北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:携行監視装置強化データリンク能力付与か陳腐化か、オートバイ斥候の今後

2013-10-19 15:20:27 | 防衛・安全保障

◆技術は世界最高水準
 最初にお知らせ、明日は那覇駐屯地第15旅団祭です、お教えいただきましたが、当方が行こうと航空券を調べたら意外に高く断念して、そのまま失念していました、申し訳ない。さて、陸上自衛隊のオートバイ斥候は、恐らくその技量で最高水準の能力があると思うのですが、一つ。
Sdimg_4291 自衛隊の偵察オートバイ、オートバイを偵察に重宝しているのは、特殊部隊の情報収集を除けばスウェーデン陸軍ぐらいのものだと思います。ただ、1980年代には米軍がM-60A3戦車の小隊長車について、後部にオートバイを搭載し、指揮官の連絡任務等に活用する検討が行われていました。また、夜戦憲兵隊ではオートバイの重要性は大きかったわけで、日本だけ独自の装備、というわけではありません。
Mimg_1631 さて、最新装備、機動戦闘車は、偵察教導隊の隊員が報道公開に際し乗車していたとのことです。87式偵察警戒車の後継として機動戦闘車が偵察隊へ各5両程度配備されることとなるのでしょうか。これまで、87式偵察警戒車は25mm機関砲しか搭載していませんでしたので、軽装甲車部隊との遭遇は兎も角、敵戦車と遭遇した時には過酷な運命が予想されました。しかし、105mm砲を持つ機動戦闘車ならば違う。
Img_9539 こうしますと、今後斥候小隊の任務はどうなるのでしょうか。陸上自衛隊は偵察隊の斥候小隊へオートバイを装備してきました。オートバイは機動力が高く、地皺を利用すれば非常な脅威状況下でも運用が可能ですし、脅威と遭遇した際には小銃で威嚇しつつ、相手の火力が大きなときには俊足で離脱することが可能です。しかし、近年火器管制装置が高性能化しているためオートバイで逃げ切れるのか、という状況もあり得る。
Img_4100 特にオートバイ斥候に際しては、五感に頼り、乗員の五感の他は双眼鏡程度を以て対応することを考えており、このほかは携帯暗視装置と無線装置のみを装備し偵察しています。ただ、機動戦闘車のように、10式戦車と同等とされる高度な艦敷材を有する車両が偵察隊へ配備されたならば、機材の性能として双眼鏡に支援された五感による情報収集能力と比肩できるのか、と。
Kimg_6460 更に、近年の偵察部隊、各国の装備を観ますと電子装備を搭載した戦場監視装置を装甲車に搭載し、威力偵察よりはセンサーを戦域各所に展開させることで戦域情報を把握するという手法へ転換しています。ドイツのフェネク装甲偵察車やスイスのイーグル偵察車等がこの典型です。米軍は、戦車が第一線に展開しますので、M-1A2戦車のC4I能力が第一線の情報収集に当たっています。あまりこの部分を突き付けると、情報科の移動監視隊と重ならないか、とか、航空偵察は機甲科の偵察隊ではなく航空科、などいわれそうですが、ここはひとつ偵察に特化して。
Img_4397 センサー頼りの偵察任務、と言いましてもこれが世界の趨勢らしい、ということは分かりながら、他方で、米軍をはじめ各国軍隊は軍事行動以前に特殊部隊を展開させ、敵情を捜索し情報送信を行った上で任務に展開していますので、特殊部隊はセンサー類を保有していても携行可能なものに限られるわけでもあり、オートバイ斥候そのものの持つ五感による偵察という重要性を損なうわけではないと考えるのですが、しかしセンサー、というものも趨勢らしい。
Fimg_6179 陸上自衛隊も装輪装甲車として、89式装甲戦闘車と87式偵察警戒車を置き換える近接戦闘車が開発中です。近接戦闘車と機動戦闘車の任務区分がどういう形となるのかは未知数ですが、近接戦闘車は89式装甲戦闘車所要は大口径機関砲を備えた砲塔とその後部に人員区画を、87式偵察警戒車後継車については後部人員区画に伸縮式マスト基部と偵察員室を配置し、伸縮マスト上のセンサーにより偵察を行うことを構想しているとのこと。
Img_0056 センサーによる偵察、例えば軽装甲機動車等であれば車上に偵察器材を搭載し、情報収集を行うことが出きるのですがオートバイ斥候では同様のことを行うことが出来るのか、と問われれば、オートバイは搭載能力に大きな制限が課せられているうえ、五感では収集できる能力に限度があり、音声通信では伝えられる情報に限界があります。つまり、偵察とはデータリンクが必要となる中で、オートバイ斥候では対応できるのか、という話になります。
Img_6228 しかし、オートバイ斥候についてですが、その技量には大きなものがありますので、例えば携帯式画像データ収集装置と、情報伝送用の器材を携行することが出来たならば、オートバイ斥候は、何よりも軽装甲機動車よりも小回りが利きますから、隠密偵察が可能となります。つまり、データリンク能力を付与すればオートバイ斥候はその特性を最大限生かすことが出来るでしょう。
Simg_3210 オートバイの利点はこのほかにもあり、確実に徒歩では考えられない遠距離を迅速に展開できる点に加え、小型ボートを利用すれば渡河は小型車両よりもはるかに容易であり、加えてUH-1のような多用途ヘリコプターでも緊急展開が可能です。そして車両よりも少量の燃料でも行動半径が大きい。レンジャーのヘリボーン投入よりも迅速で広範囲を展開可能、最小限の後方支援で、これらは大きい利点、ということ。
Yimg_7529 オートバイへのデータリンク能力、この方式で問題点は、データ伝送について、オートバイに搭載できる装備では、その伝送距離に限界がある、という事、携行監視機材の重量に限界がある、という事、これはオートバイである以上乗り越えられません。しかし、軽装甲機動車等のような装甲車両をデータ通信中継車両として、また、必要な電源などへの支援車両として、運用することが出来れば、つまりオートバイ斥候の支援車両のようなものと組ませることが出来れば、解決できます。
Kimg_8143 言い換えればデータリンク能力へどうにか組み込むことが出来なければ、オートバイ斥候はその高度な技術が最大限活かすことが出来なくなります。ただ、これは余りに勿体無く、そして都市部や山間部などの特殊な戦域では、オートバイの方が機動力として役立つ部分も大きくありますので、多少難しくとも、オートバイ斥候へのデータリンク能力、ネットワークへの加入と、その支援車両というようなものとの連携を考慮するべきだ、と考えます。なによりも、第一級の技量を有するオートバイ偵察隊員の技量を最大限発揮できる体制を構築しないのは、勿体無い。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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