はぎやまのりへいの日常

読書、映画、美術展、そしてキャリア教育。
好奇心と愛で書き綴ります。

Vol.345 妖怪たちのいるところ

2018-12-29 09:36:01 | 妖怪



今年(2018年)11月に角川書店から「妖怪たちのいるところ」という画集が出版された。

絵は水木しげる
文が小松和彦という最強コンビだ。

ご存知の通り、
水木しげる先生は2015年に亡くなっている。
水木先生の遺稿に
水木先生の意思を継ぐ人たちが着色した作品である。


僕が生まれた町は、
佐野ラーメンで有名な佐野市に近い
栃木県の田舎町で、
電車は1時間に1本、
バスは1日に2本だった。

山も川も森も林も近くにあって、
森には神社があり、
山では鳥が鳴き、
小川の小径を歩くと
蛙が水に次々に飛び込んでいく。

この町には
間違いなく妖怪が息づいていた。

僕が子どもの頃は、
まだ子どもたちも若い人も
それなりに住んでいて、
夏や秋には祭りが行われた。
花火大会だってあった。

商店街には八百屋も肉屋も魚屋もあり、
都心では聞いたことのないような、
個人経営のスーパーマーケットが何軒かあった。

町の真ん中に本屋があって、
僕は学校が終わると
本屋にいって、よく立ち読みをしていた。

今思えば、
決して大きくはない本屋で、
本の数も多いわけではなかったけれど、
当時の僕にとっては、
半日でも1日でも時間を過ごせる、
素敵な遊び場だった。


その本屋で水木先生の本と出会った。

初めて出会った水木しげる作品は、
テレビで見たゲゲゲの鬼太郎だったけれど、
初めて手にした水木しげる先生の本は、
小学館のなんでも入門シリーズの
「妖怪なんでも入門」だった。


身近に妖怪を感じられる町だったからか、
「妖怪なんでも入門」は幼い僕に
十分すぎる恐怖を与えた。

豆腐小僧や座敷わらしなど、
愛らしい妖怪がたくさん描かれているが、
雪女やはたおんりょうなど
恐ろしげな絵がたくさんあった。

愛らしい妖怪たちも
その独特なタッチによって、
おどろおどろした感じを
醸し出していた。

お気に入りの本で、
小学校に持って行って、
友だちに落書きをされたりもしたが、
ずっと大切にしていた。

しかし、
年を重ね、
引越しなどを繰り返すうちに、
いつの間にかどこかへ失くしてしまった。

今は復刻版の
「水木しげる 妖怪大百科」
を持っていて、当時を懐かしんでいる。



「妖怪たちのいるところ」

タイトルは
「かいじゅうたちのいるところ」
から取られているのだろう。

山や川や、村や寺などの風景の中に
いくつかの妖怪が複数描かれている。

妖怪のマッピングといったところだ。

線も着色も相変わらず丁寧で、
絵としてはパーフェクトに美しいのだけれど、
なぜだろう、小学生の頃に感じた
怖さを感じることができない。

それは
自分が大人になってしまったこと、
世の中を多少見てきてしまったこと、
そして今住んでいる場所など、
いくつかの要素が大きく変わっていることが
原因なのだろうけど、
絵自体から感じられるパワーが
変化していることもまた
事実ではあるのだろう。








Vol.335 稲川淳二 怪談ナイト

2018-12-08 08:10:24 | 妖怪



長男と弟夫婦とで稲川淳二の怪談を聴きにいった。
弟は怪談に詳しくて、
よくうちの子どもたちに話してくれる。

長男が稲川淳二の話を聴きたいなというので調べたら、
大宮での公演があったのでチケットを取った。

ギリギリになって、
長男の学校の文化祭の日だということがわかり、
学校から帰ってくるのを待って出かけたので、
前半の30分くらいが間に合わなかった。

以前、落語を聴きにいった会場と同じだったので、
客席のイメージは分かっていたのだが、
怪談を語るということで客席内は演出で真っ暗にしてある。

暗闇の中を係員に案内されて、
自分の席へとたどり着いた。
席番号が暗くて&老眼で確認できず、
果たしてここであっているのか?
弟夫婦は一体どこにいるのか?
と思ったら、ちゃんと隣にいた。

稲川淳二はノドの調子が良くないようだったが、
喋りは流暢だった。

もう何十年もやっていて、
お客さんとの間でルールがあるらしく、
流れやスタイルが完成しているみたいだった。
でも、思ったほど怖くはなかった。
まあ、1回聴いてみたかったので良かった。


