北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

スーダン邦人輸送,C-2輸送機KC-767空中給油輸送機出発!状況悪化の早さと日本版SPMAGTF-CRの必要性

2023-04-22 20:12:45 | 国際・政治
■過去にない厳しい任務
 アフリカのスーダンという距離とともに突発的ともいえる戦闘の拡大、その現地からの邦人救出は過去にないきびしい任務となります。

 スーダン邦人輸送、72時間停戦の間にハルツーム国際空港の安全が確保できるならば、C-130H輸送機をバックアップ機としてC-2輸送機を展開させるのが理想でしょう。日本大使館は国際空港から500m、C-130Hからパスファインダーを投入して安全を確保したのち、更に軽装甲機動車護衛下で輸送防護車を投入させ、目いっぱい詰め込んで空港まで運ぶ。

 ハルツーム国際空港の安全が確保出来ない場合は、苦肉の策ですがC-2輸送機にUH-60JA多用途ヘリコプターを搭載してジブチまで運び、そこからハルツームまで救助へ飛行させる。ジブチからハルツームまでは1200kmあり、UH-60JAの航続距離は1295km、フェリー航続距離でも2200kmですので中継点が必要ですが、予備案の陸路移動よりは安全です。

 V-22可動翼機を派遣できればそれが理想的だ、しかし配備開始から間もなく、漸く先日相浦駐屯地祭に初参加した程度で、先ずV-22を搭載できる航空機が自衛隊には無く、分解する事でC-17輸送機には搭載できるのですが、アメリカやオーストラリアなど友好国のC-17を利用するには調整の時間が無く、フェリー飛行するには日本からスーダンは遠い。

 AH-64D戦闘ヘリコプター、ヘリコプターにより救出する場合は同行する事が望ましい。そして輸送防護車と軽装甲機動車による陸路での救出を行う場合は、望ましいというよりも絶対に必要です。AH-1S対戦車ヘリコプターでは航続距離が不足し、増槽を装着して可能な限り航続距離を伸ばし、30mm機関砲と可能な範囲内でのミサイルを搭載する。

 現行法ではAH-64Dの派遣はぎりぎり、難しい段階ですが過去に例えばイタリアがボスニア紛争の平和維持任務にA-129攻撃ヘリコプターを派遣し、上空から威圧する事で戦闘を回避した事例があり、逆に相手を刺激しない様にAH-64Aを派遣しなかったアメリカはソマリア安定化任務でUH-60ヘリコプターの特殊戦仕様を武装勢力に撃墜されています。

 交戦規則を明確に示す必要がありますが、RSFの戦闘部隊は専門訓練を受けており、邦人救出任務を行う為に攻撃を仕掛けられなければ日本から攻撃はしかけないが、一発でも飛んできた場合は30mm機関砲弾とヘルファイアミサイルを叩きこむ、と示す事で、逆に訓練が充分行き届いている部隊であればある程、不用意のない、大人の対応が望めるのです。

 スーダン危機、率直に言って日本政府の邦人救出への立ち上がりは早かった。在留邦人規模はそれほどでもなく、またRSF武装勢力の正規軍との衝突という背景、ここまで短期間で状況が悪化するとは。これも状況からわずか48時間で制御不能となり、少なくとも日本政府と自衛隊が対応できる憲法の範囲内での対応では限界をこえている状況です。

 C-130H輸送機の展開は、当初北大路機関では過去の南スーダン邦人輸送におけるジブチへのC-130H展開所要時間を参考に三日間と想定していましたが、実際には二日前後で到着するという。恐らくC-130H輸送機の後続で出発したKC-767空中給油機、C-130H輸送機に空中給油することでC-130Hの中継点を省略し、展開時間を早めたのではないかと思う。

 スーダンの事案は、過去のアフガニスタンカブール陥落のように、事態急変の2週間前から各地の州都陥落が続発し、危機が拡大する、段階型事態ではなく、一気に平時から緊急事態となった、アルジェリアガスプラント襲撃事件のような、事態が確認され制御不能となるまできわめて短時間であった、という状況です。これはRSFの奇襲がありました。

 RSF,これはCNN報道などで衛星写真によりRSFがロシアの民間軍事会社ワグネルから武器引き渡しを受けている様子が撮影されていましたが、背景には現在の軍事政権が民政移管を進めており、民主主義となっては独占している金鉱山からの金塊を独占できなくなるための、きわめて計画的で且つ奇襲的な事態であり、事態を予見するのは非常に難しい。

 日本政府がスーダン国内にたとえば情報機関の要員を派遣し情報収集を行う、もしくは日本の商社員が多数駐在し市場情報を精査できるような状況があったならば、後者は第四次中東戦争をかなり正確に予測したことで有名ですが、多少予見できたのかもしれません。しかし、抑圧国家故に資源取引を行っていないスーダンでは、それは無理というものだ。

 在留邦人60名という規模について。まず外務省が"海外安全情報"においてスーダンを従来の"不要不急の渡航中止勧告"から"渡航中止勧告"に引き上げたのは4月15日、この渡航中止勧告が発令された時点でハルツーム国際空港では戦闘が開始されており、渡航を受けて一時間以内に空港に駆けつけた時点でも出国できない状況であったのです。まにあわない。

 邦人、60名規模ということでしたが、その多くは大使館員とスーダンの医療支援などを行うNPOの方々で、人道上どうしてもその場にいなければならないNPOの人たちとともに日本が独立国家である限り大使館を置く必要がありますので、最後まで出国できない方々が取り残された、という構図、外交上は事態前に出国できない方々、ということです。

 SPMAGTF-CR海兵危機対応空地特別任務部隊、アメリカ海兵隊は中東と南欧に、今回のような事態に対応する小規模の部隊を常駐させています。この部隊は人員規模で550名程度、MV-22可動翼機6機とKC-130空中給油機2機を主要装備とし、550名の内で現地へ展開するのはMV-22に搭乗できる部隊のみ、あとは情報収集と指揮命令や幕僚機構など。

 自衛隊にもSPMAGTF-CRのような部隊、特にせっかく高い予算を出してV-22可動翼機を導入したのです、アフリカ地域に近い、政治的に難しいのならば欧州の、クレタ島にあるイギリス軍施設などに、V-22可動翼機を2機から3機とKC-130H輸送機を2機から3機、訓練名目でも国際協力でもよいからローテーション待機させる検討も必要かもしれない。

 C-2輸送機、自衛隊だけではどうにもならず政治の予算措置が必要な命題ですが、やはり数は足りていない、C-2輸送機に十分な数があれば、海外派遣即応機を準備できたかもしれない、現状でC-2輸送機の飛行隊定数は8機でしかなく、C-1輸送機の時代よりもかなり削減された、飛行隊定数が15機あれば、数機程度は海外派遣即応機を準備できたでしょう。

 輸送航空隊をもう一個新編し、可能ならばすべてC-2輸送機で機種統合、飛行隊の定数を12機確保し、各部隊でローテーションの方式により即応機を確保できれば、今後多少は即応性を高められるかもしれない。C-2輸送機の航続距離ならばフェリー航続距離が10000kmあり、欧州でも15時間で展開可能です。便利な輸送機だが数が足りていない。

 美保基地と入間基地と小牧基地、今後必要なのは輸送機を増強するとともに自衛隊の輸送機部隊基地の近くに分屯地を造り、いや美保だけは美保分屯地が既にあるのですが、分屯地にローテーション配置でよいので各師団や旅団から即応中隊を置き、一時間待機小隊と十二時間待機という、有事の際に即座に展開できる体制を置く必要を感じます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都発幕間旅情】伊勢志摩ライナーとLCカー,近鉄/近畿日本鉄道の分岐点駅は静かな駅舎とカラフルな電車

2023-04-22 14:40:11 | コラム
■近鉄伊勢中川駅
 鉄道は移動手段なのだけれども津市に行った際に少し乗換駅でベンチに座らずホームを眺めてみた。

 伊勢中川駅、文庫本も持たずスマートフォンのバッテリーも怪しい段かいで列車に乗るとロングシートの車両の場合は寝るにも寝られない訳で見るものと云えば車窓か車内広告か、それとも路線図しかない。するとこの伊勢中川という駅は近鉄の中でも不思議に思える。

