東京で若者向けのワクチン接種が始まった。会場が渋谷だということで、「若者を狙った」という意図は感じられなくもない。しかし、「事業目的」はワクチン接種である。「若者向けなら渋谷でという発想からなのだろう」と推測すると、状況に応じて判断できない「融通の利かない安易な発想」と言う印象の方が強く浮かんでしまう。どこまで、その「若者=渋谷」の固定観念にとらわれているのかと、ガッカリ。
何となく感じられるのは、「渋谷にはコロナ禍でも出歩いている若者がいるから、そこに接種会場を作れば、中には看板を見て打ってみようかという気になる若者もいるのではないか」というような考えが底にあるのでは、という事。そこには、「早期のワクチン接種を希望する」若者達が多くいるという認識が抜け落ちていたのだろう。案の定、始まってみると「ワクチン接種の機会を待っていた若者達」が遠くからも詰め掛け、朝の8時頃には一日の接種分を上回る人数が列をなしているという状況になった。
しかも、予定の一日の接種分は200人とか300人という少なさである。その準備数の少なさからも、「渋谷に出歩く若者達の中に、ワクチンを打つ気になってくれる者が出て来るかもしれない」という事前想定が伺われてしまう。思いは単に「渋谷に集まる若者の中にも・・・」だったのかも知れないが、「渋谷に千人以上の若者を集めて並ばせる」という結果になった。慌てて「若い世代にもワクチン接種を望む声が意外に多いことが分かった」などとコメントしたが、若い世代にワクチン接種希望査が少なくとも1割から2割程度いることは、既に世論調査で明らかだったはず。今更、そこに気付かなかった素振りをしても印象を悪くするだけだろう。早々に「やり方の間違い」を認めて改めるべき。
首都圏の対象年齢の人数を考えれば、200・300という数が希望者の1パーセントにも足りないことが分かっていたはず。仮にその計算ができなかったとすれば、そんな行政官に生活を委ねるわけには行かない。対象年齢は20歳から39歳というから、東京都だけでも対象人数は数百万人になるので?。既にワクチン接種を終えた人が居ることを考えても、少なくとも百万人を超える対象人数に一日200人分とは少なすぎ。「若者専用の接種会場を作る」と宣伝するなら、少なくとも一日2・3千人分は用意して欲しい。もしも人員などの理由で接種能力が小さいなら、それを公表しておくべき。
暑い夏の最中にわざわざ渋谷まで来て何時間も並ばせるのも、また如何なものか。専用ホームページを作り、そこで申し込みも抽選も済ませてしまえば接種会場前での「密」を避けることもできる。無駄な「運賃も並ぶ時間も」必要無くなる。実情は、接種開始から数日たってもまだ、毎日並ばせて整理券を配るというシステムという。さらに「スマホにコードを読み込ませての抽選、結果はスマホで見る」と聞くと、行政側のどこに「抽選のエントリー権確保だけのために渋谷まで出かけ何時間も並ばせることの必要性」があるのか分からなくなる。若者接種専用ホームページで時間限定で受付けを行い、申込者に「整理番号」を割振った上で抽選結果もホームぺージに表示すれば良いではないか。多くの若者たちは、それで時間と運賃を無駄に使わなくて済む。
不要・不急の外出で都会を出歩く若者達が多くいると嘆く一方で、政府・行政当局は「ワクチン接種を希望しながら、未だその機会に出会いない」という若者が数多くいることを正確に認識すべきである。その認識が無いままでは、効果的なワクチン政策など立てられようも無い。全国自治体のデジタル化の先頭に立って当然の都庁がこの現状。さらに「この場に至って、この言い訳・・・」と天を仰ぎたくなるようなコメントには、ただ項垂れるしかない。