北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】海上保安庁の30000t級巡視船構想と病院船に関する船舶活用医療推進本部令案

2024-07-16 20:02:46 | 国際・政治
■防衛フォーラム
 今回は日本の海に関する話題についてです。

 海上保安庁は総トン数30000tゴムボート多数搭載巡視船2隻の検討を開始しました。これは、しきしま型巡視船や最新の巡視船れいめい型の三倍から四倍という過去に無い巨大巡視船となります。海上保安庁によれば既に昨年度調査のための予算を計上していたという事で、おおきさもふくめ、これまでとは根本から異なる巡視船となる模様です。

 30000tとは基準排水量ではなく総トン数、ゴムボート多数というのは救命ボートの様なものではなく取締任務にあたる高速の複合高速艇を搭載するものであると考えられ、従来の巡視船にも数隻搭載していましたが、一桁大きな搭載能力になるもよう。また巡視船にはヘリコプター格納庫を配置し、大型ヘリコプター3機を搭載出来ることを目指す。

 新型巡視船について、総トン数30000tに加えて全長は200mという大きさを目指しているとのことで、これは海上自衛隊の輸送艦おおすみ型よりも大型でヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型が198mとなっています。緊急時には住民退避などにも充てるべく船内には1500名の便乗者を収容できる区画を確保し、2029年度竣工を目指すとのことです。
■30000t級巡視船構想
 この大きさの巡視船を量産する構想は驚かされました。

 海上保安庁の30000t級巡視船構想について。海上保安庁が任務として想定しているのは尖閣諸島警備であるとされています、中国海警の人民解放軍隷下配置転換による准軍隊化により昨今尖閣諸島に接近する中国公船は艦砲を備えるなど重武装化が進み、日中中間線付近を常時遊弋、従来の巡視船だけでは対応の限界が指摘されていました。

 巡視艇母船というべき今回の30000t級巡視船は、これだけ大きければ中国公船の妨害行動に対して、例えば海軍の空母の様な大型船が故意に衝突してきたとしても相手に損害を与えることができる規模となりますし、なにより巡視船の居住区画よりも格段に内部容積が広いことから、長期行動に海上保安官は個室や娯楽施設として活用できます。

 30000t級巡視船のもう一つの任務は、尖閣諸島警備がそのまま南西有事、台湾海峡有事などに発展した場合の住民退避区画の存在です。政府は有事の際に離島住民退避計画策定を自治体に要求していますが、旅客機やフェリーなどの輸送手段を自治体はほとんど持たないため、この超大型巡視船2隻は有事の際には貴重な疎開船となるでしょう。
■日本の病院船建造
 病院船は出ては消える連続の計画のひとつ。

 日本の病院船建造へ大きな前進です、松村祥史防災担当大臣の5月24日定例記者会見によれば、病院船に関する船舶活用医療推進本部令案が閣議決定されたとのことです。これは2021年6月に制定された“災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律”を具体化する施策で、災害対策や感染病対策にあてる船舶とのこと。

 岸田文雄首相を本部長に計画推進本部が機能する事となり、内閣官房長官と厚生労働省大臣及び防災担当大臣を副本部長とし政府一体となって計画を推進するとのこと。船体規模や速度などについては今後検討、病院船をどの官庁が運用するかは未定で、海上保安庁や海上自衛隊のほかに国土交通省や総務省が独自に運用する方式などが考えられます。

 病院船の最大の課題は平時における運用です。地域巡回診療に活用した場合は緊急出動に際して患者を緊急退院させるのか、被災地や戦地にそのまま載せてゆくのかという問題が生じますし、大型の病院船となれば必要な医療従事者を医師不足が叫ばれる中でどのように確保するのか、非常勤か常勤かを含めて確保をつめなければまりません。
■病院船の課題
 日本国内で使うのか人道支援や安定化任務等で使うのかと誰がのるのかという第一にしてしかし重大な課題が有ります。

