「トゥルル~トゥルル~」
午前6時、家の電話がけたたましく鳴った。
ドキドキしながら電話に出ると、ババからじゃった。
このところ、深夜、早朝の電話にはドッキドッキさせられる。
ババは末期のガンゆえ、病院から良からぬ知らせが来るのではとすっかり怯えておる。
本人からの電話で、ホッとして話を聞くと「四本足の杖を家から思ってきて」という。
寝たきりだと体力が衰えるから、歩く練習をするらしい。
ドンドン体力が衰えているのは知っていて、それでも復活を企てておる。
春に向けて、家に帰る準備のつもり。
ボケのせいもあるんだろうけど、こっちはまたまた切ない。
ご希望どおり、出社前に杖を届けた。
シワシワの顔が微笑んで、いっそうシワシワじゃった。
帰り際、「○○に置いてある30万、あれでスーツ買っていいからね」と申しておった。
そんな高級なもんは買う気もないが、「わかったぁ、高いの買うから」と言って辞した。
誠意と愛情は“カネ”に換算されるババなのだ。
つまり、嬉しかったってこと。
希望を失って、ガックリするのも困るけど、過大な希望を抱くものどうなのか。
不肖の息子は無力感ですっかり凹んでもうた。
朝から気力をヘナヘナとなくした火曜日じゃった。