終わってから、おでんで一杯やった。
9月の頭でまだまだ暑い時だったが、
「夏の終わりに怪談とおでん」なんて、
ちょっといいもんだ。

そういえば、
今夜はおでんらしい。





明日のブログ予告

練馬JASS祭

Vol.332 TOKYO妖怪ナイトVol.2 妖怪造形大賞イベント

2018-12-06 23:56:08 | 妖怪


自分は美大卒でも、造形がすごく得意なわけでもないのだが、
四万十川河童造形大賞というコンテストに作品を応募したことがある。

広告代理店に勤務していた時に、
東京都内にある美大の仕事を請け負っていて、
アポの時間まで、
大学の学生ラウンジで時間をつぶすことがあった。
学生ラウンジには学生向けのチラシがたくさん置いてあって、
美大なので絵画や造形や写真などの作品募集の内容が多かった。
その中の一つが、海洋堂のミュージアムが主催する四万十川河童造形大賞だった。

何か賞をとったとかそういうお話ではないが、
妖怪造形大賞と聞いて思い出した。


自分は小学生の時から妖怪が大好きで、
水木しげるの本をたくさん持っている。

「夏はお化けだな」と、
毎年夏になると妖怪やお化けの美術展やイベントを探している。

7月21日、今年はTOKYO妖怪ナイトという魅力的な名前のイベントを見つけてしまい、
迷うことなく参加してきた。


登壇者は柳生忠平さんという妖怪画家、
香川雅信さんという妖怪博士にして歴史博物館の学芸課長、
中村元さんという妖怪造形大賞の総合プロデューサー、
そして司会がテリー植田さんという方。

小豆島迷路のまち妖怪プロジェクト実行委員会が主催する、
妖怪造形大賞の入賞作品がステージに展示され、
作品についての評価や感想を語るゆるいトークイベントで
なかなか楽しかった。

ちなみに妖怪造形大賞の審査員には、
なんでも鑑定団でおなじみの北原照久さんや、
海洋堂の宮脇社長、
漫画家の美内すずえさんなどがいる。


このブログを書くためにノートを見たら、
こんなことがメモしてあった。

河童は緑色じゃない
天狗の鼻は高くない
児啼爺はジジイじゃない
砂かけ婆はババアじゃない

妖怪の正体の話かな。









次回のブログ予告

フジオロックフェスティバル

Vol.273 藤子・F ・不二雄展&大妖怪展

2013-08-31 06:47:02 | 妖怪
   



 来週の月曜日から子どもたちの学校、幼稚園がはじまる。
 土日はミニバスの練習があるし町も混雑するだろうから、平日の昨日、お休みをいただいて子どもたちを連れて夏休みの思い出づくりに出かけた。

 まずは東京タワーで開催している「 生誕80周年記念 藤子・F ・不二雄展」。
 子どもたちにしてみれば生まれて初めての東京タワーなので、大展望台とのセット券を購入。子ども向けの展示会とあって、4歳以上の幼児もしっかり料金を取られた。
 屋上の展覧会の入り口から入場すると、ドラえもんの団体が僕たちを迎えてくれる。それぞれのドラえもんはポケットから出した道具を手にしている。気に入った道具を持ったドラえもんの前で記念撮影。
 東京タワーの中へ入るとまず最初が「ふしぎSFシアター」。プロジェクションマッピングを使った映像はファンタスティック。子どもも大人も大感動。上映時間はわずか5分程度で短いのだけど、入場料の半分くらいはこの映像を見るためのものだろう。
 おみやげショップでは楽しいグッズがたくさん。保護者の方は覚悟して通過すべき恐怖のエリアだ。子どもたちもあれ欲しい、これ欲しいと騒ぐが、自分の中にも「懐かしい」という敵が存在する。写真はパーマン1号のピンバッジ。これは欲しい。

