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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ザポリージャ原発が何故危険なのか,誰が事故を止めるのか-ロシア軍占領下で着々と進む核の大参事への階段

2022-08-29 07:01:16 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 フクシマ50という映画が有りまして事故を止めた50名の英雄たちの苦悩と決断を描いた作品で、彼らがいなければ事故はより大惨事になっていただろうという。

 ザポリージャ原発が何故危険なのか。それは軽水炉が六基あることですが、仮に現在の状況で一基でも全電源喪失となれば確実にメルトダウンを引き起し残る五基も短時間で連鎖的に事故を引き起こします。そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが理由は簡単、福島第一原発やチェルノブイリ原発のような事故対処を行う要員が不在で近づけない為です。

 外部電源喪失、先日一時ザポリージャ原発は外部電源喪失となりましたが、送電網をロシア軍が盗電しようとした際の事故が原因であり、29日時点では一系統の外部電源が確保されています。ただ、原発の原子炉は六基すべてが停止中、原発は発電できない状況ですが崩壊熱を放出する原子炉と使用済核燃料の冷却には絶対に電力が必要な状況に代わり無い。

 懸念されるのが外部電源喪失状態に陥った場合、非常用ディーゼル発電機により冷却を維持する事となりますが、発電用燃料の円滑な供給が妨げられた場合、福島第一原発のような事故に直結します、核燃料被膜のジルコニウム溶融から始まり解け落ちた核燃料は炉心底部を高熱で溶かし破壊するメルトダウンが発生する、そして事故対処要員は出動不能だ。

 六基の原子炉が全て、というのは一基の原子炉が制御不能となる事で致死量の放射性物質拡散が始り、隣接する他の原子炉にも原発職員が残る事が出来ないのです。恐らく与圧の管理棟は生存可能でしょうが、非常用ディーゼル発電機への燃料補給は大量被ばくが伴い、ロシア軍が身を挺し原発事故を止めるという確証は有りません、寧ろ非常に低いでしょう。

 ロシア軍は核戦場での対処能力を持つRHM-6化学防護車などを装備していますが、ザポリージャ原発占拠部隊にはRHM-6は確認できず、核事故を想定した装備ではありません。すると、核物質漏洩が発生したとしても対処どころか検知する能力があるのかさえ疑問なのです。そして事故発生時、ウクライナ当局の事故対処支援を行う可能性も難しいでしょう。

 ザポリージャ原発が何故危険なのか。それは過去の原発事故では原発所員と官民一致となった事故対処が被害拡大を防いだのに対して、今回はロシア軍が事故対処を妨害し、しかも原発事故の危険性を充分認識せず事故拡大を傍観する可能性が高い事です。そして国際社会はロシアを非難するでしょうが、非難に応じる国であればこの戦争さえ起きていなかった、ということです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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