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そうだったんだ

2021-09-12 | ほんとうのところは



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第124回:5類落としがコロナ軽症者の自宅療養の大前提
登録日: 2021-08-16

唐突な方針転換
8月2日、筆者はBSフジのプライムニュースに2時間生出演をした。新型コロナについて「診療所医師による早期診断と早期治療が重要」「抗体カクテル薬を在宅でも使えるように」「軽症者の自宅療養は在宅医が担う」「五輪後は5類感染症に」など、多くの提案をした。同日、菅総理は唐突に「軽症者は自宅療養を基本とする」との方針を明らかにした。つまりこれまでの病院を柱にしたコロナ療養政策を180度、方針転換した。しかし、野党のみならず与党議員や多くの市民から「自宅で死ねというのか」などの大きな反発が起きて、コロナ政策は大混乱に陥っている。

執筆時点(8月9日)で東京では連日驚異的な感染拡大で感染者数が1日4000人を超え、早晩1万人に至ると予想されている。デルタ株の感染力は強力で、感染者は若年化している。自宅療養者がついに2万人を超えて医療逼迫に陥ったため総理の緊急発言に至ったのだろう。一方、大阪・兵庫では大型連休の第4波において自宅療養者が1万人を超え、保健所崩壊のなか数十人もの「放置死」が発生した。しかし一方で在宅関係者が訪問するなど新しい展開が見られ本連載でも報告した。そこで得られた経験や知見を首都圏でも活かして欲しい。地元尼崎市では保健所と医師会が連携して自宅療養者の情報を共有している。また神戸の訪問看護師の活動記録は参考になるはずだ。自宅療養者には医療提供だけでなく地域の多職種による生活支援が重要だ。しかし新たな政府の方針は基本的な説明や準備が抜け落ちていたために各界から大きな反発を招いた。そんな経緯で今回は、なぜ政府から、このような新たな方針が示されたのか。そして、なぜ、それが政治家や市民に受け入れられないのかを考えてみたい。

すべての自宅療養者に在宅主治医を
政府の発信は唐突であった。早急に以下の3つの前提をクリアした上で国民に説明し直してはどうか。①すべての自宅療養者に約10日間、地域の在宅主治医をつける。24時間の連絡体制を構築して毎日オンライン診療を行い、必要なら往診や訪問看護を提供する。②軽症ないし中等症Ⅰの患者さんには必要な治療薬を使う。感染防御体制など施設基準を満たした診療所には外来や在宅で抗体カクテル薬(ロナプリーブTM)を点滴できる体制を整える。同薬は重症化リスクを有する軽症~中等症Ⅰの患者が対象になっているが、現在は投与に入院が必要なため、これを自宅療養者に投与できるようにする。入院できない中等症Ⅱ以上の人にはステロイド投与や在宅酸素療法を早急に行う。③保健所の指示なしで診療所医師がコロナ医療を提供できるようにする。また重症患者は診療所医師が直接病院と交渉するなど通常の「病診連携」ができる体制を整える。そのためには、新型コロナの法的位置づけを現在の「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に早急に移行させる必要がある。感染判明=強制入院とする2類相当との法律の整合性は既に崩れている。

以上の3点が、「軽症者は自宅療養を基本とする」の前提条件と考える。なかでも5類落としが自宅療養の土台となる。安倍元総理も菅総理も一時期、5類落としに意欲を見せたがその後議論がない。政策を大転換するには法律や制度の準備と丁寧な説明が必要だ。厚労省は自宅療養者への往診に加算を設けたが、いくら診療報酬で誘導しようとしても前提が整わないとコロナ診療に協力する診療所医師は増えない。

抗体カクテル薬を診療所でも
抗体カクテル薬が我が国でも特例承認されたことは画期的なニュースである。米国のトランプ大統領(当時)に投与され著効したことで有名になったこの薬はまさにコロナの「特効薬」と言えよう。しかし高価で数量が限られる(既に7万本を確保)ため、重症化リスクを有する軽症者と中等症Ⅰの人だけに使用が限定されている。また「原則、1泊2日程度の入院が必要」という縛りもついている。基準を満たした病院から注文があると厚労省から直接病院に配送されるという。

