北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

四演習同時展開、九州南西諸島・本州北部同時侵攻対処主眼に協同転地・方面実動演習

2013-10-24 23:57:42 | 防衛・安全保障
◆直前には南海トラフ地震対処も想定
 防衛省陸上自衛隊は、今月から来月にかけ、四件の演習を同時に展開します。更に日米統合防災訓練も実施する為、同時五演習実施、といえるかもしれません。
Bimg_7346 四演習とは、平成25年度北部方面隊協同転地演習、平成25年度東北方面隊協同転地演習、平成25年度西部方面隊実動演習、平成25年度東北方面隊実動演習以上の四演習です。そしてもう一つは平成25年度日米共同統合防災訓練で、首都圏では東部方面隊が中央観閲式を実施するため、陸上自衛隊の北部、東北、東部、中部、西部、各方面隊が同時に演習や観閲式を実施する、という非常に大きな訓練の同時実施です。
Gimg_0048 これは、大まかな流れとして、九州沖縄を防衛警備管区とする西部方面隊管内へ武力攻撃事案が発生し、西部方面隊隷下の部隊が防衛行動を展開しつつ、防衛大臣直轄の緊急展開部隊である中央即応集団と共に東北方面隊第6師団、北部方面隊第2師団が増援に向かい、その一方、防衛上の空白となった東北地方にも脅威が及び、併せて東北方面隊隷下部隊と中央即応集団が対処する、というもの。
Gimg_1048 併せて、東部方面隊管区では中央観閲式、中部方面隊管区では米軍や海上自衛隊及び航空自衛隊と共に南海トラフ地震対処演習として日米統合防災訓練が今週末実施されることとなっており、勿論台風の影響はありますが、時期的に南海トラフ地震対処の行動を採りつつ、南西諸島への軍事圧力が増大、このほかの地域に対しても脅威度が増大しつつ防衛行動を採る、という極めて厳しい状況想定が朧ながらも見えてまいりました。それでは、個々の演習の概要を観てみましょう。
Img_0046 平成25年度日米共同統合防災訓練は明日実施され、こちらは南海トラフ地震を想定、統裁官に中部方面総監堀口英利陸将が就き、中国四国地方及び九州の周辺区域と海域で実施、陸上自衛隊は人員200名と航空機2機に車両20両が参加、海上自衛隊は呉地方隊と自衛艦隊より、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、ほか、航空機2機など200名が参加、航空自衛隊は航空総隊より100名と航空機5機が参加し、米海兵隊からは第三海兵機動展開部隊よりMV-22が2機参加、我が国での防災訓練へMV-22が参加するのは今回が初めて。
Gimg_9378 北部方面隊協同転地演習は、北部方面区から西部方面区への展開が実施され、西部方面管区の大矢野原演習場と日出生台演習場への展開と訓練が実施される、とのこと。統裁官は北部方面総監田邉揮司良陸将で、参加部隊は第2師団より1個普通科連隊基幹の人員850名と車両350両が参加します。参加部隊には戦車6両及び自走榴弾砲3門が含まれており、長躯九州まで90式戦車と99式自走榴弾砲が展開するもよう。
Kimg_0911 訓練は10月22日から11月1日にかけてを長距離機動訓練とし、自走や輸送艦に民間輸送船、ヘリコプターや輸送機に民間航空機などを用いて北海道から九州へ展開、11月2日から11月18日の期間を防御訓練等に重点を置いた演習場等における訓練を日出生台演習場などにおいて展開、上記訓練終了後に復路として11月19日から11月25日までの期間を以て道北の駐屯地まで戻ることとなります。
Simg_9022 東北方面隊協同転地演習は、東北方面総監田中敏明陸将を統裁官として11月1日から12月2日までの期間に実施、参加部隊として第6師団の1個普通科連隊基幹の部隊が展開します。展開部隊の規模は人員2000名、車両850両、更に航空機7機というもので、航空機はOH-6DとUH-1Jが参加するとのこと。ただ、現在第6師団は伊豆大島へ一部部隊が災害派遣中ですので、参加規模は変更があるかもしれません。
Aimg_0792 日程については、長距離機動訓練を11月1日から11月8日にかけ往路として実施、その上で演習場等における訓練を11月9日から11月26日にかけ実施し、主として防御訓練と射撃訓練等を行うとの発表です。訓練終了後、復路に11月27日から12月2日をかけ実施、足掛け一ヶ月以上の訓練を完了させる計画です。
Fimg_6652 平成25年度西部方面隊実動演習は、上記協同転地演習と連動して実施され、日出生台演習場においてその主要な展開が予定されています。訓練統裁官にはイラク派遣部隊長として名高い西部方面総監番匠幸一郎陸将が就き、訓練参加部隊は西部方面隊より第8師団、第4師団、第15旅団、ほか方面隊直轄部隊。更に増援として中央即応集団、北海道の第2師団、東北南部の第6師団が参加すると発表されました。
Mimg_0983 期間は11月1日から11月18日にかけてで、訓練参加規模は人員5600名と車両1600両に航空機30機、参加航空機としてはUH-60JA、CH-47JA、AH-64Dと陸上自衛隊の最精鋭機種が並び、島嶼侵攻対処訓練、基地警備訓練、兵站施設の開設訓練、射撃訓練等を演練します。方面隊の各種事態における対処能力の向上を図るとの訓練主眼が掲げられており、日出生台演習場を離島に見立てた展開を行うのでしょう。
Img_0879 平成25年度東北方面隊実動演習は、九州で大演習が展開されている最中、11月1日から12月2日にかけ、統裁官を東北方面総監田中敏明陸将として実施されます。明示はされていませんが、時期的に九州への増援部隊を展開している最中に、その部隊の空白地帯に対し軍事的圧力が生じたという想定が考えられます。我が国への武力攻撃事態に際しては、その空白地帯に対しても牽制のための攻撃の可能性は無視できず、こうした訓練の重要性はやはり大きい。
Img_0435 訓練は、王城寺原演習場と東北方面区内各駐屯地において実施されることとなっていて、参加部隊へは東北方面隊及び中央即応集団より人員3700名と車両400両、航空機5機が参加し、防御訓練と基地等警備訓練及び警戒監視訓練、更に射撃訓練等が予定されています。各駐屯地、とありますので、警備訓練なども重ねて広範囲で行う事となるのかもしれません。
Gimg_0234 一連の動きを包括しますと、南海トラフ地震対処訓練に続いて、協同転地演習で部隊を展開させ、そこで方面隊演習として西方への軍事圧力に対処していたところを、東北方にも軍事的圧力が掛った、しかも中央観閲式で部隊が動いているときなのに、というかなり盛り沢山と言いますか、厳しい想定を行っているところが見えてきます。あわせて、同時kには自衛隊統合演習が行われます。
Uimg_2400 なお、現在、陸海空自衛隊は東部方面総監を司令官に統合任務部隊を編成し、伊豆大島へ大規模な災害派遣を実施中です。加えて、訓練参加部隊は上記の通りですが、これは訓練参加の戦闘部隊の数字であり、後方支援部隊や演習場警備、その他の支援へ数字よりも多くの部隊が参加している、という事も併せて記しておきましょう。ここまで厳しい想定の下で訓練を行えば、本当の最悪の状況にも対処できる、というものですが、これが抑止力となり、有事を回避出来る事も演習の最大の目的と言えるかもしれませんね。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする