読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

子を知るは父に若くはなし

2009-01-25 09:39:01 | 歴史

「子を知るは父に若くはなし」は中国の古典「管子」に出て来る語である。
人生を長く経験している父親は我が子の人としての本質と将来が誰よりもわかると言う意味である。現在はどうなのだろうか。母親の方がよく判るかも知れない。それはさて置き、これは江戸初期の話。名奉行と言われた板倉勝重と言う人物が居た。彼には二人の息子がいた。長男の重宗と次男の重昌である。二人とも出来がよく、その事は家康の耳にも入っていた。家康はある日、そんな二人を試そうと思った。お裁きについての問題を作り、兄弟に判断させたのである。次男の重昌は即断し裁決文を家康に言上した。兄の重宗は「追って、お答えしたく、暫くのご猶予を・・・」とその場を退席し、数日後、裁決の理由と判決文を書面で提出した。その内容は理由も判決文もほぼ同じであった。家康は兄の方が頭脳の回転が速いと判断した。この話は家臣の間に広まり重昌の評価は高まった。が父親の勝重は「重昌は思慮浅く、重宗こそは、お役に立つと存じます。」と答え、裁判では理屈では解っていても、よくよく検討した後、決すべきものであって、手際の良い判断は自分の知恵をひけらかすに過ぎないものと解説をしたのである。父ならではの言葉であった。重宗は後、父をも凌ぐ名奉行となった。弟の重昌は天草の乱での不手際で戦死した。


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