しかし適応となる軽症者を自宅療養とするのであれば、結局、誰にも使えないことになる。政策と適応が矛盾している。外来や在宅で使えない理由は万一の有害事象への対応と効果報告のためだという。しかし在宅でも24時間、携帯電話で状態観察できる。また十分な感染予防をすれば外来や在宅での点滴と効果の報告は可能だ。介護施設でも使えるようにするべきだ。施設入所している認知症の人が5類感染症であるインフルに感染した時、外来や施設や自宅で抗インフル薬である「ラピアクタⓇ」を点滴してきた。それと同じように抗体カクテル薬を使いたい。抗体カクテル薬の対象にならない人には、インフォームドコンセントを得て、政府が適応外だがコロナ患者への処方を認めたイベルメクチンを投与してもいいだろう。中等症Ⅱ以上になった人には在宅酸素の導入とデキサメタゾンの投与をしながら入院要請をするのは当然である。政府は在宅でも必要な治療が提供できることを丁寧に説明すべきだ。5類に落とすと公費負担にならないので経済困窮者が犠牲になるのでは、という指摘がある。しかし5類でもコロナの医療費は一定期間、公費扱いにすればいい。5類落としの本質とは「保健所外し」である。今後は「第5波の中の五輪の後は5類に」と3つの5をスローガンにしたい。

在宅でも医療を提供できる
期せずして「在宅療養なんてとんでもない」とか「家では医療がないので座して死を待つのか」という大合唱が聞こえてきた。誤解である。筆者は年間約600人の在宅患者を診て約180人を看取っているが、政治家や市民は在宅医療の実態を知らないようだ。在宅医療でも高度医療を提供できる。この30年間、在宅医療を推進してきた政府には自信を持って自宅療養の実際を啓発して欲しい。

筆者は在宅で人工呼吸器をつけたALSなどの神経難病患者さんや、医療的ケア児をはじめ酸素濃縮器を設置して酸素吸入を行っている患者さんを常時20人以上管理している。肺炎の大半は在宅で治療している。末期がんの人に緩和ケアを提供した上で9割は在宅で看取っている。そのような在宅医療の状況のなかで、軽症のコロナ患者さんを在宅で管理できないわけはない。筆者もこれまで200人以上のコロナ患者さんを在宅で治療してきたが、全員が回復した。つまりコロナ死の死亡診断書は1通も書いていない。しかしメディアは病院の感染症病棟ばかり報じ、コロナ在宅の現場はあまり報じなかった。だからコロナ=入院という刷り込みが大きい。

市町村医師会と保健所はコロナを診る在宅医のリストをHP上で市民に公開すべきだ。感染者は地域の在宅医を選び、10日間の自宅待機中の24時間管理を電話やメールで依頼する。10日間の医学管理料は3~5万円程度の包括制にしてはどうか。入院医療費の10分の1以下である。自分が感染するのが怖いという開業医がいるが、そのために優先的にワクチンを打っているはずだ。それでも、もしもコロナに感染したらそれは兵士が負傷したのと同じで医師会や政府が面倒をみるべきだ。消防士が火災現場に飛び込み火傷したら公傷扱いになるのと同じだ。もしオンライン診療を活用すれば一度も家に行かずに管理することも可能だ。必要なら手慣れた訪問看護師や訪問薬剤師に指示をすることで必要な医療を提供できる。

本連載で「診療所医師よ、今こそ立ち上がろう!」と呼びかけてきたが、日本医師会からいまだ明確な発信がない。しかし5類になればコロナ診療はいずれ“かかりつけ医”の条件になるだろう。地元の尼崎市では医師会と保健所の連携が進み市民は喜んでいる。全国各地で同様の動きが広がっているが、政策の後押しがあってこそ前進する。早期診断・早期治療でコロナ死は限りなくゼロにできると信じている。

長尾和宏(ながお かずひろ)

1984年東京医大卒。95年、尼崎市に複数医師による年中無休の外来・在宅ミックス型診療所「長尾クリニック」を開業。近著に『あなたも名医!医師にとっての「地域包括ケア」疑問・トラブル解決Q&A60』(小社)など

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