人としてこの世に生まれた喜びを漢文で「栄啓期の三楽」と言うそうだ。ある日、孔子は貧しい身なりながら楽しげに歌っている老人に「何が嬉しいのですか」と尋ねた。栄啓期と言う名のこの老人は「わしには三つ嬉しい事がある」と答えた。「天生万物、唯人為貴。而吾得為人、是一楽也。」天の万物を生ずるや、唯、人のみを貴しと為す。而して吾、人と為るを得たり。是れ一の楽しみなり。人としてこの世に生まれた事が幸運な事でそれが一番嬉しい事だと答えたと言う。二番目は男に生まれた事、三番目は九十歳まで生きられた事、だった。ギリシアの哲学者タレスも同じような事を言っているそうだ。ただ、三番目はギリシア人に生まれた事となっている。この世に生まれた事が二人とも一番と言っているが釈迦はそうは考えなかった。この世に生きる事は苦であると考えた。
中公文庫「漢文力」加藤 徹著 より
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