 近鉄は近畿日本鉄道、それでも三重県が近畿地方に入るかというと、津市や四日市市や桑名市は名古屋近郊という印象が強い、松阪市まで行くと別の都市圏を構成しているのだけれども、その近鉄にあって名古屋近郊路線から伊勢神宮へ向かう分岐点がこの駅なのだ。

 路線図では名古屋と大阪を直線で結ぶ路線がデルタ形状を形成していて、名阪特急は伊勢中川駅の北側にある鉄橋をノンストップで渡って通過してゆく様子が、駅のホームから若干遠いのだけれども、それでも高速で通過する赤い白いの特急の姿が確かにみえるのだ。

 伊勢神宮のさらに南には伊勢志摩の賢島、伊勢志摩ライナーも運行されているけれども名古屋いきの通勤列車が急行型車両というべきLCカーのロゴマークとともに入線して来まして、考えれば恐らくここから大阪方面へ通勤する人はいないのだろうなあと雰囲気が。

 分岐点となる駅、駅前にはご当地スーパーのピアゴが広々と、そしてその沿線には焼肉屋さんと中華料理屋さんに焼き鳥屋さんが並び、焼肉屋さんは暖簾をいよいよ準備しているところ。それでも駅構内を見れば、立ち食い蕎麦屋も駅弁屋さんもなにもみあたらない。

 京都と賢島を結ぶ特急はここ伊勢中川に停車するのだけれども、駅前の活気では津市とか松阪市のほうが賑やかで、なるほどここはほんとうの中間駅なのだなあ、という印象が面白い、広い駅がそれほど乗客がいない時間帯は実に静かで、乗換駅ならではの旅情を湛えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スーダン邦人救出へC-130H輸送機中継拠点のジブチへ出発-現地は危機的状況と不安定な72時間停戦の開始

2023-04-22 07:00:52 | 国際・政治
■臨時情報-スーダン情勢
 スーダン情勢です。昨日20日に先遣隊を載せたC-130H輸送機が小牧基地を出発し邦人救出任務が本格化しました。

 C-130H輸送機の場合、おおむね3日間でジブチに到着します。C-130Hは戦術輸送機であり、小牧基地を離陸したのが1430時、夕方に那覇基地に着陸し給油ののちに離陸したと報道されています。3日間、急げばもう少し短縮できるか、と思われるかもしれませんが、この3日間というのは過去、南スーダン邦人救出の際の所要時間でもあります。

 スーダンと南スーダンでは場所が違うといわれるかもしれませんが、3日間でジブチまで、南スーダン邦人輸送の際に到達していますので、機種と経路は同じ、巡航速度と航続距離はかわっていません。この点で不安となるのは、21日日本時間1300時から72時間の停戦期間を武装勢力RSFが発表しており、輸送機の出発は1430時だったということ。

 RSFの停戦時間がどの程度履行されるかは不透明ですが、少なくともC-130では72時間の期限ではスーダンはもちろん、ジブチまでの到着が難しい状況です。C-2輸送機とKC-767空中給油機がまもなく派遣されるといい、航続距離の面からはこちらのほうがジブチまで早く到着するのかもしれません。ただ、難しいのはそこからハルツームまでの移動だ。

 ハルツームは1200km離れており、しかも戦闘はハルツーム国際空港や大統領府において展開されているという。このためまず国際空港の安全を確認できて初めて輸送が可能となります。ハルツーム国際空港と在スーダン日本大使館の距離は500m、滑走路からは1km強、空港から近いのは便利ですが空港が戦場であるならば話は真逆となります。

 V-22オスプレイ、もし陸上自衛隊が運用を開始しているV-22をジブチまで運び込むことができれば、条件はかなり変わります。V-22は既に先週の相浦駐屯地祭水陸機動団記念行事において訓練展示に参加していますが、仮に予備機を含め4機から5機、ジブチまで展開できれば邦人輸送はかなり難易度を下げることができます、ただ配備から間もない。

 自衛隊の任務としては非常に厳しい、いちばん理想的であるのは72時間の停戦期間中に休戦協定まで進むところですがRSFの軍事行動は目的が不明確で、停戦よりもダルフール地方と北部の割譲をもとめる内戦に発展する危険性の方が大きい。まずはジブチへ自衛隊と各国の航空機材や部隊を集め、有志連合方式をとるほかないのが現実のようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする