朝夕にホトトギスの声が聞こえる季節になった。夕方、少し離れた森の近くまで散歩に行くと、途中の池の向こうや学校の近くの林からホトトギスの声が聞こえて来る。昔は「テッペンカケタカ」と鳴くのだと書かれていたが、最近はどうも「特許許可局」と鳴いているように聞こえてしまう。
その声を聞くたびに、「ほととぎす 鳴きつる方を眺むれば ただ有明の月ぞ残れる」という百人一首の歌を思い出す。子供の頃はホトトギスも有明の月も知らずに、ただ札を取りたいために覚えていた。「何が言いたいのだろうか?」と時々思ってはいたが、鳥を見始めるまではホトトギスが身近に感じられることは無かった。
今ならば、朝明るくなって来てホトトギスの声を聞くことも、明るくなった東の空に白っぽく有明の月を見つけることもできるだろう。ただ、それを和歌に詠んでみたいという風情が私にも、そして世の中にも無いのが口惜しい。今は「有明の月」に出勤途中の渋滞や遅刻を心配する気分が重なってしまう。
まあ、その声を「特許許可局」と聞いてしまう現代なら、せいぜいホトトギスの声に子供の頃のささやかな発明?の思い出でも重ねることにしようか。