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うつとりと実のつて

2013-09-29 | わくわく
八木重吉の詩があった。
  秋になると 
  果物は何もかも忘れてしまって 
  うっとりと実のつてゆくらしい 
詩題は、果物 これで詩のすべてである。朝日新聞の天声人語はリンゴとIPCCの話題を書く。

その詩集を取り出す。
この詩は、まずしき信徒 に収められている。

その次に、壁 と題する。
  秋だ 
  草はすっかり色づいた 
  壁のところへいって 
  じぶんのきもちにききいっていたい  

この詩集を手に入れたのは裏表紙の書き込みによれば、1966年、昭和41年1月のこだ。
そこに、初めて自分で手にしたお金で買う、とある。

その前に、昭和40年暮れ百貨店の配達アルバイト 自由にできると思い嬉しくて嬉しくて、新本特価市なるもので、こんなものを買う、としたためて、この詩集の価値を知るとある。 

   ひとつのながれ  
  ひとつのながれ 
  あるごとし 
  いずくにか 空にかかりてか 
  る る と 
  ながるらしき  

この本をくるんだハトロン紙に詩を抜き書いている。 

  いつわりのない
  こころをもとめ
  あいてのないこころをいだき
  きょうはすぎた
  あしたもゆこう

このときは受験期にあった。高校卒業して1年後は、おなじく病後1年である。
健康の回復はあった。アルバイトにかけた冬だった。卒業はしたものの、自由にならない思いを見る。
文学青年の疾風怒濤にもまれていた。

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