 折角なので、さらに別料金をはらって240mの高さの特別展望台にも上って、東京タワーを後にする。

 東京駅で妻と待ち合わせをして、一緒にお昼ご飯を食べて、そして再び別行動。
 今度は三井記念美術館で開催している「 大妖怪展-鬼と妖怪そしてゲゲゲ」へ。 
 こちらは夏休みの催しということで明日が最終日。ギリギリ見れて良かった。
 浮世絵や絵双紙などのお化け画の展示はショーケースに入っているものを上から観るスタイルなので下の子は背が届かなくて見えない。「見えないよ~。」とうるさいので子どもの目線を試してみたらなるほど真横から見るような状態だった。ということで、15kgの次男坊を展示会場内をほとんど抱っこしてまわったものだから、久しぶりに腰が痛くなった。この現象こそが「こなき爺」なのかも知れない。
 小学生には絵をしっかり見て回るためのワークシートのサービスがある。長男は鉛筆片手にメモを取りながら鑑賞。藤子不二雄展の時も思ったけれど、小5にもなるときちんと展示を楽しめるようになる。いつの間にか絵を一枚一枚しっかりと観られるようになっていたことにうれしく思った。
 展示の最終コーナーは現代の妖怪画ということで水木しげる翁の有名な妖怪画の原画が展示されていた。児啼爺、砂かけ婆、小豆洗い、ぬらりひょん、誰もが一度は見たことがあるあの有名な絵たち。水木しげる展には何度も足を運んでいるので、原画も何回も観ているけれど、何回観ても観るたびに感動するもんだ。

 家に帰ってから子どもたちに質問。
父:「何が良かった?」
次男坊:「ドラえもんの映画!」(ふしぎSFシアターのこと)
長男:「水木しげるの絵。」

よしよし、しっかり何が良かったか振り返れるようになってきたね。

Vol.211 遠野の河童と四万十川のカッパ

2012-06-21 06:09:06 | 妖怪
 


 この週末、仕事と言うには楽し過ぎであるけれど、震災の被災地の視察と他大学や企業との情報交換、懇親を目的として岩手へ行ってきた。
 
 新幹線で新花巻まで行って、そこから参加者メンバーの自家用車に分乗してツアーがスタート。
 釜石、大槌の衝撃的な震災の傷跡を視察して、遠野で勉強会をして、そこで宿泊する。

 遠野へ行くのは実は2回目だ。
 1回目は4年前。
 「河童のクゥと夏休み」が上映された翌年、「ゲゲゲの鬼太郎」がTVでオンエアされていて妖怪にはまっていた長男と、40年前に「水木しげるの妖怪なんでも入門」を手にして以来、妖怪に取り憑かれてしまった僕とで、今年は遠野へ旅行しようという話が盛り上がり、実現したのだった。

 4年前は遠野では宿泊しなかったのだけれど、今回はたかむろ水光園というところに宿泊した。たかむろ水光園は上水道の浄水場を利用した施設で、庭園があり、宴会や入浴、宿泊もできる。館内に水道の資料展示などもされている。我々は13人での宿泊だったので、男性10名は「曲り家」に宿泊させてもらった。
 曲り家とは、母屋と馬屋がL時型にくっついた独特の建築様式で、遠野の南部曲り家は曲り家の代名詞である。
 広くて、雰囲気があり、懐かしい匂いがして、夜にはいろり端に集まってみんなで話をして、最高に楽しい宿泊だった。




 たかむろ水光園のちかくに「かっぱ淵」と「伝承園」があり翌日、次の目的地に向かう途中で立ち寄った。
 かっぱ淵も伝承園も前回の旅行の際に観光している。もちろん凡そはその時とあまり変わりはなかったけれど、かっぱ淵には「語り部くん」というモバイル端末を使った遠野の観光ガイドシステムが設置されていた。http://www.tonojikan.jp/kanko/
 また、キュウリを吊るした釣り竿が設置されていて「名人専用」とあった 。おそらくまだ一匹も釣れてはいないのだけれど、かっぱ釣りの名人がいるらしい。今実施中の、いわてデスティネーションキャンペーンのポスターに「かっぱは釣るもの」と書かれていた。名コピーだ。
 遠野のかっぱは顔が赤いのだそうだ。宴会後の風呂上がり、鏡の中に遠野のかっぱの幻を見たような、見なかったような。




 旅を終えて帰宅してみると1通の封筒が届いていた。送り先は高知県の株式会社奇想天外。中を開けてみると、僕の名前が入った海洋堂かっぱ館の特別会員の会員証が同封されていた。



 今年7月に海洋堂かっぱ館がオープンし、特別会員は入場無料で入館できるらしい。
 実は2年前の「四万十川カッパ造形大賞」に作品を応募したのである。美大生などの本格的な作品が多く応募され、僕の稚拙な作品はもちろん入賞することなどなかったのだけれど、応募された全作品がかっぱ館に展示されるらしい。高知県なのでなかなか行く機会もないだろうけど、いつか行ってみたいと思っている。