北大路機関

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【防衛情報】ポーランド防衛力整備-ボルスク装甲戦闘車1000両増産とHIMARS高機動ロケットシステム100億ドル調達

2023-04-17 20:07:59 | 国際・政治
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本の防衛費は不足している、この認識はかわらないのですが大盤振る舞いしている諸国を見ますと大丈夫かなと思う事はあります、その一例がポーランドです。

 ポーランド国防省はポーランド製ボルスク装甲戦闘車1000両の調達契約を締結しました。ボルスク装甲戦闘車はポーランド軍の旧式化したBMP-1装甲戦闘車の後継として開発された装備です。元々ポーランド軍は58両のボルスク装甲戦闘車を運用する10個機械化歩兵大隊所要を整備する計画でしたが、2022年のウクライナ戦争を受け一転しました。

 ボルスク装甲戦闘車、ボルスクとはアナグマを示すポーランド語です、その戦闘重量は28tと2020年代の装甲戦闘車としては軽量ですが、BMP-1装甲戦闘車よりははるかに頑丈頑強な防御力を持ち、その分は水陸両用性能を有しており機動力が高く720馬力のMTU-8V199-TE2エンジンにより最高速度65km/h、水上浮航能力8km/hを発揮します。

 主砲は30㎜ブッシュマスター機関砲でZSSW-30無人砲塔として車内より操作、戦車との遭遇に備え二発のスパイクLR対戦車ミサイル発射装置を有するほか、防御力は防弾鋼板でポリマー緩衝材を包んだ中空装甲でロシアのBMP-2装甲戦闘車が発射する30mmAP弾に耐えるとのこと。ポーランド軍は韓国製K-2戦車やアメリカ製M-1戦車を導入中です。

 ポーランド国防省はアメリカとの間で100億ドル規模で18両HIMARS高機動ロケットシステム及び関連装備や弾薬の売却計画の許可を受けました。これはアメリカ国務省が対外有償軍事供与の申請を許可したもので、これによりポーランド政府は念願のGMLRS4ロケットや長射程ATACMSロケットなど長距離精密打撃力を確保することとなります。

 M-142HIMARS高機動ロケットシステム18 両、HIMARS発射器弾薬コンテナモジュールキット468基、ATACMS陸軍戦術ミサイルシステム45基、GMLRS-AWM-30A2誘導多連装ロケットシステムコンテナ461基、M-31A2GMLRS-U誘導多連装ロケット コンテナ521基、XM-403GMLRS-ER-AW誘導多連装ロケット532基などが契約に含まれます。

 HIMARSはウクライナにおいて6両がアメリカから供与され戦況を劇的に変えた装備として知られ、今回アメリカがウクライナへ供与を許可していない長射程のATACMSも供与されることとなります。他方、ポーランド軍はHIMARSを100両調達するよう要求しており、実現するには更に400億ドル以上の費用を要するため、経済力限界が懸念されましょう。

 ポーランド空軍はアメリカからリース貸与されるMQ-9リーパー無人機の受領を開始します。これは2月12日に発表されたもので、ポーランド軍では2022年のロシア軍ウクライナ侵攻に衝撃を受け、大規模な国防近代化計画を推進中、その一環として大量のM-1A2戦車取得やHIMARSロケットシステムの取得とともに、MQ-9導入を希望しています。

 MQ-9リーパー無人機とともにポーランド軍はトルコよりバイラクタルTB-2無人機の導入を進めていますが、ウクライナにおいて実績を上げているバイラクタルTB-2は地上からの指令ビーム管制方式を用いるために行動半径が限られ、衛星指揮通信能力により長大な作戦行動半径と航空打撃力を有するMQ-9リーパー無人機の導入を希望したかたちです。

 ポーランド空軍は今回リース導入とともに将来導入した場合の運用研究や能力構築を進め、またMQ-9リーパー無人機を中心として将来の無人航空打撃力を構成することを希望しています。MQ-9リーパー無人機はアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、スペインで採用され、つづいて2022年10月には新たにベルギーの採用が決定しています。

 ポーランド陸軍は追加の韓国製K-9自走榴弾砲12両を受領しました、納入式典は2月23日にポーランドにおいて挙行されています。今回の納入は2022年8月26日に締結された納入契約に基づくもので、第21騎兵旅団第14砲兵連隊へ装備されました。最初の納入は2022年12月12日に24両が納入、今回の12両納入は第二次契約となっています。

 K-9自走榴弾砲は最初に納入されたものは第11砲兵連隊へ配備され、今回の納入で36両となりましたが、ポーランド軍は2022年8月26日の契約で212両を24億ドルで取得する契約であり、2026年に納入を完了します。ポーランド軍は独自仕様とするうえでTOPAZ戦闘管理システムを搭載、そのうえ薬室容量を拡大し最大射程を54㎞に延伸しました。

 クラブ自走榴弾砲としてポーランド軍は独自開発の自走榴弾砲を生産していましたが、この開発に際し2014年、韓国のハンファディフェンス社はポーランドへK-9自走榴弾砲の車体部分をクラブ自走榴弾砲へ提供しており、1000hpエンジンを搭載し高い機動力を有するK-9自走砲の車体が評価され、国防強化を急ぐポーランドが完成車体を導入した形です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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早期警戒機と早期警戒管制機,巨大なE-3早期警戒管制機に挑戦する長射程ミサイル時代のグローバルアイ早期警戒機

2023-04-17 07:00:53 | 先端軍事テクノロジー
■分散運用時代到来か
 P-1哨戒機の空中警戒機転用という視点を視た際に上昇限度も米軍との運用共通性も、と問題が浮かんだところですが案外将来は中程度の性能の機体を分散運用するのが主流となるのかもしれない。

 早期警戒機と早期警戒管制機、時代は転換点を迎えつつあるのかも知れません。具体的には早期警戒管制機は開発された1980年代から2010年代まで40年間はまさにその装備の有無が航空優勢を左右する劇的な装備でしたが、2020年代に入ると空対空ミサイルの長射程化とステルス機が挑戦を本格化させ、絶対的な優位は担保出来ない懸念が。

 2030年代には第五世代戦闘機の本格的な増加を受けいよいよ優位性が脅かされる懸念があるのです。グローバル600早期警戒機、この象徴的な動きのようにみえるのはNATO北大西洋条約機構が共同運用するE-3早期警戒管制機について、後継機の候補にかなり小型のスウェーデン製グローバル600を候補とした点が挙げられます、もちろん性能は。

 早期警戒管制機と早期警戒機の違いは要撃管制員が搭乗しているかどうかであり、E-3早期警戒管制機とE-767早期警戒管制機は要撃管制員が15名搭乗しています、極論ですが15個飛行中隊を同時に管制することが可能ですが、これがE-7Aであればぐっと少なくなる、グローバル600は要撃管制員を乗せてはいるのですが、3名と大幅に少なくなります。

 E-3早期警戒管制機を少数運用し、相手に高付加価値目標として標的とされるよりは多数のグローバル600を運用し分散させるほうが脆弱性を抑えられる、こうした認識なのでしょうか。これは航空自衛隊のE-2D早期警戒機の運用や、韓国空軍がE-7早期警戒機の増強へグローバル600を新たに検討している点と共通点があるのかも知れません。

 分散運用は、早期警戒機が比較的安価である故の選択肢、例えば早期警戒機が一機、相手の集中攻撃に見舞われた場合には素早く戦場から退避しつつ、しかし別の空域で待機していた早期警戒期が素早く進出して警戒管制を補完し、その上で要撃管制員はデータリンクにより各戦闘機と地上司令部が補う、という方式が考えられるのかも知れません。

 超音速機、不安である要素はグローバル600はボーイング707を原型としたE-3ほど高い高度に上昇できませんのでレーダー能力を従前に発揮できませんし、コミューター旅客機を改造した機体故に速度も限られ、万一の歳に退避を迅速に行えるのか、という点です。すると将来、超音速旅客機時代が再来したならば、活用が検討されるのかもしれない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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