読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

米大統領の椅子に子供を座らせる方法―「デービッド」と名付けないこと

2012-09-19 08:16:51 | 新聞
wsj日本版から
チャールズ、デービッド、ジョセフ、マイケル、ロバート。これらは米国で最も多い男性の名前トップ10のうちの5つだ。だが、43人の歴代米大統領の名前はいずれもその5つの名前ではない(ただし、ドワイト・アイゼンハワー大統領のミドルネームはデービッド)。

 それよりも、ウォーレン、ザカリー、チェスター、リンドンなどあまり一般的ではない名前だ。ミラードやラザフォードといったかなり珍しい名前の大統領もいた。フランクリンという一般的でない名前の大統領は2人いたが、はるかに一般的なフランクという名前の大統領は1人もいない。ハリーという名前の大統領は1人いたが、ハリーは愛称としては一般的だが、名前としてはそうでもない。

 バラクにしろ、ミットにしろ11月の選挙でどちらの候補が選ばれても、変わった名前の大統領という伝統は続くことになる。ミット・ロムニー氏が選ばれた場合、ファーストネームの代わりにミドルネームを使用する4人目の大統領になる。ロムニー氏のファーストネームは、「ウィラード」という一般的でない名前だ。過去にはスティーブン・グローバー・クリーブランド大統領、トーマス・ウッドロウ・ウィルソン大統領、ジョン・カルバン・クーリッジ大統領がファーストネームの代わりにミドルネームを使用していた。

 もちろん、一般的な名前の大統領も誕生している。ジェームズという名前の大統領は6人いる(マジソン、モンロー、ポーク、ブキャナン、ガーフィールド、カーター)。ウィリアムという名前の大統領は4人いる(ハリソン、マッキンリー、タフト、クリントン)し、ジョンという名前の大統領も4人いる(アダムズ父子、タイラー、ケネディ)。さらにジョージは3人いる(ワシントン、ブッシュ父子)し、アンドリューは2人いる(ジャクソン、ジョンソン)。

 だが、半分以上(22人)がユニークな名前を持っている。英国やオランダ系でない大統領(アイゼンハワー、ケネディ、オバマ)が誕生したのは第2次大戦後であることを考えると不思議だ。

珍しい名前を1つどころか、2つも持っていた大統領も2人いる。グラント大統領の生まれたときの名前はハイラム・ユリシーズ・グラントだった。だが、陸軍士官学校に入学したとき、手続き上のミスで、ユリシーズ・S・グラントと登録されてしまった。Sは母の旧姓であるシンプソンから取ったものだったが、結局グラント氏本人もその間違いを正さなかった(一説によると、グラント氏は『U.S.グラント』という響きが非常に気に入っていたという。また、その名前からグラント氏は士官学校では、米国政府を意味するUncle Samから取って『サム』と呼ばれていた)。ジェラルド・フォード大統領は、生まれた当時は父の名前を取ってレスリー・キングと名付けられたが、3歳のときに母親が再婚したため、継父の名前にちなんで改名された。 

 米大統領に非凡な名前の人物が多いことは何を意味するのか。君主と比較しようかとも思ったが、歴代君主は通常血族関係にあることが多く、そのような場合同じような名前が用いられることが多いため、比較対象にならない。ノルマン人の征服以降、イングランドではスティーブン(1135~54年)とジョン(1199~1216年)の2人の王(いずれも最悪の君主であった)を除いて、同じ名前の君主が2人以上存在している。

 では、副大統領はどうか。過去47人の副大統領のうち、ジョンが5人、トーマスが3人、ジョージが3人、ダニエルが2人、リチャードが3人、ウィリアムが2人、ヘンリーが2人、チャールズが3人いる。ジョセフは1人いるが(現職)、やはりデービッドやマイケル、ロバートは1人もいない。1984にジェラルディン(フェラーロ)という名の副大統領候補がいたが、ジェラルディンという名の米国人政治家は同氏が初めてだ。大統領と同じく、歴代副大統領の半分以上(24人)が変わった名前を持っており、中にはエルブリッジやアドレー、ヒューバート、ギャレットという珍しい名前もある。その他のユニークな名前にはハンニバル、スカイラ―、リーバイ、アルベンがある。

 では、候補にはなったものの大統領にならなかった人たちはどうだろうか。現代の2大政党制が誕生した1856年以降、大統領選で敗れた主要政党の候補者は30人いる。ジョンは4人、アルフレッドは2人(いずれもアル・スミスとアルフ・ランドンという愛称で常に呼ばれていた)、ウィリアムは2人、ジェームズは2人いる。マイケル(デュカキス)とロバート(ドール)もそれぞれ1人いる。だが、ホレイショやホレイス、アルトン、ウェンデル、バリーという珍しい名前もある(バリーはハリーと同じく、愛称としては一般的だが名前としては珍しい)。

 こうした考察から筆者が導き出した唯一の結論は、変わった名前の人の方が米政界で名を成す可能性が高いということだ。恐らく名前を覚えてもらいやすいためだろう。したがって、自分の息子や娘に米政界でトップに立ってもらいたい、あるいはトップに近づいてもらいたかったら、変わった名前をつけた方がいい。間違っても「デービッド」とつけてはいけない。デービッドは米国で6番目に多い名前だが、歴代の米大統領にも副大統領にもデービッドという名の人は1人もいない。それよりも、ビュフォードやクレメンタインと名付けた方がいいだろう。

記者: John Steele Gordon


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