北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

台湾東部地震発生-花蓮沖震源マグニチュード7.2,被害状況と台湾海峡情勢など地政学的影響

2024-04-04 20:13:24 | 防災・災害派遣
■沖縄にも一時津波警報
 台湾で発生した昨日の地震について情報を纏めてみました。地政学上の重要地域に隣接しており所謂被災地情報とともにもし災害とは別局面の事態となった場合には当然日本にも影響が及ぶ。

 中華民国台湾東部において3日、マグニチュード7.2の地震が発生しました。日本時間3日0858時、台湾東部花蓮県沖で深さ25㎞を震源とした地震が発生、台湾中央気象所は花蓮県などに震度6強の揺れが発生したと発表しました。台湾では日本と同じ震度7までの震度階梯を定めていまして、またこの地震により津波も発生しています。

 津波警報及び津波注意報は日本にも発令され、気象庁は沖縄県の宮古島及び八重山地方には津波警報、沖縄本島地方には津波注意報を発令、沿岸部の住民が高台に退避することとなりました。津波警報及び津波注意報は3日1200時までに解除されましたが、与那国島と宮古島で30cm、石垣島20cmの津波を観測、避難中に転倒で4名が負傷しました。

 台湾では花蓮県で震度6強の揺れを観測、北東部宜蘭県などで震度5強が観測され臨時首都である台北や新北市など広い範囲でで震度5弱が観測されています。また津波は宜蘭県烏石で82cmが観測され、台湾沿岸部で数十cmの津波がそれぞれ観測されています。震源に近い花蓮県ではビルの全壊や建物倒壊、落石などで広範な被害が発生した。

 花蓮県を中心とした被害は本日1900時までに台湾当局が発表したところによれば死者10名、行方不明者38名となり、また負傷者は1067名に上っています。台湾では1999年9月21日に発生した台湾中部地震以来の巨大地震であったとのこと。921大地震とも呼ばれる台湾中部地震では台中市や震源地の集集鎮を中心に2415名の死者がでています。

 玉山の標高3952mなど、こちらは日本統治時代に新高山と呼ばれ富士山よりも標高の高い日本最高峰として知られますが、台湾中部山間部には3000m級の山が複数存在し、花蓮県は太平洋側に位置しており、一方、台湾空軍のF-16戦闘機60機などを配備する花蓮基地が被災地にあり、滑走路や基地施設には大きな損傷がなく救助拠点となっている。

 天王星ビル、今回の地震では花蓮市の中心部に位置する天王星ビルが大きく傾き、地震被害の象徴のような扱いとなっていますが台湾メディアの報道によれば1986年の旧耐震基準により建設されたもので耐震強度の低い規制前の建物を中心に被害が出ているとのこと。一方、メディアなどが現地に行く事が難しい山間部では地滑り被害が確認される。

 地滑り被害は花蓮県の景勝地などに整備されたハイキングコースでも発生しており行方不明者捜索の際に死者などが確認され生存者捜索を急いでいるとのこと。また山間部道路寸断により台湾有数の景勝地という太魯閣渓谷にはホテルなどで孤立している観光客が600名いるとの事で、また所在不明の行方不明者所在確認を急いでいるとのこと。

 日本からの支援については、林官房長官は“日本台湾交流協会による確認や台湾当局の発表によれば、4日朝の時点で邦人の生命や身体に被害が及んでいるという情報には接していない”と発言、支援要請があれば対応する準備を進めていることを示しました。過去日本国内での震災では台湾からの援助支援は手厚かったのですが、今回はどう対応するか。

 アメリカ政府はNSC国家安全保障会議のワトソン報道官が“台湾で起きた地震に関する情報を注視しており、日本への影響の可能性についても引き続き注視している。アメリカは必要なあらゆる支援を提供する用意がある”旨の発言を行った、NHKなどが報道しました。またカービー大統領補佐官もアメリカ政府が対応準備を行っていると述べました。

 地政学的な影響について。台湾での大規模地震となれば懸念されるのは台湾海峡での安全保障情勢に影響が及ぶことです。ただ、被害の多くは花蓮県に集中しており、2011年東日本大震災の様な広範囲に津波が発生し国家機能や安全保障基盤への影響が及ぶようなものではなく、局地的な激甚災害であるという点は重要でしょう、有事には直結しない。

 台湾海峡有事となるような規模の災害であれば、東日本大震災においてアメリカ海軍原子力空母が実施したような九州南西海域から台湾海峡にかけての軍事プレゼンスを示し、予防外交などを展開する必要がありますが、今回の地震は台湾海峡有事に直結するような災害ではなく、影響が拡大しないよう注視しつつ、支援体制を強化する必要が。

 自衛隊台湾派遣の必要については、現在のところ邦人被害が確認されず、それよりも重要なのは地震発生後72時間という行方不明者の救命率に影響する限られた時間に対応するよう、例えば東京消防庁ハイパーレスキューなどの派遣が求められる可能性があります。また台湾当局や軍の対応も素早く、現地では救助活動と支援活動が展開中です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都幕間旅情】大報恩寺-千... | トップ | 台湾東部地震への日本の姿勢... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防災・災害派遣」カテゴリの最新記事