北大路機関

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令和6年能登半島地震概況:プッシュ型支援の限界,14地区が道路寸断孤立と放送中継装置電源喪失

2024-01-04 07:00:11 | 防災・災害派遣
■臨時情報-能登半島地震
 発災から60時間以上を経た被災地ですが現状では全容さえ把握できておらず手を付けられるところから対応している状況です。

 地震被害状況の把握が遅れているのは、能登半島という過疎地域であり交通網が元々限られていると共に通信インフラ整備に限界があり、そして高齢化人口という特有の問題があるとともに、年末年始の帰省シーズンにより地域人口が急増しており、自治体能力の限界を超えている状況があり、孤立者数や道路状況さえ、判明している範囲はいまでも狭い。

 珠洲市は過疎化が災害対応能力に限界を突き付けています、珠洲市の市制施行は1954年で決して平成の大合併などで生まれた都市ではないのですが、1975年以降度々行政が原発誘致を進めるものの住民反対で実現せず、産業が限られ少子化、珠洲市のもともとの人口構成も影響しているでしょう、珠洲市は65歳以上人口が50%を超えている状況も考え得る。

 珠洲市の過疎化は、例えば1954年の市制施行当時小中学校は39校あったものが2023年までに学校が11校まで縮小、つまり校区が多数あったものが学校一つとって統廃合され、広い地域に人口が分散している状況があります。行政機能では交通が寸断した中で、中央から航空機等の支援が無ければ情報収集さえ厳しいという状況が醸成されたのでしょう。
■テレビ放送が停波しつつある
 時間とともに状況は悪化しつつある。

 テレビ放送が停波しつつある。能登半島の地域孤立はテレビ放送設備の停電と非常用燃料枯渇により地上波が停波する状況にあります。具体的には能登半島の輪島市内で、NHK放送は既に2日、輪島市のTV/FM中継施設が電源停止に陥り停波、民放のMRO北陸放送と石川テレビにテレビ金沢とHAB北陸朝日放送の合同中継所も間もなく電源停止となる。

 本日4日0600時頃までは電源が残るということですが、これ以降は非常用ディーゼル発電機燃料が補充されない限り、衛星放送と短波ラジオ放送以外受信できない地域が生じることとなります。停波の懸念はNHKが3日2359時に報道したもので、夜間であることも含め、燃料を短期間で補充する事は難しく、移動電波中継車などの派遣が必要となります。
■14地区が道路寸断孤立
 実際にはもっと多い地域が孤立しているのではないかという危惧があるもよう。

 孤立地域が非常に多い。NHK報道を見る限り、輪島市と七尾市と珠洲市及び能登町と穴水町で少なくとも14地区が道路寸断により孤立し、物資不足という状況にあるもよう。もよう、という曖昧な表現は、現地では固定電話と携帯電話が不通で無線機なども無く、またNHK3日2155時の報道でこれら地域への船舶や航空機による支援が届いていない、と。

 携帯電話基地局の電源喪失による通信不能と電話線寸断、どこが救援を必要としているのかさえ把握できない状況があり、携帯電話の移動基地局は、防災訓練等では自衛隊輸送艦により海上から上陸する訓練を行ってはいますが、肝心の輸送艦が3隻しか無く全て呉基地に集中しており、また移動通信車輛を現地に展開させる目処が立っていない状況です。
■当事者の被災状況把握
 プッシュ型支援として要請を待たずに物資を送る方式で中央は臨んでいますが肝心の道路網と通信網が破綻したまま根詰まりを起こしています。

 実施出来ないには相応の理由があるのでしょうが、自衛隊が70機以上保有しているCH-47輸送ヘリコプターは救急車を機内に収容可能ですし、ブルドーザーを吊下げ空輸可能です。V-22オスプレイという装備も自衛隊には配備されています。自治体が、何処へどれだけ人員を送りたいかを示せば、職員も物資も運ぶことは可能ですが、できていない。

 現行法では災害派遣は自衛隊が要請を受けて実施するものであり、軍政のように自衛隊が主体となって行政を指揮下に置く事はできません、ただ、だからこそ防災能力を自治体は求められる訳であり、先ず、市役所町役場職員が不足しているならば、どう増員するかだけでも示すべきで、現状では、当事者が被災状況を把握できていないことが問題なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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