![]() | 韓流時代劇と朝鮮史の真実 (扶桑社新書) |
宮脇淳子 | |
扶桑社 |
韓流にハマって以来の疑問のひとつに、なぜ韓国ドラマは、世界の名作の題名とドラマの題名に使うのかというのがあります。思いつくまま、「パリの恋人」「エデンの東」「シークレットガーデン(秘密の花園)」等々。もとのお話と似ても似つかないような韓国現代ドラマになっているようです。
この疑問について答えてくれる本にまだ出会っていないけど、韓国人のメンタリティーを知るにおよんで、おおよその見当はついていたりします。
疑問としては現象がニッチ過ぎて、評論されたりしないことなのだろうなあとも思います。
今回取り上げた本のテーマは時代劇。世界の名作のタイトルをつけるのは、主に現代ドラマなので、題名のつけ方については関係ないけれども、半島の歴史や韓国人のメンタリティーに触れているので、興味深く面白く読みました。
韓国の時代劇では、日本は倭寇ぐらいしか出てこなくて、扱いがかなりひどいと思っていました。この本によれば、日本だけでなく半島に関わった周辺国はほとんどが史実無視のようなドラマ制作らしいこともわかりました。
また、半島は貧しくて、衣服を染める高価な染料を入手することができなくて、庶民の衣服は、時代劇の衣装のようにカラフルだったことはなかったそうです。しかも、日本は室町時代から都の庶民は色付きの衣服を着ることができていたそうで、豊臣秀吉の朝鮮出兵で日本の衣服をみて、色付きの服を着るのは倭奴(日本人)だというように蔑まれるようなことだったとか。
そういえば、私は1978年公開の韓国映画「族譜」を観たことがあります。
第2次世界大戦終戦直前の半島が舞台の映画で、内容もさることながら、その映画で若い女性が着ているチマチョゴリに衝撃を受けました。地方有力者の家柄の娘が着ていたのは、丈がひざ上ぐらいの、色のない白のチマチョゴリでした。女優が長身で、丈が短かかったのかしら。韓国時代劇に出てくるドレスのようなチマチョゴリとは全然違います。
終戦から30年後ぐらいに映画は制作されました。まだ30数年前を知る人が多数生きていたでしょうから、有力者の娘であったとしても生成りの白のツンツルテンのようなチマチョゴリを着ていたのだと思います。華やかなドレスのようなチマチョゴリでは、当時を知る人から見れば、映画という虚構であったとしても、現実感が乏しくなってしまいます。
韓国ドラマを観ていて、はっきりと疑問にならなくても、あれ?と思っていたことのいくつかの答えがみつかるような本です。