北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省、伊豆大島災統合任務部隊編成命令!自衛隊、伊豆大島ラハール災害へ全力対応

2013-10-21 23:52:58 | 防災・災害派遣
◆東日本大震災以来の統合任務部隊発足
 防衛省は10月20日2149時、台風26号伊豆大島ラハール災害への対処へ東部方面総監磯部晃一陸将を指揮官とする伊豆大島災統合任務部隊編成を命令しました。統合任務部隊編成は東日本大震災以来のもの。
Himg_0841 中央観閲式予行へ執行責任者として磯部総監は臨席しましたが、この9時間後に統合任務部隊が編成されています。統合任務部隊の設置により、詳しくは後述しますが、陸海空部隊より必要な部隊を抽出し一元化した運用を行う事となるため、部隊の垣根や陸海空自衛隊の横のつながりを用意とする運用体制を高地う下、というわけで、輸送や必要な機材などの展開は、制度面で非常に容易となります、誤解を恐れず記せば、いわば、平時から有事への指揮系統の転換が行われた、と理解すると分かりやすいかもしれません。
Himg_1241 伊豆大島ラハール災害は、火山性土壌へ記録的短時間豪雨が降り注ぎ、広範囲で火山性泥流、いわゆるラハール災害が発生、大島町のラハール災害への準備不足と事前避難勧告の必要性軽視により広範で人的被害が生じました。東京都はラハール災害はが発生した10月16日に災害派遣要請を実施、これにより自衛隊が情報収集を筆頭に伊豆大島への災害派遣を開始しました。情報収集に続き、行方不明者捜索と負傷者緊急搬送などを継続していますが、死者行方不明者が50名を越える離島災害としては非常に大規模な被害が生じていることから、派遣規模は強化されることに。
Himg_2731 大型船の入港が不可能な離島において、救援は難航し、航空自衛隊のC-1輸送機が自衛隊の部隊展開を行うと共に警視庁や国土交通省、消防とDMATなどの展開を支援、輸送機による空輸とともに建設重機などの投入へ、呉基地より輸送艦おおすみ、が派遣、輸送艦からのエアクッション揚陸艇による重車両の揚陸で対応しています。輸送艦からのエアクッション揚陸艇による揚陸は、50両を揚陸するのに13時間を要し、増援へ輸送艦くにさき、が派遣されています。ただ、くにさき、は、おおすみ、へエアクッション揚陸艇一隻を搬入したのち、任務を完了しているため、エアクッション揚陸艇一隻の稼働状態に問題があったのかもしれません。
Himg_4043 輸送艦による輸送は第二便が20日0753時より第1師団等の人員約40名、車両約20両と警視庁特殊救助隊等の人員7名、車両5両搭載が開始され、作業完了後0954時に大島沖に向け出港。1230時、伊豆大島の弘法ヶ浜沖に到着し、エアクッション揚陸艇による揚陸が開始されています。エアクッション揚陸艇は速力が大きく、海浜状況による揚陸の可否を左右されにくい特性がありますが、一隻当たりの寸法に対する輸送力には限界があります。なお、輸送支援は継続して実施されており、今後も派遣部隊の輸送に展開することでしょう。
Himg_9881 重機の搬入と輸送機により輸送支援は継続てきに行われました。しかし、現状では行方不明者捜索が進まない中、我が国南方海域では台風27号が発生、続いて本日台風28号が発生、台風と共に全線も伊豆大島へかかる兆候を示しており、現地では二次災害の恐れが生じていると共に政府は19日、現地非常対策本部を設置、台風接近までに必要な捜索活動を展開するべく、東部方面総監に部隊を一元化し対応するべく伊豆大島災統合任務部隊の編成を命令、災害派遣体制の拡充と効率化を図ることとしました。
Himg_0998 伊豆大島災統合任務部隊は、伊豆大島陸災部隊と伊豆大島海災部隊に伊豆大島空災部隊より編成されています。東部方面総監は伊豆大島災統合任務部隊指揮官と伊豆大島陸災部隊指揮官を兼任し、伊豆大島海災部隊に横須賀地方総監が着任、伊豆大島海災部隊指揮官を兼任することとなっています。そして、東部方面総監は必要に応じ横須賀地方総監の伊豆大島海災部隊へ必要な支援を命じることが出来るようになっています。伊豆大島空災部隊は航空支援集団司令官が着任し、必要な部隊を抽出できるという大きな権限が付与されています。
