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【京都幕間旅情】知恩院,平成の大修理経た国宝御影堂-華頂山眼下に御所と二条城望む徳川家康の国家観

2022-11-09 20:22:44 | 写真
■吉水草庵は巨大伽藍へ
 御影堂は凛として壮大でやはりいつ見上げても大きいものだと感じ入るものがあります。

 落慶法要、実は此処御影堂は国宝なのですが平成の大修理が2011年から2020年まで長きに渡り行われていました、落慶法要はしかし2020年という時節ゆえ縮小、吉水草庵があった場所に寛永16年こと1639年、徳川家光が吉水草庵を再建すると、この規模になった。

 知恩院、法然さんを懐かしむ堂宇が、しかしこうした大規模な争乱伽藍となった、さぞや凄い寄進が集まったのだろう、こう思われるところでしょうが、ここには政治と宗教、日本が現代国家にいたる中世の時代という歴史が色濃く反映しました、徳川家康による。

 徳川家康、現代に至る知恩院の壮大伽藍は江戸時代初期、徳川家康による造営となりました。家康といえば戦国時代に一向一揆などで危機に曝されたこともあるのですが、豊臣秀吉の京都大改造を江戸幕府開府ののちに権力者として引き継いだという一環ともいえます。

 将軍家菩提寺、ただこの知恩院については京都大改造を引き継いだというには遙かに大きな規模による復興といえる、もともと京都大改造は応仁の乱からの復興が端緒ではあったのですが法難に何度も曝された知恩院は応仁の乱では琵琶湖畔、新知恩院に疎開しました。

 良純法親王、家康は知恩院再興とともに後陽成天皇の皇子を知恩院の門主に迎えまして、こうして知恩院は門跡寺院という格の高さを得るとともに、伽藍を現代の知恩院のような見上げるばかりという規模に築き上げました、なにしろ三門からして日本最大の三門だ。

 華頂山、ここ知恩院は東山三十六峰の華頂山に立地する寺院なのですが、同時にここは京都一円を眼下に納めるという絶景とともに、それほど遠くない立地に京都御所と、その向こうに二条城を望むという、つまりここ知恩院はお上の御所を見下ろしているのですね。

 二条城といえば徳川家康の最後期に造営した城郭、もともとは神泉苑という京都への平安遷都の際の水源を掘り割りの水利に用いる織田信長の二条御所跡地に広がります城郭です。そして京都御所、征夷大将軍は天皇から将軍宣下の詔勅をもって任官する官位なのです。

 徳川家光が二条城へ天皇行幸を受けた際には大手門がお上を見下ろすに忍びないとして大手門の上段を取り払う敬意を示したことはよく知られるところですが、武家政権は常に朝廷の介入と政治権力の維持に慎重であったこともまた日本史の間違いのない事実ではある。

 御所を崇敬し、しかし日本社会と国内政治安定には幕府の盤石な統治機構の維持、ここの調和と均衡が江戸幕府開府と新しい中世と近世に至るための日本政治システム構築には、朝廷と幕府とともにもう一つの分権体制というものに、浄土宗総本山を考えたといえます。

 三権分立、この考え方ではないのでしょうが対立を避けるための構造、という。しかし門跡寺院であり征夷大将軍としての官位であり、主権には配慮しつつ実権を考える。こうした考え方から、この知恩院は法然さん懐かしむ庵からこの壮大な規模となりましたしだい。

 法然院。しかし知恩院は大きくなりすぎた、とは江戸時代にそもそも法然上人の専修念仏から離れるほどの威容ではないか、こうした考え方からもう一つ法然院が小さな庵として造営される等、原点回帰を模索する動きもあり、信仰と権力の距離感は中世の課題という。

 知恩院の石階段、男坂と緩やかな女坂と有りますが、此処を降りると共に今は凄いの一言に尽きる壮大伽藍も三門も、これらを包み育んだ歴史というものは成程複雑な背景と云うものがあるのだ、考えさせられつつ色づき始めた紅葉の木々を改めて見上げたのでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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