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難民キャラバン

2021-01-23 | 日記

米国の新大統領就任が近づいてから、中米諸国でメキシコを経由して米国へと向かおうとする多くの人々の移動が起きているという。その中には少年少女、そして幼い子供連れの若い人々が多いのだと報じられている。もともとキャラバンという言葉はもっと違う意味で使われていたが、最近はキャラバンというと中米各国を通過して北上・米国境を目指す大規模な "難民集団" のことを意味する言葉に変わってしまいつつある。米国の大統領が変わったからといって、米国への入国(密入国)が容易になったり難民認定の基準が緩和されるかどうかは分からない。前大統領の就任の時には「越境の監視が厳重になる前に」といってキャラバンが起こり、今度は緩和されることを期待してキャラバンが発生している。

 中南米諸国の貧困や政治的不安定は、もともと半植民地のようにこの地域を支配して来た米国の責任が大きいと誰もが感じているだろう。独裁的支配者を通じて米国の大資本が大きな利益を得る一方で、それらの国が独自で経済的自立を果たすことを阻んで来た国が、結局は大きな矛盾にさらされている。密入国にしても、彼らの労働力に頼る産業が国内には存在していて、入国すれば働く場所があり一定の稼ぎがあるという現実がさらなる密入国者を生んでいることは、大統領選の度に多くの報道番組でも示唆されて来た。

 現在世界では様々な格差が拡大していると問題視されているが、貧富の格差は住環境や富の所有の差だけでなく、教育格差、医療格差、住環境の衛生的格差、犯罪に晒される危険性に関する格差、情報の格差を次々に生み出し、それぞれが互いに相乗的に作用して全ての格差を拡大し続けていると感じられる。そんな世界において、米国の国境は世に存在する様々な格差を隔てる障壁の象徴となってしまった感がある。報道映像でキャラバンの人々を見ていると、これといって武器も装備も持たない人々の群れが時には軍や警察とも揉み合いながら、いくつもの国境をものともせずに(非合法的に)越えていく。ある程度の人数を逮捕して自国に送り返すことは可能だろうが、その数がさらに膨らんで行った時にはどうやってその越境を移動を制止できるのだろうか。

 少しくらいの暴力や、誘拐・人身売買に出会う危険、飢えや病気への怖れを凌駕して北上を続けさせるだけの動機が、キャラバンを形成する人々自身の故郷・出身地・国々に存在している。今後世界での様々な格差が拡がれば拡がるだけ、その動機はさらに大きくなる一方だろう。米国境に象徴される「格差を維持し、格差の異なる世界を隔離するための壁」は、いつか崩壊する日を迎えるのだろうか? それとも、一気にカタストロフィーを迎える崩壊ではなく、ゆるやかに障壁を取り除く努力が始まるのだろうか。フランス革命やロシア革命を引き起こして来た歴史の成り行きを見ても、格差で優位に立つ者達は結局、格差の是正より格差を守り維持することに勤しむものらしい。思想的背景やプロパガンダの文句こそ違えども、いずれ一気に格差崩壊へと向かう混乱を招く日まで、それでもなお人は格差を隔てる恒久的な「壁」の補強が可能だと考えがちなのだろう。