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台風21号本土上陸:第二室戸台風越える高潮と大阪湾過去最大潮位,西日本蹂躙し日本海北上

2018-09-04 20:18:59 | 防災・災害派遣
■台風21号,能登半島沖を北上
 台風21号、第二室戸台風や伊勢湾台風と共通点の多い、非常に危険な台風が本日西日本を縦断しました。

 NHK報道等によれば本日1900時の時点で台風21号による被害は死者2名、負傷者126名で、大阪府堺市での屋根修理中の転落、滋賀県東近江市での倉庫倒壊による下敷き、により亡くなったとのこと。京都でも京都駅で駅ビルの大型ガラスが落下し負傷者が、また嵐山では渡月橋の欄干が強風で破損しました。現在台風は能登半島付近を北上中という。

 日本海を進む台風21号は現在中心気圧970hps、速度は北北西へ65km/hの速度で進んでおり、このまま予報円の中心を進んだ場合、明朝0500時頃に北海道留萌沖の日本海上を北海道に上陸する事無くロシア沿海州方面に向かい、そのまま大陸へ上陸するものとみられていますが、台風が去った後も北日本、東日本を中心に豪雨への警戒が必要とされている。

 台風21号は非常に強い勢力を維持し本日1200時頃、徳島県に上陸しました。非常に強い勢力を保っての上陸は平成5年、実に25年以来という事から厳重に警戒されていました。特にこの台風21号は当初経路が5000名以上の犠牲者を出した1959年の伊勢湾台風と共通点の多い勢力と進路であり、大阪湾や伊勢湾沿岸部での高潮被害が懸念されていました。

 第二室戸台風、1961年に上陸し大阪湾沿岸に広く高潮被害を及ぼした台風、次第に予報円が定まると共に31平方kmが浸水した台風と共通点が指摘され、京阪神紀伊地区を中心に沿岸部へ避難指示が発令される事となりました。高知県室戸を掠め、正午ごろに徳島県に上陸した台風は45km/hと早く、台風進路上の関西国際空港は早々と滑走路を閉鎖します。

 高潮被害、2013年フィリピン台風30号被害、海上自衛隊から国際緊急援助隊としてヘリコプター搭載護衛艦いせ、が派遣されました巨大台風では突風被害や豪雨被害と共に高潮被害が非常に大きな脅威となりました。2005年ハリケーンカトリーナ被害や昨年大被害が出たプエルトリコのハリケーンマリア被害も、高潮に呑込まれ多くの犠牲者がでています。

 高潮は水位上昇でも高波でもなく、海水面が台風の気圧に吸い上げられることで上昇し、また台風の暴風に押されて速度とともに沿岸部に襲い掛かるという、台風30号被災者の表現を借りるならば、津波の様に海が押し寄せてきた、という。1959年伊勢湾台風でも犠牲者の多くは高潮により流失した貯木場材木などが次々と木造家屋を圧潰させたためのもの。

 神戸市内沿岸部に台風が四国から再上陸したのは1400時頃、この時点で大阪湾沿岸部は台風による高潮が引き起こした3m以上の異常潮位に見舞われており、大阪港では第二室戸台風の過去最高潮位である2.9mを上回る極めて危険な状況が報じられるとともに、京阪神地区からは次々に河川氾濫情報が発令、この頃には台風の速度は65km/hへ早まっていました。

 関西国際空港は瞬間最大風速58kmを観測するなど強風被害を受けると共に海抜の低いA滑走路が冠水し、続いて誘導路、駐機スポット、貨物ターミナル、業務用搬入路、バスターミナル等が冠水、また、関空連絡橋は走錨の航空機用燃料タンカーが衝突し橋梁施設とタンカーが共に破損する被害を受け、現在のところ関西国際空港は孤立状態にあるもよう。

 暴風被害、大阪府南部を中心に家屋の屋根が飛ばされ、鉄筋構造の頑丈な建物もガラス破損飛散被害、また倉庫や看板などが飛散し浸水被害により救助を求める通報が多数警察消防へ寄せられたとの事ですが、暴風下では救助活動が不可能であるとして救助見合わせ、となる状況が相次ぎました。京都府と滋賀県を中心に広い記録的豪雨の観測もこの頃です。

 しかし、大阪港等台風の北上に併せ潮位は下がり、最も警戒された夕刻の満潮時刻と大夫接近が重なる状況は回避できたようです。それでも大阪港で観測された潮位は第二室戸台風の1961年に記録された過去最高の潮位を上回っており、これがもし満潮時刻と台風直撃が重なったら潮位は、と考えますと、まさに僥倖であったとしかいいようがありません。

 教訓として。今回、大阪府南部を中心に救助要請が出されたものの、暴風下では救助活動を行えないとの判断から警察や消防が救助を見合わせる、という事例が報じられました。警察にも消防にも限界がありますので、この判断は正解であったと考えますが、避難準備情報、避難勧告、避難指示、警戒情報に一つ、今回の教訓は反映できないものでしょうか。

 救助等一時中止、この警報を避難指示に併せて発令する事は出来ないでしょうか。要するに、避難勧告と共に避難所に避難しなかった場合、被災しても自己責任、というものではなく現実問題として避難所以外の被災者を自治体は警察や消防により救助する事が暴風下で物理的に出来ない、という通知で、避難指示の重大性を広く周知する為に必要では、と。

 職員避難命令、避難勧告と同時に新たに自治体首長から発令する新しい命令に、自治体職員へ首長が権限として職員に避難命令を発令するというもの。避難指示では分りにくいという非難が西日本豪雨災害時にありましたが、憲法上の財産権等の基本的人権から家屋という財産を放棄し退避を強制する権限は首長にはありません、しかし緊急度を知らせたい。

 警戒区域、として災害救助法に基づき政府には首相の権限で強制退去を命じる権限は、例えば原子力非常事態等に際し付与されていますが、ここまでの権限を首長に持たせる事は現行憲法では難しい。しかし、首長は自治体職員に対しては命令権限遭有りますので、住民に対しては自己判断を含め避難勧告、一方職員には避難命令を発令する事は、できます。

 避難こそが唯一の防災への王道、と考える中で、職員避難命令と救助等一時中止、という方法は、勿論遮二無二救助を中断し避難所運営職員も退去させるというものではなく、防災職員や可能な範囲内での救助は継続する例外は含めるべきですが、警察や消防でも救助出来ない状況がある、これを直接選挙で選ばれた首長が命じる事は避難を促進しましょう。

 台風21号、今年最大規模の勢力を以て日本に上陸した台風は平成でも有数の破壊力を有していました。その被害の全容はまだ把握されていません。報道以外に通信不通の地域もあり得ます、実際に友人知人からの情報だけでも家屋損壊や鉄筋構造物の破損、相当に上ります。従って明日以降、判明する新たな被害もあるかもしれません、こうした中で言あに安全を確保するか、簡単ですが大きな課題です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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