 政府が進める病院船の課題について。病院船は過去幾度も検討されながら実現しない背景には、日本国内の運用を想定する場合、例えば大規模災害の場合は現場に回航する際に所要時間が数日かかるという問題です。ただ、有事の際の用途を考えるならば、交戦国がジュネーヴ条約を確実に履行するならば、戦闘地域に進出し安全圏を確保できる。

 災害時における病院船の確保における課題は、病院船を回航する数日の間に現地の搬送体制がヘリコプターによる近隣都市への搬送が可能となるか、病院船が現地へ到着した場合でも港湾や道路網が復旧していない場合は病院船までの負傷者搬送波ヘリコプターか舟艇が必要となり、道路網が復旧した場合は近傍総合病院まで搬送できてしまう点で。

 病院機能を有している艦艇や公船は日本には複数あり、ましゅう型補給艦には手術室と50床の入院病床が、ひゅうが型護衛艦、おおすみ型輸送艦には手術室と病床8床、いずも型護衛艦にも手術室と35床の病床設置され、海上保安庁災害対策機能強化巡視船にも手術室が設置されていますが、過去の災害派遣では都市部病院へ航空搬送が基本でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-FRV無人機によるロシア大型自爆用無人機迎撃能力とソティニツキーコザチョク

2024-07-16 07:00:59 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 自衛隊の無人対処能力整備についてホビー用FRV無人機を用いれば予備役部隊でも対応できる可能性をウクライナが示してくれました。

 ウクライナ軍は無人機によるロシア大型自爆用無人機迎撃能力を整備しつつある、ISWアメリカ戦争研究所7月7日付ウクライナ戦況報告によれば、ウクライナ軍が注力している新技術であり、今回ウクライナ軍が使用しているのはFRVドローン、ファーストパーソンビューという無人機の視野が操縦者のゴーグルに映される簡易無人機のひとつ。

 FRVドローンによるロシア無人機迎撃は、シャヘド無人機など自爆用無人機が飛行安定性の限界から小型ドローンが直撃した場合でも安定を欠いて落下する特性を生かしたもので、FRVドローンの利点は、現在枯渇する地対空ミサイルの百分の一程度という安さと、市場の在庫、この能力が整備される事で無人機防空は大幅に強化される期待があります。■
■防衛情報-ウクライナ戦争
 市街地戦闘能力整備の方向性を難しくさせる様な。

 ロシア軍はソティニツキーコザチョクに陣地構築を進めているとのこと、これはISWアメリカ戦争研究所7月6日付ウクライナ戦況報告によるもので、ロシアやウクライナ国内情報を伝えておりISWが陣地構築を衛星写真などで確認したものではないとのこと、ソティニツキーコザチョクはロシアベルゴロド州のウクライナ国境地域にあります。

 ソティニツキーコザチョクでの陣地構築の目的は不明で、ISWは可能性としてロシアが最近強化している破壊工作員のウクライナ浸透を陣地などから支援するもの、若しくはウクライナ軍を現在の最前線から引き離す誘因の機能、そして懸念されるのが、これがこの方面からウクライナへ侵攻する新しい攻勢準備の前兆であるということです。■

 チャシブヤール南北運河が新しい最前線になっている、ISWアメリカ戦争研究所が7月7日に発表した戦況報告によれば、チャシブヤール地域を所管するウクライナ軍旅団の情報として、市街地の東端地域にあるカナールミクロライオンから旅団が後退したことでロシア軍が運河に沿って前進し、両軍の接敵線がこの運河になったとのこと。

 戦況全般の概況としては、ウクライナ軍はハリコフ市北方のフリボケにおいて反撃に成功、対してロシア国防省はトレツク方面での攻勢を強化しており、トレツク東方にあるピブデンヌ南部を占領したと主張しています。トレツクは前日のISW報告において南側のニウヨーク南西に前進しており、シヴェルスク、アウディイフカ近郊でも漸進中です。

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