Himg_6440 東部方面総監は、第1師団長や第12旅団長を筆頭とする東部方面隊全ての部隊を指揮下に置くのに加え、中央即応集団司令官、中央管制気象隊長、通信団長、警務隊長、中央情報隊長、陸上自衛隊中央会計隊、陸上自衛隊中央輸送業務隊長、陸上自衛隊中央業務支援隊長、自衛隊体育学校長、陸上自衛隊幹部学校長、陸上自衛隊高射学校長、陸上自衛隊航空学校長、陸上自衛隊施設学校長、陸上自衛隊通信学校長、陸上自衛隊武器学校長、陸上自衛隊需品学校長、陸上自衛隊輸送学校長、陸上自衛隊小平学校長、陸上自衛隊衛生学校長、陸上自衛隊高等工科学校長、自衛隊中央病院長、陸上自衛隊研究本部長及び陸上自衛隊補給統制本部長へ命令を出し必要な部隊を抽出することが可能となります。
Himg_6809 横須賀地方総監は横須賀地方隊隷下部隊に加え、自衛艦隊司令官、呉地方総監、佐世保地方総監、舞鶴地方総監、大湊地方総監、システム通信隊群司令、自衛隊横須賀病院長及び海上自衛隊補給本部長に対し、必要な部隊の抽出を明示、適宜その指揮下に置くことが可能となりました。また、航空支援集団司令官は隷下に航空総隊司令官、航空教育集団司令官、航空開発実験集団司令官、航空システム通信隊司令、航空機動衛生隊長、航空中央業務隊司令、航空自衛隊幹部学校長及び航空自衛隊補給本部長を置き、必要な部隊の抽出と指揮が可能となっており、権限は非常に大きいことが分かるでしょう。
Himg_5793 現在派遣されている部隊は、陸上自衛隊より第1普通科連隊、第1後方支援連隊(練馬)、第32普通科連隊(大宮)、第34普通科連隊(板妻)、東部方面航空隊、第1飛行隊(立川)、第12ヘリコプター隊(相馬原)、第1施設団(古河)、東部方面通信群、東部方面後方支援隊、第1施設大隊、東部方面総監部付隊(朝霞)、第1高射特科大隊、第1戦車大隊(駒門)、第12施設中隊(新町)、海上自衛隊より第21航空群(館山)、第1輸送隊(呉)、航空自衛隊より第2輸送航空隊(入間)、第3輸送航空隊(美保)、第1輸送航空隊(小牧)が派遣中とのこと。
Himg_1008 本日0830時までの自衛隊災害派遣状況は人員 約440名(延べ約1,630名)、車両 約100両(延べ約280両)、航空機 (延べ40機) 、艦艇 3隻(延べ13隻)、となっています。師団規模の部隊が続々と展開され、こうはんいの被災地へ部隊が大量投入された東日本大震災災害派遣の延べ派遣人員が1000万を超えたことと比較すれば規模は大きく感じられない事とは思いますが、派遣人員は1000名まで拡充する方針が示されており、これにより輸送機と輸送艦による部隊展開がさらに強化されることとなります。
Himg_1041 東日本大震災を教訓に、輸送機の近代化などが行われているところですが、現段階では大きな輸送力を有するC-2は部隊配備に至っておらず、加えて輸送艦の不足についても抜本的な対応を行っていませんでした。特に輸送艦の不足、地方隊の輸送能力の欠如は著しく、自衛艦隊の輸送艦おおすみ型3隻のみ、という状態となっていますが、今さら言うのも何ではありますが、この輸送能力の限界が今回如実に出た、というところでしょうか。離島への部隊展開は島嶼部防衛とも重なりますので、戦力投射能力、このあたり、新防衛大綱には明示しなければならないものなのかもしれません。
Himg_6325 さて。ラハールは火山灰堆積地域で発生し、特に今回のように既に表層部がラハールにより樹木ごと取り払われ露出したところでは発生しやすくなると共に、ラハール災害が発生していない地位いでも雨量によっては既に降り注いだ部分と共に発生しやすくなります。そして台風が27号とともに新しく発生した28号の接近により、今週末、東日本太平洋岸は大荒れが予想されます。時間は不十分で、装備面でも十分とは言い難いものではありますが、自衛隊は警察や消防と共に行方不明者の捜索に今後も全力で対応してゆく、とのこと。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする