北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

令和6年能登半島地震検証:初動左右した能登空港活用可否と自治体に必要なマネジメント能力

2024-01-05 07:00:06 | 防災・災害派遣
■臨時情報-能登半島地震
 テレビの前で勝手な持論を出す事は憚れるべき視座ですが、しかし検討の上で却下されたのではなく検討さえせず幾つかの重要な施策が放置されているとしたならばどうでしょう。

 能登半島地震、災害対処の様子を見ますと、能登半島自治体は昨年と一昨年に繰り返される震度六クラスの地震災害とともに、もう少し防災能力が高かったように思ったのですが、現状は情報収集は勿論、自治体能力を超えているという時点で対処能力が輻輳を起こしているように思えます。もちろん、高齢化、過疎化、財源不足、色々あるのは理解する。

 自衛隊災害派遣、しかし現行法では地方地自法や災害救助法に基づき、防災と災害対処の一義的な主役は自治体であり、能力を超える災害であっても何が足りないのかを具体的に示して足りない能力を国に依存し救援を遂行する、つまりマネジメント業務というものは首長の所管です。自己判断で独断専行を、という制度を省いて法治主義があるのだから。

 神の視線、と揶揄される現場から遠いからこそ実情を無視した発言ができるという例えはありますが、例えば今回の能登半島地震、津波が珠洲市に大打撃を与え能登半島の輪島などが道路網が寸断され4日に漸く能登空港までの道路が回復しました。能登半島北部へは現在、海上輸送とヘリコプター空輸が生命線となっているのですが十分ではない。

 能登空港を自衛隊が拠点として運用できたならば状況は随分改善していなかったか。これこそ現場を知らないカミサマの視点だと批判される覚悟で、滑走路にひびが入り停電している空港ですが、管制塔が機能せずとも小松基地管制塔が航空管制を担えば自衛隊機だけならば運用できたのではないか、事実管制塔の無い福井空港は小松が管制している。

 C-1輸送機は最短600mの滑走路で離着陸できるため、2000m滑走路がある能登空港は真ん中が使えなくとも1000m滑走路として運用できるはずで、そもそもC-2輸送機とC-130H輸送機は滑走路が駄目ならば隣の草地で発着する不整地発着能力があるし、ひびくらいならば滑走路補修マットという、空爆された際に復旧に用いる機材を敷けばよい。

 しかし、前述の通り災害派遣として自衛隊は支援する側ですが、自治体が具体的にどのくらい支援が必要なのかということを示さなければ、がんばります、以上の言葉の効果はありません、何を頑張るのですか的な。災害に関してマネジメント能力が必要とされるわけです。今回は避難所というよりもどこにどれだけ孤立しているのかが把握できていない。

 能登空港に輸送機で中型ドーザやダンプカーとバケットローダを搬入できていれば、またできたことは変わったかもしれませんし、汎用軽機動車でも運び込めば孤立地域へ多少の往来は可能となります。汎用軽機動車は中部方面隊には配備されていませんがそう重いものではない、統合任務部隊として要請するならばV-22で搬入するのも難しくありません。

 連絡幹部派遣。自衛隊は石川県庁、福井県庁、長野県庁、新潟県庁へ迅速に連絡幹部を派遣し、輪島市へも連絡幹部を派遣しています。けれども、珠洲市や能登町といった地域へは派遣していません。輪島市へ派遣できたのは輪島分屯基地という能登半島唯一の自衛隊施設近傍であった為なのですが、珠洲市などは自治体機能を超え対応できていなかった。

 県庁への連絡幹部派遣ですが、石川県庁が珠洲市の情報を考慮出来ていたならば、UH-1JでもUH-2でもいいので多用途ヘリコプターで連絡幹部と通信陸曹を珠洲市や能登町へ派遣してほしい、と要請しているだけで、随分変わったのではないか。金沢の第14連隊以外に連絡幹部は要請さえあれば上級部隊の師団や方面隊から派遣できたはずです。

 海上輸送に期待したい。石川県知事発言がありましたが、金沢港艦艇広報として、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、ヘリコプター搭載護衛艦かが、輸送艦おおすみ型などを見ているでしょうし、少なくとも報道ではこの種の艦艇の存在を知っているでしょうから発言したのでしょう。けれども、輸送艦が全て広島の呉に配備されている事は知っていたのか。

 舞鶴基地には第3護衛隊群の第3護衛隊と第14護衛隊の護衛艦が配備されていますけれども、護衛艦の輸送能力にはもともと輸送を想定したものではありませんから、艦載機であるSH-60K哨戒ヘリコプターと搭載艇による輸送となり限界がある、物資輸送よりも金沢市などへの広域避難のための輸送手段として活用した方がよかったのかもしれません。

 おおすみ型輸送艦、海上自衛隊は1日には派遣を決定し2日には出航、4日には現地へLCACエアクッション揚陸艇を派遣しています。国際情勢のように事前情報で奇襲の懸念がある、というような把握できるものと地震は異なりますので、4日にLCACを揚陸できたのはかなり頑張った方だと思うのですが、被災地からしますと遅く感じたことでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新年防衛論集二〇二四【5】... | トップ | 令和五年度一月期 陸海空自... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防災・災害派遣」カテゴリの最新記事