北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:無人汎用車へ特科観測、重要施設及び災害巡回任務付与は不可能か

2013-10-29 22:03:49 | 先端軍事テクノロジー

◆我が国が最先端且つ出遅れていない分野
 無人機と自衛隊の関係で、先日観測ヘリコプターと無人機についての話題を紹介した際の備忘録も含めて。 
Img_3978 東日本大震災、その原子力災害における避難区域において窃盗事件が多発した旨を記憶していたのと、昨年度の防衛省技術研究本部研究発表会に無人走行可能なジムニーが展示されていたと聞き、自衛隊がこの種の車両を無人哨戒車両として、もちろん警察でもいいのですが、大量に運用していたならば、この種の被害は防げたのではないか、と、ふたつの出来事を重ねて考えたことがあります。
Dimg_6430 昨今、特にトヨタ自動車やグーグルなどが自動運転車両の技術実証車を相次ぎ試験走行に供しています。この技術は、現段階では技術的に整備中の分野であり、加えて事故発生時の責任の所在が、運転者を自動運転としていることで、管理者である所有者に及ぶのか、メーカーの制御システムに責任があるのか、道路行政の欠陥を指摘するのかが不明確であるため、普及にはまだ少し時間を要する分野ではあるようですけれども。
Oimg_5034 さて、無人車両ですが、技術研究本部が研究試作した無人ジムニーは、必要な地域までは隊員が乗車し自走させること、もしくは軽量な車両ですので、輸送車両や航空機でも一度に大量を輸送することが出来ますし、例えば平時の公道上でも、連結技術などを開発すれば、一名の運転者により複数の車両を連結し、走行することが可能となります。そして有事の際にも、様々な用途があることは確かでしょう。
Gimg_0297 無人ジムニー、軽オフロード車の傑作で、自衛隊の業務車両として一部が採用されるほか、メーカーであるスズキ自動車が一大拠点を構築したインドではインド軍が少ない搭載量の中で、携帯式対戦車ミサイルの自走発射装置や携帯無反動砲の機動車両として重宝しており、この汎用車両に遠隔管制装置を取り付けただけ、という、技術試作ではありますが、そのまま汎用車両用管制装置として部隊使用許可を申請できるほどのものとして完成していました。
Fimg_6540 無人車両は、武力攻撃事態に際しては、哨戒任務、特に後方でのゲリラコマンドーに対する警戒や、航空基地にレーダーサイト、弾薬補給処や艦船基地などの重要施設でありつつ、警備要員に限界がある防衛施設を哨戒することが出来るほか、輸送部隊の前衛として後方からの兵站部隊の露払い、彼我混交の競合区域第一線への弾薬や水に食料などの強行輸送、緊急時の負傷者後方搬送など、まあ挙げてみるだけで切が無いほどに用途は幅広い。
Kimg_0478 国際平和維持活動に際しても、宿営地付近の機動巡察、輸送コンボイの簡易爆発物IEDに対する先導囮車両、待ち伏せ攻撃を受けた際の盾、等など用途は広いですし、平時に国内では演習場の機動巡察、これは特にオフロード車ユーザーの演習地区不法侵入に対する警戒任務にも運用可能です。また、非常に稀有な事例ですが、原子力災害被災地への巡回、火山災害住民退避区域への巡回、治安出動ではありませんので防犯巡回とは言えず、阪神大震災のように民心安定協力、としなければなりませんが、用途は広いわけです。
Img_05_33 また、先日紹介した、観測ヘリコプターと無人機の関係で指摘した、無人機よりも無人観測車の方が現実的、という部分で、無人機は滞空型無人機や航続距離の大きな無人機の機体規模は大きいため墜落すれば、場所によっては無視できない被害が出ると共に、法律上の制約が大きく、特に航空法上の位置づけが不明確であると共に、市街地などを任務区域として飛行する機会が多い自衛隊にとり、まだまだ事故発生率は、アフガニスタンでのISAF派遣部隊での実運用などを踏まえれば看過できる水準ではありません。
Hbimg_1256 対して、無人車両であれば、軽量ですので多用途ヘリコプターでの空輸も機種によては可能ですし、輸送ヘリコプターでは多数を同時に空輸可能です。有人ヘリコプターを無人飛行できる構造として、必要に応じ無人運用する構造の機体を開発したとしても、飛行中に乗り捨てて落下傘降下することは不可能ですが、無人車両であれば、市街地などを有人走行し、演習場や有事の際の競合地域へ隣接する地域に進入する際に乗り捨てて、複数台分の操作人員のみを高機動車で回収することも可能です。
Img_3360 特科火砲の前進観測は、伸縮式センサーを無人車両に搭載し、複数の車両を多くの山頂部などの観測点に展開し、無人観測網を構築すれば、無人機ほど現行法に差障らない範囲で、有効な、そして長期間運用可能な特科火砲の前進観測網を構築可能です。平時の駐屯地からの演習場までの進出も、有事の際の運用も弊害が少なく、連結輸送を行うことで運用人員は最小限とできるほか、遠隔操作人員が平時の路上機動時に牽引輸送を行う、という方式も考えられるでしょう。
Nimg_2272 海外では、米軍やイスラエル軍を中心に打撃力を有する車両を開発していますが、技術面でこの種の能力を付与させるかは判断が時期尚早であるものの、巡回と監視と先導に用いることが出来る無人車両の価値、というものは防衛上利点が大きく、加えて災害時にも巡回車両に用いることが出来ます。もちろん、非装甲車ですので、機銃掃射や対戦車火器により簡単に破壊されてしまいますが、有人車に不可能な任務が遂行でき、原子力災害はもちろん、火砕流やラハールの危険がある地域では有人巡回が危険であり難しいですが、無人車両ならば運用が可能、逃げ遅れた被災者を同乗させ退避することも可能で、用途は広いことだけは確かです。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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