北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F-35最新情報:いずも改修JPALSとBAE社F35第1000号機胴体完成,シンガポールF-35B導入計画

2023-04-10 20:11:50 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今週はF-35戦闘機最新情報です、驚いたのはシンガポール海軍がかなり小型の揚陸艦をF-35B母艦としようとしているところです。

 海上自衛隊はアメリカのレイセオン社よりJPALSジョイントプレシジョンアプローチアンドランディングシステムを導入します。いずも型ヘリコプター搭載護衛艦へF-35B戦闘機の運用能力付与改修を進める海上自衛隊にとり、JPALSの導入はその発着を単なる発着点から恒常的運用能力付与に繋がることとなり、計画の要諦となる重要な施策となります。

 JPALSジョイントプレシジョンアプローチアンドランディングシステムは、アメリカ海軍のF-35B戦闘機運用能力を有するすべての航空母艦と強襲揚陸艦、イギリス海軍のクイーンエリザベス級航空母艦とイタリア海軍の空母カブールに搭載されており、あらゆる天候や海象でのF-35戦闘機を母艦へと誘導するとともに自動着陸能力を支援するものです。

 F-35B戦闘機は強襲揚陸艦や軽空母におけるハリアー攻撃機の後継機という位置づけとなっていますが、ハリアーは艦上運用ではその発着訓練が飛行訓練の大半を占めていました、しかしJPALSにより、極端な表現では手放しでも発着艦できるほどに自動化され、F-35B戦闘機は航空打撃戦や制空戦闘など戦闘機としての訓練に専念できる事となりました。

 イギリスのBAEシステムズ社はF-35戦闘機1000号機の胴体部分を納入しました。第五世代戦闘機として猛烈な勢いで量産を進め、アメリカ空軍や海兵隊と海軍はもちろん、わが国航空自衛隊でも隣国の韓国空軍やオーストラリア空軍でも配備が進むF-35戦闘機ですが、1000号機の組立てが進んでいるということはその配備の速さに驚かされるものです。

 F-35戦闘機1000号機の胴体部分はランカシャー州サムルズベリーのBAEシステムズ社施設において製造されており、胴体部分についてはすべてのF-35戦闘機がBAEシステムズ社において製造されています。その量産初号機の胴体部品は2005年に生産されており、18年間で1000機を製造したこととなり、また近年その量産度合いは加速化しています。

 1000号機の生産はBAEシステムズ社製胴体の納入を受けたロッキードマーティン社において組み立てられることとなりますが、F-35戦闘機は現在17か国で採用もしくは採用決定しており、その生産数は3000機を超えることとなります。一方、BAEシステムズ社も胴体部品などの生産にはイギリスの500社以上の企業がその分担生産に参加しています。

 シンガポール空軍はF-35B戦闘機を8機追加調達し12機体制とする計画です。もともとシンガポールはF-35国際共同開発に際して開発パートナー国として参加しており、当初はF-35戦闘機100機を調達する計画があるとしていました、ただ、当時の国防環境の変化からF-16戦闘機近代化改修計画を優先するとし、優先度は中程度ともしていました。

 エンデュランス、シンガポール空軍がF-35戦闘機について大きく評価を変えたのはドック型揚陸艦であるシンガポール海軍エンデュランス級揚陸艦へ垂直離着陸発着パッドを装着した場合、後部ヘリコプター甲板から運用できる可能性が示された際です。全通飛行甲板でないエンデュランス級ですが、F-35Bは短距離発着のほかに垂直離着陸も可能です。

 F-35Bはハリアー攻撃機と異なり、一応垂直離着陸は可能ですが、垂直離陸運用を行った場合には搭載兵装や搭載燃料に大きな制約が加わるため、基本的に全通飛行甲板からの短距離発艦を行いますが、シンガポール海軍の揚陸艦から仮にF-35Bを運用する実績を積んだ場合、各国海軍へF-35Bのポテンシャルが大きく転換することとなるかもしれません。

