・カネ持ち優遇」との批判がつきまとう。不動産取引のテコ入れや価格の押し上げに直結する政策には踏み込みにくいのが実情だが、不動産沈滞の副作用と内需低迷が連動する構図は深まっている。