日本の沿岸地帯で「磯焼け」が問題となり、幾つかの特集やニュースで取り上げられたのは、「白神山地を守れ(後に世界遺産に登録)」と盛んに言われていた頃だと記憶する。同時に「森を守る漁師」があちこちで話題となり、「豊かな漁場が豊かな海を育てる」という文脈の中で磯焼けの問題が語られることもあった。
その頃にも既に「地球温暖化」「海水温の上昇」「海産生物の北上」などが指摘されており、「地球温暖化による海水温上昇」が磯焼けの原因候補筆頭として報じられることも多かった。
その頃から、「海水温の上昇というならば、温暖な地域の魚が北上するのと同様に、磯には温暖な地域の海藻が増えるだけじゃないのか」という疑問がどうしても拭えないままだ。その後、一時期には海水中に溶けている微量元素、特に鉄分の枯渇が一因であるとして、鉄骨を材料とする漁礁を沈めるのが効果的とも耳にしたことがある。しかし、その後「微量元素の枯渇説」がどうなっているのか、マスコミ報道では全く聞かなくなった。
いつの間にか気が付くと、磯焼けとセットで耳にするのは「海水温の上昇が原因と言われている」という、またしても「疑問だらけ」の解説だけになっている。白神山地や三陸地域で森と海の豊かさ(海藻とそこに集まる魚類)が語られてから数十年?、「磯焼け」は、地球温暖化や「海藻を食べ尽くすウニ」のせいにされたままだ。ウニだって「もっと海藻が豊かだったころから沢山いただろうに」。磯焼けで辛うじて残る海藻を細々と食べて生きるウニや貝がその責任を取らされ悪者扱いとは、何とも可哀そう。この国の報道機関の無責任さ、「過去の歴史」への無知さ加減には、磯のウニや貝も驚いてるだろう。
何十年も前から気付いていながら磯や海を壊すだけ壊し続け、真の原因究明や問題解決に時間や資金投入を惜しんで来た人間どもの責任を押し付けられるのは、さぞかしやり切れない事だろう。