 ドイツのラインメタル社はF-35戦闘機中央胴体部分の組み立てについてアメリカのロッキードマーティン社と覚書に署名しました。この計画はF-35戦闘機の量産加速を視野に生産能力をアメリカ以外にも拡大する方針であり、中央胴体部分の供給源にラインメタル社の生産能力を付与、ノースロップグラマンでの製造される胴体部分を補完するのが狙い。

 IAL部分統合組立ラインをドイツのラインメタル社に整備するための覚書で、最終的には翼外板の製造もラインメタル社において行う検討を進めています。重要なのはドイツはF-35戦闘機を開発するJSF計画の参加国ではありません、またドイツはフランスとの将来戦闘機計画を推進する政治上の制約からF-35戦闘機導入にも大きな論争がありました。

 F-35戦闘機について大きな転換となったのは2022年にメルケル政権からショルツ政権に政権交代となり、また2022年のロシア軍ウクライナ侵攻に伴うロシアウクライナ戦争の勃発を受け、何時できるか不明の共同開発戦闘機よりもF-35を選定したためです。この採用の翌年にしてドイツがF-35戦闘機主要部分の生産参画を調整するのは驚きといえます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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MLRSの射程499kmJFS-Mミサイル,最近の防衛政策は予算の問題を陳腐化で置換えていないか

2023-04-10 07:00:00 | 先端軍事テクノロジー
■防衛政策の不自然
 最近の防衛政策は予算の問題を陳腐化で置換えていないかと思う、必要な装備であっても使えないと政治が定義づけるだけで無計画に廃止しているような印象です。

 MLRSの射程延伸、日本の防衛を考える場合、現在は2030年の全廃に向けM-270MLRS多連装ロケットシステムの用途廃止が進む一方、アメリカではM-270をM-270A2へ改修している現状をどう考えるのか、改修する場合の費用と比べM-270A2を新規調達した場合の非常に高い取得費用を考えますと安易に廃止することへ疑問を感じないでもありません。

 499km、MLRS用弾薬は現在ドイツが開発しているJFS-M改良型弾薬の499kmがもっとも射程の長いもので、陸上自衛隊が装備するM-31-GMLRS精密誘導ロケットの射程70kmを大幅、というよりも別物といえるほどに射程が伸びています、JFS-Mが射程を499kmに抑えているのは大量破壊兵器運搬手段拡散防止レジームにもとづく国際法上の制約ゆえ。

 JFS-M精密誘導ロケット弾、この射程であれば那覇駐屯地と鹿屋基地へ配備することで、ほぼ南西諸島全域を射程に収められ、現実問題として12式地対艦誘導弾システムと比較しても射程は二倍以上、しかも上海と那覇の距離が822kmですので、中国本土主要地域には届きませんが、それだけに専守防衛用として中国を刺激しない装備といえます。

 MFOM弾薬である、MFOMとはMLRSファミリー弾薬という意味なのですが、このJFS-Mは無改造でMLRSに搭載することが可能、誘導プログラムの追加は必要ですが、これをふくめてもJFS-Mを導入したその日から射程499kmの長距離砲兵システムとして機能することになります。これは取得費用面から非常に優れており即応性の高さにもつながります。

 MLRSの利点はその上で、車体そのものが高度に装甲化されている点がある、これはロケット弾をむき出しに搭載するHIMARS高機動ロケットシステムよりも防御力の面で優位性があり、もともと戦車に随伴することを念頭とした設計のためなのですが、移動中に航空攻撃や弾道ミサイル攻撃を受けた場合での生存性の高さが利点として挙げられます。

 専守防衛を考える以上、実は有事における生存性は第一撃を受けるという専守防衛の性質上防御力は重要な要素です、そして専守防衛を例えば憲法改正により脱却したとして、国際法上先制攻撃は適法ではありません、すると射程が30kmのM-26ロケット弾が陳腐化したといわれれば肯定しますが、JFS-Mがある以上、MLRSそのものは有用といえましょう。

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